日本一有名な大学生が辿り着いた、 “やりたい”ことの、見つけ方(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士2年生 喜多 恒介さん)



喜多くん

喜多恒介という学生を知っているだろうか。自他ともに認める「日本で一番有名な大学生」である彼は、学生活動の枠を超えて様々な省庁や企業と連携してプロジェクトを行ってきた。またGlobal Shapers にも選出され、この2年間は海外での活動も積極的だ。同時に、起業家として経営にも関わっている。

これまでMFCでは3回、喜多君の取材インタビューを行ってきた。大学学部在籍の最後の瞬間海外に旅立つ直前、そして社会人大学院向けのイベントの立ち上げを行った時、と彼の活動の節目でそのメッセージを取材してきた。

今回、「新しいキャリア教育」を立ち上げたと聞き、久々に彼と会って話を聞いてみた。長年、学生と寄り添って生きてきた彼が考える新しいキャリア教育とは?
(取材・執筆:羽田 啓一郎)
*本インタビューの内容は2018年7月時点のものです

結果にコミットするキャリア教育プログラム

羽田

こんにちは、お久しぶりです。

喜多さん

お久しぶりです!羽田さんとお会いするのは2年ぶりくらいですかね。

羽田

そうですね、確かそれくらいかな?さて久々なので色々聞きたいことがあるんですが、まず最近始めたNarrative Career Schoolについて聞いていきたいと思います。喜多君はこれまで、Next Leaders MeetingやJASCAをはじめ、学生や企業、行政を巻き込んであらゆる活動を行ってこられたと思います。それらの活動のテーマは学生のキャリア支援だと思うのですが、今回のNarrative Career Schoolに至るまでにどんな経緯があったのですか?

喜多さん

はい、これまで本当に色々な取り組みをやってきました。キャリア教育系のイベントってたくさんあると思いますし、僕もこれまでずっと企画や運営をやってきたんですけど、何か違うなとずっと思っていました。そして、気づいてしまったんです。イベントでは人は変われない、ということに。

羽田

イベントでは人は変われない!ズバッといいますね。でもまあ、よく分かります。

喜多さん

もちろん、イベントでも気づきや刺激はありますし、イベント自体を否定するつもりはありません。でも、全国を回って学生と話すとみんな言うんですよ。「やりたいことが見つからない」って。これだけキャリアイベントがあるのに、結局みんな見つからないんです。

羽田

単発のイベントで人が変わったら苦労しないですよね。

喜多さん

(笑)。だから僕はJASCAという社団法人を作って活動に連続性を持たせました。また en-courageで全国に組織を作り、先輩が後輩を面談する、というエコシステムを作りました。一方僕自身は東京大学から慶應義塾大学の院に進んで、ソーシャルキャピタルを学びつつ、キャリア教育について探求してきました。そして行き着いたのがNarrative Career Schoolです。

羽田

ざっくり言うと、Narrative Career Schoolはこれまでのキャリア教育と何が違うんですか?

喜多さん

ざっくり言うと結果にコミットするキャリア教育です。

羽田

結果にコミットするキャリア教育!

喜多さん

2か月間あるのですが、まず合宿から始まるんです。Narrative Career Schoolはナラティブ・キャリアカウンセリングという学問の考え方をベースにしていて、語りによる自己形成を合宿では行います。僕が自信をもってお勧めするメンターも参加していて、参加学生はそこで自分をさらけ出すのです。合宿型なので夜通し語り合って、最後は参加者もメンターもお互いのことをよく理解して、号泣する人も多いんです。感動的ですよ。

羽田

参加対象は大学生?参加は自由ですか?

喜多さん

いえ、高校生も参加OKにしています。そして参加する為にはちょっとしたハードルを設けていまして、手紙を書いて送ってもらいます。

羽田

手紙?

喜多さん

はい、手紙です。「本気で変わりたい」って思う人じゃないとなかなか変えられないので、まずは直筆で自分の想いを書いてもらっています。

羽田

なるほどね、最初に負荷をかけることで同質の想いをもった人が集まりやすいですものね。コミュニティ運営においては非常に重要だと思います。

喜多さん

そうなんです。でも合宿はあくまで起点。そこで終わってしまっては感動的な合宿、というだけですからね。そこから2か月間、メンターが一緒に伴走しながらそれぞれのやりたいことを実現する為に具体的なアクションを起こしていきます。週1回で勉強会も開催しますし、各自の活動についての報告会も行います。こうして、やりたいことが確実に見つかる、という結果にコミットするのです。

羽田

やりたいこと……。僕、「やりたいことを見つける」ってちょっと懐疑的なんですよ。やりたいことを見つけるって、若者にとって強迫観念になっていたり圧力になってたりしませんか?やりたいことはそんなに見つけないといけないんだろうか、といつも思いますが、そのあたりどうですか?

喜多さん

そこでおっしゃってるのは仕事探しという意味での「やりたいこと」ですよね?

羽田

そうですね、はい。就活になって「やりたいこと見つからない……」って自己否定に陥る子っていませんか?就活サイト眺めてたって見つかるはずないと思うんですよ。

喜多さん

それは全く同感です。でも僕の言っている「やりたいこと」は動名詞です。「やる(動詞)」「したい(意志)」「こと(動名詞化)」

羽田

ああ、ああ、なるほど。

喜多さん

将来の仕事選びじゃなくて、今関心のあることとかやってみたいことは誰にでもあると思うんですよ。ただそれを、色んな理由で実行に移していないだけで。だからそこを僕らがメンターと一緒になって2か月間伴走します。自分でアクションを起こしていく中で色んなことに気づくし、手ごたえもある。そうした気づきから、将来が描けるはずだと信じています。

羽田

それならすごくよく分かります。「やり」「たい」「こと」は程度の差はあれど誰にだってあるでしょうしね。僕、将来の仕事選びという意味での「やりたいこと」に必要なのは原体験だと思っていて。原体験が何もないのに就活サイトでカタログ的に企業見せられてもわかるはずねえだろ、と思っちゃうんですよ。

喜多さん

そうです。だからNarrative Career Schoolではその原体験をつくるお手伝いをしているんです。

海外を回って見えてきたこと。途上国も日本と同じ?

世界経済フォーラムによって任命される33歳以下の若者、グローバルシェイパーズの一人である喜多君。

羽田

じゃあちょっと話を変えて。喜多君ってここ2年間くらい、海外飛び回ってましたよね?その体験が喜多君にどんな影響を及ぼしたか教えてもらえますか?

喜多さん

はい、アジアを中心に世界中を飛び回ってきました。そして様々な社会起業家と出会って語り合ってきました。興味深いのは、途上国のトップ層も日本と同じような現象が起きている、ということです。

羽田

ほう?どんな現象ですか?

喜多さん

先ほどお話しをしてきた「やりたいことが見つからない」という問題ですね。あくまで富裕層に限って、ですが。途上国なので経済的にはまだまだこれから伸びていくエリアですし、エネルギーは国全体として確かにあるのですが、その中での富裕層はやはり日本と同じ。もう物質的に、金銭的に満たされてしまっていて、そこから先の生きる目的みたいなものを見失って身動きがとれなくなっている印象です。

羽田

なるほど……。とすると「やりたいこと問題」はある程度経済的に豊かになると発生する人類共通の課題なのかもしれないですね。

喜多さん

僕は人類には三つの壁があると考えています。まずは幸せに生きる為の壁です。これまで人類は、不幸を無くすことにフォーカスして発展してきました。実現できないこと、不便なことはテクノロジーの発展とともに減っていっていると思います。しかし一方、「幸せになるには?」という問いにはまだ応えられていません。不幸がある程度減ってきたら、次は「幸せになる」為の課題が待っているのです。

羽田

二つ目は?

喜多さん

これは太古の昔から課題だと思いますが、不死の壁ですね。技術的な話だけでなく倫理の問題も出てくるので簡単ではありません。そして三つ目。二つ目の不死の壁とも関係しますが、神への壁です。人間は欲求や遺伝子などに手を加えることが、もはや出来てしまう(脳に電気信号を流して欲求の対象を変えたり、遺伝子操作をしたり)。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、それはもう神の領域です。

羽田

不幸を無くすことがこれまでの人類の進化の歴史だとして、ここから先は新しい課題に人類全体が向き合っていくことになる、と。

喜多さん

そうです。2年間、世界を回ってきて地球社会が自分事になった感覚があります。これまでも世界情勢にアンテナは張っていましたが、やはり実際に行ってみて自分の向き合い方も変化が起こりました。僕は今回のNarrative Career Schoolをまずは日本で確立させて、そのモデルをいつか世界に持っていきたいと考えています。

羽田

ありがとうございます。では最後の質問。喜多君はこれまでずっと学生と向き合って活動をなさってきました。自らも学生でい続けてまで。ちなみに今って何歳でしたっけ?

喜多さん

先日、29歳になりました。これからは博士課程に進みますが、その前に1年間ギャップイヤーを取るつもりです。


長年学生に寄り添ってきた喜多君から見て、学生はここ数年でどう変わった?次のページへ!

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