キャリア甲子園2017 学生取材シリーズ【TBSラジオ】

皆さんラジオって聞きますか? 恐らく多くの高校生にとってラジオはあまり馴染み深いものではないでしょう。しかしラジオ業界が音声放送以外にも様々なことをしているってご存知でしたか? 実は、TBSラジオは16年連続で聴取率(テレビでいう視聴率)がNo.1。つまり一番多く聞かれているラジオなんです。今回は、ラジオ業界の知られざる魅力と可能性についてお話を聞いてきました!

お話をしてくれた方 志田 卓さん
株式会社TBSラジオ 編成局ニュース情報部
志田さん慶應義塾大学 大学院基礎理工学専攻 卒業 2008年入社
3年間の広告制作会社勤務を経て、かねてから働きたいと思っていたTBSラジオへ転職。入社後は営業の経験を経て、現在は朝のニュース番組「森本毅郎スタンバイ!」のディレクターとバラエティ番組「マイナビラフターナイト」や「サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ」ではプロデューサーの役職に就いている。趣味はカラオケで十八番はサザンオールスターズ。
お話を聞いた人 渡辺花菜絵
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフ 早稲田大学 文学部5年生(単位不足の留年ではない)
かなえ大学では美術史を学び、3年生のときフランスへ長期留学をした。
カーラジオなどを聞いていると、無意識にパーソナリティのモノマネをしてしまう癖がある。

ラジオの仕事は音声放送だけじゃない!

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今回お話をしていただいた志田さん。とても気さくでユーモアに溢れた方でした。

―― 本日はよろしくお願いします! まず、高校生にとってラジオはあまり馴染み深いものではないかと思われます。ラジオ業界のお仕事について、詳しくお聞かせください。

志田さん ラジオ業界の仕事は大きく分けて2つあります。まず一つ目は、番組制作の中心である編成局での仕事。二つ目は、ラジオ放送のスポンサー対応や、イベント・グッズ・映画関連の放送外事業を担当する営業統括局での仕事です。これら2つの大きな軸以外にも、IT関連業務を担当するインターネット事業部や、国内各地の系列局の窓口となるネットワーク部などがあります。皆さんに馴染みがあるのは、一つ目に挙げた編成局だと思います。番組全体の内容とタイムテーブル(番組表)を作るとても重要なポジションです。番組表を見ると朝・昼・夜の情報番組を軸にスポーツやバラエティなど様々な番組で1日が構成されているのが分かります。深夜にバラエティ番組があるのは、学生などの若年層が一番ラジオを聞きやすい時間帯だからです。土日の番組構成は、平日より情報番組が比較的少なくてバラエティ番組の比重が多いのも特徴です。こういったリスナーの生活リズムを考えて番組表を考えるのが編成局の仕事です。そして、番組の合間にあるスポンサーCMの対応をしているのが営業統括局の仕事です。

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番組表の構成を説明してくれています。

―― なるほど。先ほど、営業統括局は「放送外事業」も担当すると仰っていましたが、「放送外事業」とは一体何でしょうか?

志田さん 端的に言うと、TBSラジオが開催するイベント事業です。代表的なものでは、今年で4年目になる「ラジフェス」というイベントが例として挙げられます。年に1回、2日間に亘って開催され、TBSラジオの全社員・全番組が総力を上げてつくりだすものです。昨年は2日間で7万人を超えるお客様に来場していただきました。ラジオというのは、普段は目に見えない電波を通した世界を提供していますが、こういったイベントを通してラジオのリスナーにリアルな接点をもってもらうことができるんです。

―― ラジフェス以外にも何かイベントは行っていますか?

志田さん もちろんです。ラジフェス以外には、番組自体をイベント化することがあります。深夜に放送されるお笑い芸人さんのバラエティ番組では主にお笑いライブ、その他ラジオ寄席などの公開収録も行っています。あとは人気ミュージカル俳優を起用したミュージカルの制作にも携わったり、番組の枠を超えて映画に携わることもあります。最近だと、第40回日本アカデミー賞で最優秀アニメーション作品賞を受賞した映画「この世界の片隅に」にも出資しています。
番組関連イベントや映画以外には、草野球チームのNo.1を決める大会をスポーツ用品メーカーさんの協力を得て開催しています。ラジオと草野球の大会って意外だと思われるかもしれませんが、AMラジオでは野球中継を放送しているので不自然なイベントではないんですよ。このイベントでは、実際の中継アナウンサーによる試合実況を大会のオプションとしてつけました(笑)。
ラジオ業界の仕事は、音声放送だけでなくイベント事業などを通して様々なことができる自由度が高いものなんです。

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放送外事業である様々なイベントを紹介してくれました。

ラジオの魅力と今後の課題

―― 音声放送以外にもそんなお仕事が出来るんですね。意外でした! 自由度が高いとのことですが、志田さんの考えるラジオの魅力って何でしょうか?

志田さん 色んなものを形に出来る自由度が高く、いくらでも広がりようがあることだと思います。ラジオには、音だけ聞こえてくる心地よさがあると思うんです。音声を聞くだけで無限に想像力を膨らませることだってできますし、逆に今まで音声だけだった番組がイベント化してリアルの世界に飛び出してきたりします。またリスナーと番組の距離が近いことも魅力ですよね。震災の時も、ラジオの声を聞いて落ち着くという人が多かったと聞きました。そういった面では、一番悲惨な現場の映像を映して注意を促したり、危機感を煽る音と画面で緊急速報を流すテレビ放送と比べると、音声だけ流れてくるラジオは少し落ち着ける間があるのかなって思います。

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ラジオの魅力について笑顔で語っていただきました。

―― そういった魅力がある中で、TBSラジオが会社として大切にしていることは何ですか?

志田さん 主に2つあります。1つ目は、「聞けば、見えてくる。」というキャッチコピーです。今、「ラジオには、音だけ聞こえてくる心地よさがある」とお話をしましたが、「見えてくる」というのは、「音声だけから抱くイメージ・そこから自分で考える過程・そして自分の頭で想像する瞬間」という意味が込められているのかなと思っています。
これを実感する良い例があるんですよ。テレビにテレビショッピングがあるように、ラジオにもラジオショッピングがあるのをご存知ですか?例えば、食品をご紹介する場合、ラジオでは映像で商品の魅力を伝えられないので、試食をしているお箸の音や味の感想などしかリスナーには届きませんよね。しかし不思議なことに、テレビに比べると返品率が少ないということを聞きました。きっとこれは、ラジオパーソナリティーが長年培ったリスナーへの信頼感や安心感、そして聞いているリスナー自身が自分の頭で想像して「良いな」と感じるからだと思うんです。そういった意味では「聞けば、見えてくる。」というキャッチコピーは、音声放送が与える想像力の可能性を表している気がします。

―― もう一つの大切にしていることはなんですか?

志田さん 16年連続聴取率No.1の矜持をもつことです。2ヶ月に1回、無作為に選んだ個人3,000人を対象に聞いているラジオ番組の調査集計をしているのですが、その調査で97期・16年2ヶ月連続1位をキープしています。あと3期で100期連続になります。

―― ラジオ特有の魅力や、16年連続聴取率No.1という強みは凄いですね。一方、抱えている課題はありますか?

志田さん 魅力を伝えて知ってもらっても、ラジオを聞くまでに至らないケースが多いことと、1位という事実が武器にならないことですね。
どちらにも共通している原因は、様々な娯楽媒体がある中で敢えてラジオを選ぶポイントが無いということです。魅力がたくさんあり16年連続1位の勢いがあるといっても、そもそもラジオが聞かれていないので、魅力がたくさんあろうが1位であろうが、世間の人からすれば関係の無いことなんです。我々はそこのギャップを埋めて行く必要があり、ラジオをみんなの生活に根付かせるために業界を引っ張っていかなければならないんです。

―― そのために現在取り組んでいることはありますか?

志田さん ラジオ業界全体では、「radiko」「ラジオクラウド」といったラジオが聞ける新しいサービスを始めたり、FM電波でAM放送が聞ける「ワイドFM」も2015年にスタートしました。しかし、こういった新しいサービスを多く出しているにも関わらず、広い認知に至っていないことも課題ですね。また、ラジオをオールドメディアとして終わらせるのではなく、新しいメディアとして成長させることを目的としたインターネット事業部という新しい部署をTBSラジオ内にも設置しました。

ラジオの未来のために既成概念をなくしたい

―― 今回のキャリア甲子園のテーマを設定した背景と、高校生に期待することを教えてください。

志田さん 一つ目に、TBSラジオで働く自分たちの既成概念を取り払ってもらいたいから。二つ目に、若年層のリスナーを増やしたいからです。若年層がラジオを聞き始めると、ずっと聞いてくれるという傾向があるんです。仮に途中でラジオから離れてしまっても、歳を取ってからまた聞いてくれる可能性が非常に高いんですよ。そういった傾向を見越して、今から若年層に聞いてもらう必要があると思っています。
期待することとしては、どうやったら自分自身がラジオを聞きたくなるかを考えて欲しいです。そもそもラジオは音声メディアとしてあるべき姿なのか? という原点からはじめても構いません。既成概念を取り払って、「ラジオはこういうもの」という枠から飛び出して欲しいですね。番組内容だけではなくて、ラジオを聞く新しい媒体の提案であったり、放送外事業のようなイベント関連でも良いです。さらに新しい製品の製造販売や、ラジオ業界にこだわらない他業種とのコラボ企画でももちろん良いです。あるいは、社会課題などに取り組むのもありですね。とにかく既成概念に囚われず、高校生自身・若い世代のみなさんが「あったらいいな」と思えるラジオの新しい姿を考えて欲しいです。我々TBSラジオは、皆さんの身近な存在になりたいと考えています。

―― 番組やイベントを通して世間へ物事を発信する立場として、相手に「聞いてみたい」「面白そう」と思ってもらうために工夫していることはありますか?高校生の参考になるかと思います。

志田さん 外の世界にできるだけたくさん触れて、自分の感覚・身体に共鳴する物事を見つけるようにしています。私は、仕事中でも町を歩いて行列のできているお店を見て「何でだろう?」と考えてみたり、電車に乗りながら携帯電話をずっと見ている人々を見て、「この人たち全員がラジオを聞くにはどうすればいいんだろう?」とか考えたりしています。自分が見聞きして感じたことを、全部一度自分の中で咀嚼して、面白いことを考えるようにしています。

―― ありがとうございます。それでは最後に、高校生の皆さんへメッセージをお願いします!

志田さん 今回のテーマはとても自由度が高いです。実現可能性や現実性を考えてアイディアの幅を狭めず、物怖じせず皆さん自身の感性に由来した新しいアイディアをどんどん出してください。私たち自身もとても自由度が高い業界・会社の中で働いていますので、どんなに突拍子がないアイディアでも絶対に「面白い」と受け止めます! 常識とかに縛られないみなさんの自由な発想を期待しています。ぜひ参加してくださいね。

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志田さんのお陰で終始笑顔の耐えないインタビューでした。

渡辺花菜絵の取材後記

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いかがでしたか? ラジオ業界に放送外事業があることや、ラジオショッピングが実はテレビよりも返品率が低いことなど、私自身知らないことだらけでした。そういった魅力や、16年連続で聴取率が1位である強みがあるにも関わらず、課題が山積しているのも事実です。そんな課題に対して、既成概念を取り払ったアイディアでラジオ業界に一石を投じることができるかもしれない……と考えたらやりがいMAXです! 高校生の皆さん、頑張ってください!

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