“何かに憧れる”という気持ちは、人が成長し続ける上で欠かせない感情だそうです。
みなさんも、憧れの存在という人物が一人はいるのではないでしょうか。
では、周りから見るとすでに完成しているような、一目置かれるスゴイ大人たちは、一体どんな人に憧れているのでしょう?
そんな、憧れの人が憧れる人の話、聞いてきました。

「かっこよく生きること」を学んだ ―株式会社Francfranc代表取締役 社長執行役員 髙島郁夫さん

多彩でスタイリッシュなデザインの雑貨や家具が揃うFrancfranc。その創業者であり、現在も代表を務める髙島郁夫さんは、商品を通じて私たちに豊かで楽しい暮らしを提案し続けています。

昨年はブランド創立25周年を迎えるとともに、社名をバルスからFrancfrancに変更。Francfrancの新章を開始した髙島さんの憧れの人の話に加えて、センスを磨く方法についても伺いました。

仕事の話ではなく、車、洋服、恋愛の話がメインです。

ー早速ですが、髙島さんの憧れの方と出逢ったきっかけについて教えてください。

髙島さん:イタリアのフィレンツェにある世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」を日本に紹介したヤマノ アンド アソシエイツCEOの山野エミールさんです。初めて会ったのは、17、18年前くらい。確か、山野さんが「サンタ・マリア・ノヴェッラ」を紹介してくださったことがきっかけだったと思います。

ー山野さんの第一印象はいかがでしたか?

髙島さん:とてもダンディな方だと思いました。年を重ねていくと、自分にとって先輩と呼べる人は少なくなります。さらに、自分が憧れていて、また会いたいと思える方となると、ごく限られてしまいます。
山野さんは自分にとってのダンディズムと車の師匠で、年に3、4回は二人きりで会って食事をしていますよ。テーマは、車の話、洋服の話、恋愛の話がメインでね。

ー恋愛というのは、どういうことを話されるのでしょうか?

髙島さん:男女の関わり方やマナーについてです。山野さんはイタリアへ行く機会が多いので、イタリアのカルチャーについて話してくれます。

例えば、イタリアの男性は女性が目の前を通ったら必ず声をかけるんですね。ナンパや不純な目的というよりは、むしろマナーに近い感覚というのかな。それは素敵なことじゃないですか。そういう話をしていると、時間が過ぎるのを忘れてしまいますね。

ーお二人の間でお仕事の話が出ないことが意外でした。

髙島さん:直接ビジネスにはつながる話ではないものの、人として大切なことに気づかされることが多いですよ。イタリアには、老舗のテーラーやレストランが所属する組合のようなものがあるんですけど、山野さんはそこにも出入りされていてフィレンツェの姉妹都市である京都との橋渡し役をされたりもしています。山野さんは新しいものに敏感である一方で、古き良きものの価値を教えてくれる方です。

ー山野さんから言われたことで印象に残っていることはありますか?

髙島さん:「人間なんて所詮つまらないもの。儚いものだと思っていれば、豊かに暮らせる」というような意味の老子の言葉です。

たとえば、裕福でも心が貧しい人はいるし、お金がなくても心が豊かな人はいる。自分の心をどう置くかで、人生は豊かになってくる。仕事に限定されない、もっと根本的な考え方を教わりました。

20160823-_89Q6622

現状で満足したら終わり。「もっと」「さらに」の気持ちを持ち続ける。

ー髙島さんがお仕事をされる上で、大切にしていることはなんでしょうか?

髙島さん:尽きない気持ちを持ち続けることです。つまり、現状で満足せずに、「会社をもっと成長させよう」「ブランドをさらによくしよう」と高みを目指し続けることです。もちろん、成長する過程では山もあれば谷もありますが、「これでいい」と思ったら終わりです。きっと、いつまでも完成することはないでしょうね。

ーさらなる成長や向上のために、日頃どういうことをされているのですか?

髙島さん:遊ぶことに尽きます。サーフィンやトライアスロンなどの趣味に時間を使ったり、食事をしたり、家族との時間を持ったり……。自分の知識を得られる時間をどれだけ増やすかを重視しています。

ー社員の方にも「遊べ」ということは……?

髙島さん:もちろん、伝えていますよ。「62歳の私がこんなに遊んでいるのに、君がその歳でその程度しか遊ばなかったら、到底私には勝てないよ」って(笑)。

20160823-_89Q6622

ー今はインターネットで得られる情報が多すぎて、何か始めようにも何をやっていいかわからなくなっている人も多いのではないかと思います。

髙島さん:それは言えますね。今の若い人たちは、私たちとは情報の関わり方が変わってきているように思います。私たちの若い頃は、新聞やTVなど、流れる情報の中に自然と身を置く方法がありました。新聞を読むと、政治から世界情勢、経済まで、さまざまな情報を知れるため、そこから気づきを得られることも多い。でも今は、自分に興味のある情報を取りに行くことが多いと感じます。

ー情報との関わり合い方の違いは、若い社員の方と話していて感じるのでしょうか?

髙島さん:たとえば、新聞を読まないスタッフに対して、「それだと世の中のことがわからないじゃない」というと、「ヤフーニュースを見ていますから」と返ってくる。でもそれは、自分の趣味嗜好だけで選んだ情報で、取りに行くニュースでしかないわけです。そういうスタッフと話していると「それは何ですか?」と聞かれることが多く、物を知らないと感じることが多々あります。

ー情報を取りに行くことが多いと、自分の好きなことに関してはすごく詳しい反面、一般知識を得る機会が減ってしまうということですね。

髙島さん:私は、世の中のビジネスは、点が線になり、線が面になっていくと思っています。つまり、一見関係ないように見える点と点を結んだ時に、思わぬビジネスにつながることもすごく多い。自分の趣味嗜好で取捨選択した情報しか持っていないと、点から線にすることは難しいです。

ーどうすれば、自分の興味意外に世界を広げられるのでしょうか?

髙島さん:書店に行くことです。書店には、自分の好みに関係なく、あらゆるテーマの本が並んでいます。陳列された本のタイトルを見ているだけで、世の中の流れを知ることができます。自分の好みではなかったけど、気になる本に出合えるかもしれません。「本はAmazonでも買える」と思うかもしれませんが、書店にわざわざ足を運び自分の目で見ることにより、気づくこともありますから。

20160823-_89Q6622

ーご著書の『遊ばない社員はいらない』(ダイヤモンド社)では、「個人の力を磨いてほしい」「若い人にセンスを磨いてほしい」と書かれています。広い情報に触れることは、センスを磨くことにもつながるのでしょうか。

髙島さん:もちろんです。私たちの仕事は「暮らし」に関わること。つまりはオールジャンルです。何か一つのことを突き詰めればいいわけではなく、広く知識を得ることを意識する必要があります。

センスには素質による部分ももちろんありますが、興味と関心があれば努力でなんとかなるものです。私も新卒で家具の会社に入った頃は、インテリアに関心もなければ知識もありませんでしたから。

ー大学生がこれからセンスを磨くには、何をすればいいのでしょうか?

髙島さん:美術館へ足を運ぶでもいいし、新しくできたお店を見に行くのもいい。自分の目で見て、知ることが大切です。たとえば、何件も店舗を見ていると内装や商品の傾向が似ていることに気づきます。すると、流行を知ることができ、世の中の流れがわかるようになります。知識や見識の積み立てが重要です。

ー知識や見識を蓄積することにより、その後の伸び代も変わってくるのでしょうか?

髙島さん:もちろんです。自分の知識や経験が増えることにより、商品についての知識や感性が養われて、お客様に対する言葉も変わります。そこには終わりがないから、知識や経験を積み続けないといけません。その“やり続けること”に、仕事の深みがあるのではないでしょうか。

20160823-_89Q6622

目の前の仕事に真摯に取り組めば、発見できることがある。

ー先ほど「インテリアに関心がなかった」と言っていましたが、髙島さんが家具の会社に就職した理由が気になります。

髙島さん:答えは簡単で、就職先が家具屋しかなかったからです(笑)。入社したばかりの頃は仕事に対する興味や関心がなかったものの、続けているうちに見え方が変わってきました。暮らしというのは、私たちの基盤です。それは、器である家や日々触れる家具も同様だと思っています。仕事を続けているうちに、インテリアという歴史ある産業が持つ文化的な背景に面白さを見出せるようになりました。

ー自分の希望に沿わない仕事に就いたとしても、まずは目の前の仕事と向き合うことが大切なのですね。

髙島さん:それは、よく学生のみなさんにも話しています。自分の思いとは異なる仕事に就いたとしても、そこで素直に取り組んでいれば、見えることもあります。もちろん、がんばっても何も見つからない可能性もあります。見つからなければ、辞めて別の仕事を探すことを考えてもいい。それも含めて発見ですから。

ー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

髙島さん:時代の変化とともに、Francfrancのビジネス展開も量から質へと変わる必要があると考えています。当然ながら、クリエイティブな領域も広がりますし、新しいことへのチャレンジも生じます。

それから、2017年に社名をブランド名と統一したことにより、Francfrancの新たな価値も見えてきました。これまで私たちが培ってきた資源を使った価値創造など、できることは大いにあると感じます。これから先も、今よりもっと楽しくなっていくでしょうね。

20160823-_89Q6622

line@