ちがう世代からの見られ方を知る。
それって案外、同じ世代と話しているときよりも自分の強さとか弱さに気づかせてくれるものなのかもしれません。
「最近の若い奴らは・・」の言葉のもとに、大人たちがきみたちへ贈るエール、ぜひご覧ください。

若者たちが一生懸命の大切さに気づき始めたら、日本はもっとすごい社会になる―ジャパネットたかた創業者/J1 V・ファーレン長崎 代表取締役社長髙田明さん

ジャパネットたかたの創業者として同社のテレビショッピングのMCを自ら務め、そのユニークなトークで年齢・性別を問わず幅広い人々に愛されてきた髙田明さん。2015年に社長を退任後、現在は長崎をホームタウンとするプロサッカーチーム、V・ファーレン長崎の運営会社で代表取締役社長を務め、社長に就任したその年にチームをJ1昇格に導くなど、事業のフィールドを変えてもなお高い経営手腕を発揮しています。

そんな髙田さんに、学生時代はどんな若者だったのか。また、今の若者に対してどんな想いをお持ちなのかを伺いました。

インタビュー中、髙田さんが何度も口にしたのは、「一生懸命」という言葉と、デジタルな発信に頼らない、人と人との交わりの大切さ。テレビを通じ言葉で人々の心をつかんだ髙田さんならではのメッセージが、そこにはありました。

最近の人のほうが僕の若い時より先に進んでいる

画像

ー大学生時代の髙田社長はどんな若者でしたか?

髙田さん:当時は学生運動が一番激しい時代でしたけど、僕はどちらかというと、いわゆる「ノンポリ」…つまり運動に参加しない側に近い学生でしたから、あまり騒動を意識せず普通に大学生活を送っていましたね。

E.S.S.という英語研究部に所属していて、学生生活はとにかく英語を一生懸命勉強していました。でも勉強しかしていなかったわけではなく、「髙田が部室にいなかったらパチンコ屋を探せ、パチンコ屋にいなければ雀荘を探せ」なんて友人たちには言われていました(笑)。

ー学生運動へはなぜ参加されなかったのでしょうか?

髙田さん:僕が当時思っていたのは、“現状の社会を否定したとしても、いざ社会に出た時にそれで生きていけるのだろうか”ということです。ベトナム戦争や安保闘争などがあって、世の中を否定するような活動が起こりやすい時代背景でしたけど、我々は現実の中に生きているわけですから、その現実を否定することに意味があるのかということを議論した記憶はあります。

ー独立精神のようなものは当時からお持ちだったんですか?

髙田さん:いやいや。そもそも先のことや大きいことを考える人間じゃないんです。ベンチャー・スピリットで事業を立ち上げようという気持ちもなかったし、ただ普通に頑張って、自分の好きな道を行けばいいと思っていました。今は起業意欲を持った学生さんが多いですから、最近の人のほうが当時の僕よりも先に進んでいるんじゃないでしょうか。

一つ目標があったとすれば、海外に行くような仕事に就きたいという気持ちは持っていましたから、E.S.S.の活動には熱心に参加していましたし、大阪万博の会場で海外の方に英語で話しかけて、語学力を磨くようなことをしていました。今度、E.S.S.の当時の仲間達がV・ファーレンの応援で長崎に来てくれるんです。学生時代のつながりというのはありがたいですね。

今の若い人たちは、少し表情が弱いかな

画像

ー今の学生たちが置かれている環境について何か思うことはありますか?

髙田さん:オオカミに育てられた人間の子供は四つ足で歩くという話がありますけど、それと同じで、人はある環境をひとたび受け入れると、そこから簡単には抜けられないですよね。そう考えると、通信手段が電話しかなかった僕らとは違って、今の若い人はもはやスマートフォンがなければ生活できないでしょう。スマホをなくしたら無人島で過ごせとでも言われているような気持ちになるんじゃないかな。

若者の感性は常に新しい環境によって作られていくものだと思うので、みなさんがテクノロジーに頼る気持ちはわかります。仕事は効率化の時代ですし、生産性を上げるという意味でも、またそれによって自分の余暇を作るという面からも、僕はテクノロジーの発展を大いに支持しているんです。

ただ、そういうものに影響されない、人間の根本にある能力も、若い人には忘れないでいてほしいと思っています。

ー人間の根本の能力とは、例えばどういうものでしょうか。

髙田さん:表情と言葉は、人間に与えられた大きな能力です。しかし、今はスマホやSNSによって、表情を変えることなく交信できてしまう。非常に便利な反面、本来フェイス・トゥ・フェイスでやってきた交流が少なくなってしまっていることには、少し怖さを感じますね。

そのせいか、今の若い人たちは少し表情が弱いかなと感じることがあります。しかし、世の中に出たらコミュニケーション力が必要とされます。自分の言葉や表情で人とコミュニケーションを取る力というのは、LINEやメールで自分を伝えるのとはまったく違う力なんです。そのギャップに、社会に出てから苦しんでいる若者が多いように感じます。

ーその点では、V・ファーレン長崎でお客様をスタジアムに集めるというお仕事は、まさにデジタルの世界から現実世界に人を連れ出すようなお仕事ですね。

髙田さん:人は、人が頑張る姿に一番感動するものです。泣いたり笑ったり涙を流したり、サッカーで言えば、点が入って飛び跳ねて喜んだり、点を取られて悔しがったり。そういう中にリアルな感動がある。それをスタジアムで直に感じ、デジタルにはない良さを知ってもらえれば、表情の豊かさを取り戻すことにもつながるかもしれないですね。

画像

仕事を好きになれるかどうかは自分次第

ー会社という組織のトップとして若い社員と関わってこられた立場として、今の若い人に求めたいものは何でしょうか?

髙田さん:よく「新卒社員の何割かは1年目のうちに会社を辞める」というような話があるでしょ。希望していた部署とは違う部署に配属されたり、そこでやりたくない仕事をさせられたりするうちに、辞めようと思ってしまうんでしょうね。

でもそれは、会社で何をやりたいのかを自分で決めてしまっていることに問題があるのではないでしょうか。任された仕事を一生懸命にやる気持ちがあれば、すべての仕事にやりがいを持って取り組めるようになります。そう考えられない人は何年経っても転職を繰り返し、仕事のやりがいや面白さを感じられないまま、50歳、60歳になってしまうかもしれません。歳を重ね、一度の人生をどう生きてきたかを考えた時に、それではきっと後悔するんじゃないかと思うんです。

仕事を好きになれるかどうかは自分次第です。好きになればすべてがおもしろくなる。僕自身、そう思って生きてきました。サラリーマン時代も、ジャパネット時代も、サッカーの世界でも、どの仕事においても、夢を持ち一生懸命にやることでどんどん仕事が好きになっていきました。

画像

ーそういう熱量が画面から滲み出ていたから、ジャパネットさんの番組が視聴者に受け入れられたんでしょうね。

髙田さん:伝えたいと思ったら、自然と一生懸命になっていました。この「一生懸命である」ということが、生きていく上で非常に大切なんだと思います。

僕は講演などで「70年間、一回も失敗がない」とよく言っているんです。驚かれるんですけど、僕は、失敗には2通りあると考えています。一つは、「やらなかった失敗」。もう一つは「一生懸命やらなかった失敗」です。

一生懸命やってうまくいかなかったことは、自分への試練と置き換えています。誰も見てくれない、誰も評価してくれない、そう思ってしまうかもしれないけれど、一生懸命な姿は必ず誰かが見ている。一生懸命を繰り返していれば、いつか成功という言葉に行きつくのだと僕は思っています。

一生懸命やる人のもとには必ず一所懸命な仲間が集まる

画像

ー社長がそうした思いに至ったのは何歳ごろでしたか?

髙田さん:遅かったですね。50歳ぐらいだったかもしれません。だからこそ、若い人に気付いてほしいんです。そうすれば、僕よりもいい人生にできるからって。歳を取ってから「もうちょっとこうしておけばよかった」と思わないように、若いということは本当に素晴らしいことなんだよ、可能性をいっぱい秘めているんだよっていうことを教えてあげたいなと思うんです。

もちろん、常にうまくいくはずはありません。でも、一歩一歩登っていけば、その努力はいつの間にか積み重なって、大きな成果になるものです。そして、一生懸命やる人のもとには必ず同じ志を持った仲間が集まります。家庭でも、会社でも、全部同じだと思います。そういう人に助けられて人生の階段を上がっていくんじゃないでしょうか。

いろいろな方の伝記を読んでみても、特異なことをやっている人は意外と少ない。好きなことを一生懸命やったその結果として今の自分があるということを、みなさん言っておられます。そこに若者が気づき始めたら、日本はもっとすごい社会になるんじゃないかと思います。

画像