私たちと企業をつなぐ「ブランド」。近年では、ますます多くの会社が「ブランディング」に注力しはじめています。 本特集では、トップランナーが展開するブランドコミュニケーション戦略を紹介しながら、有形、無形の「ブランド」が生み出す価値や資産、さらに、その背景にあるそれぞれの企業の思いに迫っていきます。

企業価値を高める役割は、社員全員で分担しているー森永乳業株式会社

「ブランド」特集の第3回は、乳製品を中心にさまざまな商品を展開している森永乳業さんのお話です。昨年迎えた創業100周年を機に、コーポーレートスローガンと経営理念を一新したという同社。次の100年を見据えたブランド戦略について、コミュニケーション本部の皆さんに伺いました。将来ブランドに関わる仕事をしたいという学生さんへのアドバイスもいただいています。

お話を聞いた森永乳業株式会社 コミュニケーション本部のみなさま
山口清之(CSR推進部長)
久芳直樹(CSR推進部 CSR企画グループ長)
石原沙紀(CSR推進部 社会貢献推進グループ リーダー)
大塚幸稔(広報IR部 広報グループ長)

“笑顔”というキーワード

ーはじめに、御社のコーポレートスローガン「かがやく”笑顔”のために」について、詳しくお伺いできますでしょうか。

山口さん:「かがやく”笑顔”のために」は、2017年に当社が創業100周年を迎えるにあたって、これから先の100年を見据えて、「自分たちがどういった会社になりたいのか」「何のために事業を行うのか」を改めて考え、策定したコーポレートスローガンです。

2016年1月に立ち上げた「夢共創プロジェクト」のなかで、アンケートを通して社員それぞれの想いを吸い上げ、それを踏まえたうえで、経営層が一年かけて議論して作りました。社外に向けては、2017年の4月に発表しましたが、社内では、2017年の年頭から周知しています。

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ー社員さんのアンケートをもとに。どんな意見が多かったのでしょうか?

久芳さん:発見だったのは、たとえば、「シェアナンバー1を目指す」といった業績に関することよりも、「社会に貢献できる会社になりたい」という意見の方が、割合として多かったことでした。そういう会社に勤めていることが、自分自身の誇りにつながる、と。社員のそうした想いが、このスローガンにつながったのだと思います。

山口さん:森永乳業は、1917年(大正6年)、日本煉乳株式会社として創業しました。創業当時は森永製菓のミルクキャラメルの原料供給を担う会社で、現在では、乳製品を中心に幅広い事業を展開しています。

私たちは、乳で培った技術を活かして、独自性のある、価値ある商品を提供し、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広いお客さまの心と身体の両面の健康に貢献していきたい。そんな想いの先にあるものとして、“笑顔”というキーワードにたどり着きました。

そして、その「笑顔」の対象は、お客さまだけに限りません。ステークホルダーの皆さまはもちろんのこと、ここで働く私たちグループの社員も含まれているというのが、経営層の想いです。

ーたくさんの方の“笑顔”が想定されているわけですね。

山口さん:はい。そして、このコーポレートスローガンや経営理念を受け、その次の展開として、社員が自分たちで考えて、「行動指針」を練り上げることになりました。

全国から公募で集まったグループ社員167名で開催した「行動指針フォーラム」で熱い議論が交わされ、その結果生まれたのが、「お客さまに寄り添い 感動を共有できていますか」「感謝の気持ちを持っていますか 伝えていますか」「全ての品質に自信が持てますか」といった「8つの問いかけ」でした。「問いかけ」という形にしたのは、自分たちの行動を常にそこに照らし合わせていけるように、という想いからです。

ー「行動指針フォーラム」はどんな様子だったのでしょうか?

久芳さん:コーポレートスローガンと経営理念の策定のために、経営層が何度もミーティングを繰り返したように、社員たちにも、当社の存在意義や提供価値について討議してもらいました。要は、経営層の行ったことの追体験をしたわけですね。それを経て、行動指針を考える、という流れで進行しました。

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山口さん:結論を言えば、社員で作った行動指針案は、最終的に経営層にそのまま受け入れられました。社員が一生懸命を考えて作ったなら、それでいこう、と決断されました。

総合的な森永乳業の価値を発信

ーCSR推進部さんが社員と経営層をつなぐ役割を果たされたのですか?

山口さん:ええ。コーポレートスローガンと経営理念策定のためのプロジェクトは当初、経営企画部で進めていたのですが、2016年6月に、それまで広報部のなかにあったCSR室が格上げされ、部として発足すると、そのプロジェクトも移管されました。

社長の宮原が、「CSRは経営そのものである」と明言する通り、当社グループでは、CSRを社会貢献やボランティアといった形で限定的にとらえるのではなく、もっと幅広く位置付けようということで、コーポレートブランドもCSRの所管になったわけです。

ーなるほど。

山口さん:コーポレートスローガンや経営理念、行動指針が決まった後も、私たちは事務局として、全国の事業所、グループ会社を回り、その中身について100回以上、4000人以上に、直接説明してきました。そうした活動を通じて、グループ内でも一定の理解を得ることができています。

ー対外的な発信については、なにか変化はありましたか?

大塚さん:当社は、1978年に自社ブランドとして「Mマーク」を導入しましたが、それ以外にエンゼルマークを社章や名刺に使用していました。

また、商品ごとにも、たとえば、「クラフト」(チーズ)、「リプトン」(飲料)、「エスキモー」(アイス)といったように、当社は、マルチブランド戦略を採用していましたが、コーポレートブランドの価値向上を目的に、「Mマーク」の認知向上をはかるべく、2010年10月に対外的に発信するロゴマークを統一しました。アイスについても「エスキモー」ブランドから「Mマーク」に変更しました。

そして、100周年を機に、コーポレートスローガンも見直そうという流れになったのです。

山口さん:従来は、商品を売り込むために、プロダクトブランドを立てていこうという思いに寄り過ぎていた部分もあったのかもしれません。だからこれまで、商品は知っているけれど、それが森永乳業のブランドだと認知されていないということが、往往にしてあったわけです。

そこはやはり、私たちの提供するそれぞれの商品が、森永乳業グループのブランドであることをきちんとお客様に伝えていかなければいけないと思いますし、それぞれのブランドの価値を合わせたものが、総合的な森永乳業の価値なんだということを、発信していかなければならない。

私たちに足りていなかったそうした側面を強化し、森永乳業としてのコーポレートブランドをきちん訴求していこうということで、広報や広告部門とも連携しているところです。

大塚さん:コーポレートブランドとしての認知が高まることで、商品自体がそれぞれ持っているポジティブなイメージと結びついて、相乗効果が生まれることを期待しています。森永乳業というブランド価値の向上は、商品を後押しすることにもつながるのではないかと思っています。