2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」。それから、約三年の時を経た現在、SDGsは私たちの身の回りの生活、あるいは、ビジネスにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。社会や企業の意識・行動の変化から、世の中の潮流を読み解きます。

【モニター デロイト】戦略コンサルティングは社会価値向上にも貢献する

課題解決と収益化の両立

ー各クライアントに対して、どのような形で戦略を立てていくのでしょうか?

山田:社会に山積している様々な課題に対して、SDGsはそれらの輪郭を映し出してくれます。たとえば、ある産業やある企業は、特にどういった社会課題と密接な関係にあるのか。日々の事業で、知らぬ間に悪化させてしまっている課題もあるかもしれないですし、もしくは、いままで考えてもこなかったけれども、その企業に備わっている知見や技術、能力を使って、新たな市場を開拓できる可能性もある。

そうしたビジネス側の状況、社会課題の優先度、さらにはステークホルダーの期待値などを掛け合わせて、ビジネス機会やリスクを検討しながら事業の絵を描いていきます。

ー具体的にどのような事例を思い浮かべればよいでしょうか。

山田:近年の代表的な事業例をご紹介しましょう。地球温暖化に対する懸念が強まっていたことを背景に飛行機の運用でCO2を大量に排出していた航空業界において、化石燃料ではなく植物由来のバイオ燃料に転換しようという機運が高まった動きがありました。バイオ燃料が温暖化対策の一つの回答であると。

けれどもこれはやり方を間違えると、今度は、食料問題を引き起こしてしまいかねません。いままで人間のお腹に入っていたトウモロコシが燃料タンクに入ることになるわけですから。

ー難しい問題ですね。

山田:そうしたなかで、各国政府やNGOが「持続可能なバイオ燃料」を定義するためのルール作りをはじめました。その場に航空業界も参加したのですが、その動きを踏まえてエールフランスは、そこで定義された基準を満たしたバイオ燃料を自らの子会社で生産して、競合となる他のエアラインに販売するビジネスをスタートさせました。

それはまさに、社会が航空業界に対して強い関心を寄せている「CO2削減」という課題の解決に貢献することで自社の収益も上がるという仕組みです。当然、エールフランスのブランド価値も向上しましたし、投資家からの評価も高まりました。

藤井:我々は、そういった他社事例や世の中の動き、特に、日本では手に入りにくい海外の先端情報を、世界各地にあるデロイトの拠点と連携して収集しているわけです。それを参照しながら、新たなビジネスモデルやルール形成、場合によってはその実現に向けたパートナー探しの支援をさせていただいています。

加藤:パートナー探しの際には産官学、業界、国境等の「越境」が鍵になりますが、なかでも我々は「SDGsスタートアップ」に大きな注目を寄せています。特に海外のスタートアップのなかには、SDGsの達成に貢献している先進的な企業がたくさん存在するので、そこから着想して事業を組み立てていくケースも多いです。

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モニター デロイト シニアコンサルタント 加藤さん

ー企業がSDGsに関係する事業を行う際、実際問題として、短期的なコストや利益を気にされて二の足を踏むようなことも多いのではないかと思ってしまうのですが、そのあたりについてはいかがでしょう? 企業のご担当者も悩みどころのような気がします。

藤井:そうですね。会社の方針として打ち出してはみたものの、短期的利益とのトレードオフが起こり得る部分はあります。たとえば、SDGsの推進を主として担当されている部門、実際に日々の売上に責任を負っている部門の方とで考えが異なることも当然あり、その調整に悩まれている企業も多いかと思います。

それに対して我々は、たとえば組織のKPI自体の変革など、マネジメントシステムの見直しを提案することもあります。短期的利益と中長期的利益がトレードオフになる場合に、持続的な成長という中長期目線でより良い選択肢を選びたいと考える企業が日本でも増えはじめていると思いますし、我々もそういった選択を後押ししたいと考えています。