みなさんは、自分の将来を考えるとどんな気持ちになりますか?キラキラしている人の姿を見ては、何だか自分だけ置いていかれているような気持ちになるなんてことも・・・。
「29歳までの道しるべ」では、現在いろいろな舞台で活躍する大人たちを取材し、彼らの20代のお話を聞きました。
いまだからこそ言える“少しでも人生を前に進めていくためのヒント”です。

新卒より、軽率であれ。 —フォトグラファー 佐藤健寿さん

26歳〜 帰国し、本を出版。ほどよい無謀を続けるために。

—では、話を戻しますが、本を出すタイミングで帰国してからは、どんな風に働いているのですか。

佐藤さん:実際に本が出版されたのは30歳前だったと思います。帰国してからは旅行雑誌などでやりたいようにやらせてもらって、それに付随していろいろな仕事が来るようになっていきました。多分、僕の場合、割とはじめから多くの人たちに見てもらいたいと思って写真を撮っていたことも大きいと思います。学生時代に出会った、詩の雑誌の編集長に言われた話なんですけど、「現代詩の世界はもう終わりだ。読み手=書き手なんだよ。書いてる人が勉強のために読んでるだけで、誰も純粋な読み手がいない」という話がずっと心に残っていて……。

これは美大での経験が反面教師になっている部分でもあるんですけど、写真や映画の世界もそれに近いところがあるんです。美大に行くような人たちって、基本的に世の中でメジャーな存在にはなりにくい。で、そのときの言い訳として自分たちの感性が研ぎ澄まされているから世間の大衆は理解できない、だから自分も有名になれないと思いがちなんですけど、それってすごく小さな世界の話だと思うんですよ。で、実際にそういう人って30歳くらいになったら、最初は経済的に、次に制作モチベーション的に行き詰まって辞めてしまうことが少なくないんです。
逆に僕は性格的にマニアックなところはありますが、そういう美大的な選民意識よりも、比較的大衆の感性の方を昔から信じています。

もちろん、売れるものは無条件にすごい、というのは間違いなんだけど、きちんと作られて売れてるものや有名な人にはやっぱりそれなりの理由があるというか、絶対にバカにはできない。だからそこまで意識はしていませんでしたが、自分のしたい表現と大衆的な感性、言い換えれば商業的なバランス感覚は常に取るようにしているかもしれないですね。

ー好きなことをやることと、世に出すときのバランス。学生も、好きなことを仕事にしたい一方で、本当にそれで生きていけるのかという不安もあると思います。

佐藤さん:たとえば、写真が好きでそれを仕事にしたい時、まず写真を練習することだけを考えがちだと思います。だけど僕は、写真を練習するためには何が必要かっていうことをもう一歩引いて考えないといけないんじゃないかと常に思っています。「仕事を辞めて写真をやろうと思います。弟子にしてください」と言ってくれる人もいますが、たぶんその人がすべきことは、すべてを投げ打って写真に打ち込むんじゃなくて、今やってる仕事を続けながら写真を勉強する方法を見つけることだと思うのです。

ーそう思うのはどうしてですか?

佐藤さん:自分もそうなんですけど、なんだかんだ言って常に保険かかってるから楽しむこともできるし、面白いことに挑戦もできるのだと思います。僕も好きなことをやっているようでいて、実は写真だけをがむしゃらにやってきたタイプでもなく、その時々で別の仕事もやっています。今でも全然関係ないアパレルの仕事とかもやってますしね。常に広く浅くやっているタイプなんですよ。

でも、それが自分だけの文脈となり、自分だけの写真の魅力につながっていくんです。僕は中学生の時に三国志が好きで読んでいましたが、テレビ番組で三国志の子孫を撮影し、それを本にも掲載することにもなるなんて、当時は思いもしないですよね。その一方で、子供の頃から宇宙が好きでしたが、今は宇宙関係の写真集の監修などもやってます。

そういう風に自分の好きなものとか得意なことが点と点で繋がって、その人だけの個性というか、文脈ができていく。もし僕が若い時に全てを投げ打って写真だけに没頭していたら多分こういう仕事はできなかったと思うんです。結構無駄だと思っていることが、後々になってじわじわと効いてくるものです。

ー最後になりますが、佐藤さんにとって、20代はどんな時期だったと思いますか?

佐藤さん:最近20代の頃に出した本を読み返して思ったのは、自分でもあの時の原動力が何なのかよくわからないくらい元気だったということ。中国で変な物体が発見されたと聞いたら中国語も喋れないのにガイドも連れずにアポなしで行ったり、イランから亡命してパリの空港に約20年間止まっている人がいると聞いたらその人に会いに行ったり。「今はもうできない」とは思わないですけど、20代のときに比べればどうしても時間が限られているので、それが作品というか仕事になるかどうかを考えてしまう自分もいる。

でも、20代の原動力は理屈じゃないんですよね。理屈は、常に後から付いてきていた。最近、就職活動中の学生を見ると、僕は「新卒よりも軽率であれ」と常々思うんです。「新卒」がさも若さの最大の特権かのようにもてはやされていますが、そんなもの大したことはない。軽率でいられる20代という時期の方が、よっぽど特権だし、人生にとって重要だと思います。

ー自由度の高い20代を謳歌したほうがいい。

佐藤さん:そうです。でも同時に、したたかでないといけないとも思っています。20代の頃、海外で出会った日本人バックパッカーの中には「ここではすごく楽しそうにしてるけど、たぶん日本帰ったらしんどいんだろうな」と思う人もよくいました。

僕も考えていないようで、実はあまり人が撮っていない希少価値の高い写真を撮るということは常にやってきたようにも思います。で、それがいま仕事になっている。だから「新卒より、軽率」とは言いましたが、「無謀であれ」とは全く思いません。ずっと無謀でいると、10〜20年で尽きてしまいますから。
一方で、ほどよい無謀なら一生続けられる。だから僕は、ほどよい無謀を続けるにはどうしたらいいかを、常にしたたかに考え続けることも大切だと思っています。

画像

ーほどよく無謀に。その意識を持つことは大切ですね。今日はありがとうございました!

★そんな佐藤さんのサイン入り写真集「THE ISLAND 軍艦島」を抽選で1名の方にプレゼント!
ご応募はMY FUTURE CAMPUSサイトマイページより☆

画像
「今回取材した佐藤健寿さんに会える!超レア交流イベント「MEET FUTURE CAMPUS~おとなと未来を語ろう。~」の応募はこちらから★」
ご応募お待ちしています!

line@