考える力を育てる3つの思考方法

何かをするときに勢いや思いつきだけで行動すると、失敗してしまうことが少なくありません。また、マニュアルで決められているからと何も考えずに行動するだけではスキルアップにつながらないでしょう。かといってとにかく考えればいいというわけでもなく、むやみに考えすぎたために答えがわからなくなることもあります。

こうした思考・行動の無駄を防いで物事を要領よく進め、既存の知識や他者の意見に振り回されずに自分の頭で物事を判断するためには、考える力を正しく身につける必要があります。しかし、ただ「考える力を身につけなさい」と言われても具体的に何をどうすればいいかわからない人が多いでしょう。

今回ご紹介する『考える力』は、大きく3つの種類の思考方法に分けることができます。考える力を伸ばす第一歩として、まずはこの3つの思考方法について知るところから始めましょう。

考える力とは何か

考える力を育てるには、「知識力」と「思考力」の両方が必要です。知識力はその人が持っている知識の量であり、たとえば暗記科目の成績がよい人はその分野の知識力が高いと言えます。しかし、いくら知識力が高くても思考力が充分育っていなければ考える力が高いとは言えません。

日曜大工に例えるなら、知識力は「本棚を作るために必要な工具・材料をどれだけ分かっているか、工具の扱い方や素材の性質をどれだけ知っているか」に相当します。一方、思考力は「どんな素材・形の本棚を、どの工具を使って、どんな手順で作りたいか」といったアイデアに相当します。いくら工具や材料が揃っていても、何のために・どんなふうに本棚を作りたいかを明確にイメージできなければ行動を起こすことはできないでしょう。

考える力を和英辞書で調べると「Ability to think」となりますが、思考力もまた「Ability to think」と英訳されます。このように日本語で考える力・思考力といっても定義が曖昧で、人によって少しずつ解釈が異なることもあります。そこで、次項からは思考力を育てるために押さえておきたい3つの思考方法について解説します。知識力とともに思考力を育てることで、考える力そのものを伸ばすことができるでしょう。

思考方法1.論理的思考(ロジカル・シンキング)

論理的思考(ロジカルシンキング)は、論理に基づいて思考する方法です。論理的思考力は道理や筋道にのっとって思考することで結論を導き、複雑な物事をわかりやすく説明する能力と紹介されることが多いです。論理的思考にはいくつかの方法がありますが、ここでは特に有名な「演繹法(えんきほう)」と「帰納法(きのうほう)」について紹介します。

演繹法は一般論やルールを数珠つなぎにして結論を導く思考法で、三段論法とも呼ばれます。たとえば「海に近い土地の人はよく魚を食べる」→「日本は四方を海に囲まれている」→「日本人はよく魚を食べる」といった例が挙げられます。

帰納法は、多くの個別の事実から類似点を見つけて結論を導く思考法です。たとえば「今日は東から日が昇って西へ沈んだ」「昨日も東から日が昇って西へ沈んだ」「一昨日も東から日が昇って西へ沈んだ」という事実から、「いつでも東から日が昇って西へ沈む」という結論を導き出すことができます。

ただし、演繹法・帰納法とも100%正しい結論を導き出せるとは限りません。上の例であれば魚をほとんど食べない日本人もいますし、北極圏・南極圏では1日中日が昇らない極夜や1日中日が沈まない白夜があります。そのため、一度導き出した結論に固執しすぎず、情報のアップデートや状況の変化に合わせて理論を再構築する柔軟性も大切です。

論理的思考のメリット

論理的思考ができず、頭の中にある複雑な考えを複雑な言葉のまま説明しても、聞き手に理解されないかもしれません。一方、論理的思考力がある人は複雑な思考をなるべく単純な言葉で組み直し、さらに誰が見ても納得できる論理・事実に基づいて説明します。そうすることで聞き手を納得させやすくなり、同時に自身の中で曖昧になっていた思考の整理にも役立ちます。

物事を進める上で重要とされる「PDCA(ピーディーシーエー)」という言葉がありますが、これはPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを繰り返すことです。PDCAサイクルを回すには目標をどのように設定するか、実行の結果が良い(悪い)と判断した根拠は何か、次の計画に向けての改善点は何かといった検証を絶えず繰り返さなければなりません。仕事の質を高めていくには、行き当たりばったりの計画ではなく常に論理的思考を用いて検証しつづけることが大切です。

多くの事実を前提にして結論を導く帰納法は、調査やマーケティングにも応用されています。プレゼンなどで特定の事実を確認・強調したい場合、その事実を裏付けるデータがあれば信憑性が高くなります。たとえば「夏はアイスクリームがよく消費される」という事実を強調したいなら、「都内在住の男女1000人にアンケートをとったところ、70%以上が『今年の7月は1週間に1個以上アイスを食べた』と回答した」というようなデータがあるとよいでしょう。

思考方法2.戦略思考

戦略思考は、ある目標を達成するために物事を整理し知恵を使って解決策を探る思考法です。おもにビジネスの場で使用される思考法ですが、ビジネスだけでなく学習・趣味・日常生活などさまざまな分野に応用できます。

まず、戦略思考で問題を解決する例を見てみましょう。あなたは、目の前にいる2人の人に丸いホールケーキを分け与えようとしています。ケーキを分ける道具は1本の包丁だけで、あなた自身はケーキを食べないものとします。2人を公平に満足させるには、どうすればいいでしょうか?

丸いケーキをぴったり半分に切るのは思いのほか難しく、ぴったり半分に切れたとしても「ケーキにのっているイチゴの切り方が気に入らない」などと言い出す人がいるかもしれません。解決策の例として「まず1人にケーキを切ってもらい、切ったケーキのどちらかをもう1人に選んでもらう」などが挙げられます。この方法なら2人とも納得できそうですし、少なくとも不満の矛先があなたに向くことはないでしょう。

戦略思考のメリット

ある目標を達成しようとしたとき、現在の状況からゴールまでの間に課題が見つかることがあります。目標を達成するためにはまずどんな課題がどれだけあるかを洗い出し、課題解決のために具体的にどうすればよいかを考えなければなりません。時には、これまでの経験や単純な発想だけでは課題を解決しきれないこともあるでしょう。

戦略思考は、限られた資源を使っていかに効率よく目標達成できるかを探る「経営戦略」と論理的思考を融合して個人の思考に落とし込んだ思考法とも言えます。戦略思考を用いて目標を達成するためには、必要に応じて目標に関係する分野の知識力や論理的思考を組み合わせる必要があります。つまり、戦略思考を鍛えることは考える力そのものを総合的に育てるよいトレーニングにもなるのです。

思考方法3.批判的思考(クリティカル・シンキング)

批判的思考と言っても、ただ単に物事を批判することではありません。目の前の事象を鵜呑みにせず「本当に○○は××だろうか?」と疑問を投げかけ、客観的・俯瞰的に判断することを批判的思考と呼びます。

たとえば「夕飯を急いで作りたいが、買い置きの食材が少ない」→「すぐに買い物に行けば材料を揃えられる」→「買い物に行く」は、筋道の通った解決法のひとつです。一方、この解決法に対して「少ない材料やストック食材を使って工夫すれば、充分美味しいものが作れるのではないか?」「急いでいるのにわざわざ買い物に時間をかけたくないし、新しい食材を買うための出費も勿体無いのでは?」と疑問を投げかけるのが批判的思考です。

この例において「やっぱり家にある材料を使って料理しよう」という結論に達した場合、「買い物に行く」という最初の結論が覆ることになります。ひとつの思考の過程において、まず論理的思考を行いさらに論理的思考に客観性を組み合わせた批判的思考を行うことで、より効率の良い解決策を導き出すのに役立ちます。

批判的思考のメリット

現代ではテレビやネットなどでありとあらゆる情報を簡単に得ることができますが、日ごろ見聞きしている情報は必ずしも正しい情報や良い情報ばかりとは限りません。与えられた情報を何でもかんでも無批判に受け入れるのではなく、納得できない・腑に落ちないことがあれば自分が納得するまで調べ、考えてみましょう。そうすることで、おのずと批判的思考力が鍛えられるでしょう。

実際に他者と話し合い、協力して何かを行うような場面でも、批判的思考が重要になります。自分の意見ばかり主張せず人との調和を重んじることは日本人の美徳ですが、多数決や一般論ばかりで物事を決めているとただの馴れ合いになってしまうこともあります。相手の意見や多数決の結果に納得できない場合は、思い切って我を出して発言することで問題解決の大きなヒントが見つかるかもしれません。

3つの思考方法を組み合わせて、考える力を上手に伸ばそう

考える力は、知識力と思考力の両方を伸ばすことで鍛えられます。知識力はその人が持っている知識の量であり、思考力は論理的思考・戦略思考・批判的思考の3つの思考方法で構成されます。従来の学校教育では知識力を高めることが特に重視されてきましたが、いくら多くの知識を持っていても思考力が未熟であれば考える力が高いとは言えません。

思考力を鍛えて考える力そのものを育てるには、物事を筋道立てて考えわかりやすく説明する論理的思考、論理的思考と経営戦略を組み合わせた戦略思考、そして論理的思考により高い客観性を組み合わせて物事を俯瞰的に判断する批判的思考を身につける必要があります。いわゆるお勉強だけでなく日々の活動やアルバイト・遊びを通してさまざまな物事に取り組み、問題・課題を自分の力で解決することで、考える力を育てていきましょう。

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