「わたしの分解図~失恋編~」では、失恋というワードを話の切り口にして、ユニークな大人たちから話を聞いていきます。正解・不正解がないからこそ面白い、いろんな人の恋愛体験談と価値観に迫る!

人生の選択で迷ったら、「もう一度起きる可能性」が低い選択肢を。【前編】―電通  小林昌平さん

笑いのコミュニケーションを体系化した共著『ウケる技術』で20万部のロングセラーを突破、2018年にはわかりやすくて深い哲学入門書としてこれまたロングセラーとなる『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』を出版された小林昌平さん。学生時代は哲学・美学を専攻し、現在は電通のビジネス共創プロデューサー、エバンジェリストとして活躍する傍ら、社会人大学院で講師もされています。
今回は博識な昌平さんに「失恋」というテーマを持ちかけ、哲学的な切り口から恋愛や人生、人間などについてたくさんのお話を伺いました。

心に何度もあらわれる相手は、人生でそうそうあらわれない。

ーさっそくですが、今回は「失恋」というテーマでお話を伺っていきたいと思います!

小林さん:よろしくお願いします! というより、ありがとうございます!

ーありがとうございます、と言いますと?

小林さん:今回の取材の依頼は本当にうれしいんですよ。というのも、昨年出版した著書の中で、「モテたい」とか「意中の人に声かけられない」といった、恋愛にまつわる悩みに哲学で答えた部分はつい熱く書きすぎたのか、結構カットされてしまって……(笑)。ですので今回は文字数が許すかぎり、失恋や恋愛にまつわる話を哲学の知識をまじえながらお話できたらなと。

ーではさっそくお話を伺っていきたいと思います! 昌平さん自身、失恋のご経験は?

小林さん:おこがましくも正直、モテなくはない方だと思うんですが、こと失恋に関しては「超一流」だと思っています。ほとんど「実写版『ラ・ラ・ランド』」みたいな人生を送ってきましたから(笑)。

ーどういうことでしょうか?

小林さん:『ラ・ラ・ランド』という映画は、男と女で、また年齢によってもだいぶ見方の分かれる映画ですが、一つの見方として「女性が一番盛り上がってるタイミングで、男性がノれなかった映画」というものがあります。僕がまさにそれで、「ここぞ」という決めのタイミングで大切なものを手離してしまう「惜しい人間」「遅れる人間」だと認めざるを得ません(汗)。

ー小林さんは惜しいどころか、めちゃくちゃ理想の生き方をされているように見えますが?

小林さん:いやいやいや、そんなことは全然ないです。なんだかんだ幸せに生きてはいますが、進学・就職・結婚という人生の大きな分岐点で、周囲から「なんでやねん!」っていわれる選択をしてきた人間なんです。

小林さん:進学に関していえば、僕を知る人には有名な話ですが、現役で東大に受かってたんですけど、「モテるなら東大じゃない」というよくわからない思いこみで東大に行かず、さらに「言葉で食べていきたい」という理由でキー局の内定を断って今の会社に入社。どちらが正解だったかはわかりませんが、常に「なんでそっちやねん」って言われ続ける、「二択」という業(ごう)を背負った人間なんです。

ーなるほど。恋愛に関してもそういったことがあったんですか?

小林さん:恋愛に関する「なんでやねん!」は、かつて結婚を考えていた相手と結婚しなかったことですかね。

ーどうして別れることを選んでしまったんですか?

小林さん:単に僕が大事な局面で優柔不断なだけなんでしょうが、トランプのポーカーで言えば5枚のうち4枚は揃っているほど、相性のいい人だったんです。ただ、今になって思えばですが、残りの合わない1枚、相手のある1か所が気になって結局決断できなかった。今は前を向いて生きているのでいい思い出ですが、5枚中4枚揃うような人と出会える状況は奇跡に近い。

ですので、まず学生の皆さんに何が言いたいかというと、「これだ!」と思った人や仕事は、減点法で考えてはいけないということ、それと這いつくばってでも、ひざまずいてでも、手離さないでほしいということです。

何度か別れかけても思い出したり、ヨリが戻ったりするような人っていますよね。人生にはそういう「回帰性」というか、「反芻性(はんすうせい)」のある縁というものがあります。そういう縁は手離しかけたとしても、思い直して踏みとどまることが重要なんです。

ーでも、その「合わない1か所」がどうしても気になる場合はどうすればよかったんでしょう?

小林さん:17世紀オランダの偉大な哲学者スピノザは、こんな話をしています。
トリカブトという植物は人間にとって猛毒だと恐れられている。けどそれは、その植物の持つ物質がたまたま人間と合わなかっただけで、本来その物質に良いも悪いもない。

自分と合わない部分を人は相手の欠点だと思ってしまいがちですが、それは単に「合わない」部分であって、「欠点」とはいえない。欠点と見るのは相手側の主観でしかない。
むしろお互いに合わない部分を認め合って、気長に向き合うという構えを持つべきです。もっと言えば、その部分を「愛おしむ」くらいの気持ちを持てるといいんじゃないでしょうか。

心のあり方が違う男女の間で起こる恋は「偶然の芸術」でしかない。続きは次のページへ!