ちがう世代からの見られ方を知る。
それって案外、同じ世代と話しているときよりも自分の強さとか弱さに気づかせてくれるものなのかもしれません。
「最近の若い奴らは・・」の言葉のもとに、大人たちがきみたちへ贈るエール、ぜひご覧ください。

うらやましいっす!!―ヴィレッジヴァンガード 植田将行さん

店内に一度足を踏み入れたら、別世界や別時代に迷い込んだような錯覚に陥ってしまうカオスな書店“ヴィレッジヴァンガード”。大阪府岸和田市出身の植田将行さんは20代の頃にアルバイトとして入社後、いくつかの店舗で店長を務め、現在は担当地域の店舗運営や人材育成をサポートするエリアマネージャーとして活躍しています。

ヴィレッジヴァンガードの店内同様に独特の雰囲気を持つ植田さんは仕事上、最近の若者たちとも接する機会の多い。今回の「最近の若者は…」の質問に対しては、若者に対する優しい視点の回答が印象に残りました。

自分の我を突き通す奴のほうが注目してしまう

―たとえば、植田さんの目から見て、ヴィレッジヴァンガードで一緒に働いている20代の若者はどのように映るんですか?

植田さん:正直、「すごいなあ」と思うことばっかりです。自分の若い頃と比べると、最近の子はできすぎていてビックリします。まず、敬語が使える!たとえば、「植田さん、今日、何されていたんですか?」って言ってくれるんですけど、僕なんて目上の人に対して「なにしてたんすか?」でしたからね。「すか?」が敬語だと本気で思っていましたから(笑)。

ただその一方でうちの場合、敬語を使えることが重要かというと、そこまで重要ではないかもしれませんけど。まともな子が増えたぶん、変な奴だったら目立ちますし、礼儀とか関係なく、自分の我を突き通す奴のほうが良い意味で注目してしまいますね。

植田さん

―“自分の我を突き通す”というのは具体的にどういうことでしょうか?

植田さん:ヴィレッジヴァンガードでは、自分の担当するコーナーごとにある程度のバイヤー機能が与えられます。つまり、アルバイトでも自分の判断で仕入れるものを決めて売り場をつくることができるんです。

今思えば、僕がアルバイト店員だった頃はみんな、それぞれがまるで自分が立ち上げた会社のようにその権限をフル活用していました。なんとかして目立ちたい、そういう奴しかいなかったですね。

今の時代はSNSなどを通して「いいね」と自分の個性を褒めてもらえるけれど、昔は承認してもらう機会が少なかったので、そうした仕事で自分の我を出していたんでしょうね。ちょっと前の話ですが、カップ焼きそばにゴキブリが混入していたというニュースをテレビで見たら、僕なんかはつい「カップ焼きそばとゴキブリのおもちゃを一緒に売り場に並べてみては……」と思っちゃうんですよね。もちろん今の時代ではコンプライアンスやモラルの観点からそういう売場編集はしないですが、僕たちにしかできない売場や発想というのは常に意識してます。

そういう個性は最近、減っている気がします。まあ、本当はそういうことを楽しめる若い子もいると思うんですが、それをやったらすぐ炎上してしまうからやらないのかもしれませんね。

植田さん

インターネットなどを使って、新しいことをどんどん生み出してほしい

ーそういう意味では、仕事において我を突き通しづらくなっているんですかね。では逆に、この部分は若い子に叶わないと思うところはありますか?

植田さん:最近の若い子は「自分は絶対にこれがいい」という主張は減ったけれど、「これが流行っているから」とか「流行りそうだから」という感覚には敏感ですよね。すごいですよ、彼らの情報収集能力や情報処理能力は。

やはり、生まれた時からインターネットがあるというのは大きなアドバンテージだと思います。僕の子供もスマートフォンを持たせたらすぐ使いこなしますからね。僕たちがこれに慣れるのにどんだけかかったと思うねんって(笑)。

最近、高校生がインターネットを活用して個人のレシートを買い取るビジネスを立ち上げたニュースもありましたよね。すごい発想力と行動力だと思います。こうしたインターネットなどを使った新しいサービスやビジネスはどんどん考えてほしいですよね。

僕らの20代の頃とはまったく違います。正直、うらやましいです。「お前たち、すごく恵まれていることをわかっておけよ」って言いたいですね(笑)。

―ちなみに、植田さん自身はどんな若者だったんですか?

植田さん:僕ですか?高校生の時に地元の岸和田だんじり祭にはまってからは、もう完全に祭り中心の生活でした。祭りでしか感じられない、地域の輪や一体感にめちゃくちゃ引き込まれましたね。だから、高校卒業後も地元に残って、いろいろなアルバイトを経験しながらだんじり祭の準備に関わっていました。

ちなみに、ヴィレッジヴァンガードとの出会いも高校時代。友達から「死体が載ってる本を置いてる本屋を見つけたぞ」って聞いて、死体見たさをきっかけに通い始めました。衝撃でしたよ、こんな空間あるんだ!って。

で、21歳の時に地元のショッピングモール内にある店舗でアルバイトを始めたんです。そうしたら、当時の店長が「地元にいながらも店長を目指せるよ」という声をかけてくれて、店長を目指すことに。5店舗で店長を経験して、30歳の時にエリアマネージャーになりました。自分みたいなやつがまさか店長やエリアマネージャーになれるとは思っていませんでしたね。

―20代の経験の中に、「祭り」というキーワードが登場しましたが、祭りに打ち込んだ経験は現在のエリアマネージャーの仕事に活きていたりするんですか?

植田さん:祭りの経験は今の仕事にすごく活きていると思いますよ。祭りでは周囲の仲間とのコミュニケーションも鍛えられますし、“熱くなる”という感覚も自然と身につきます。

祭りって1年に1回、「うわー!」って盛り上がるんですけど、それを毎年繰り返していると振り切れるようになるんですよ。自分で自分のテンションを上げていくのが得意になるし、若い子たちと仕事をする時も良い意味でみんなを熱くすることができます。

植田さん

上の世代は、褒めるとよい。

―もし、今、植田さんが20代に戻れるとしたら何をしますか?

植田さん:めっちゃ難しい質問ですね。今の精神状態や記憶、知識量のまま20代に戻れるとしたら、モテるための何かをするんじゃないですかね(笑)。結局、20代の頃は、モテたいとしか考えていなかったので。その点、最近の若い子はモテに対する意識はめちゃくちゃ低いですね。「もっとモテる努力をせいや。少子化が進むやんけ」って危機感を感じます(笑)。

でも、今は表現の仕方が違うだけかもしれないですね。彼らはファッションひとつとっても見本が溢れるようにいっぱいあるので、こんな格好しておけば大体いけるみたいなのがあるし、それよりはSNSのフォロワー数を増やすことに興味があるのかなと感じています。

あと、日常を楽しむコツを知ってますよね。今朝もサッカーの日本代表の応援をしにスポーツバーに初めて行ったんですけど、朝4時前なのに若い子がめっちゃいて、みんな「日本!」って応援してるんです。得点を決めた時とか僕らのところにも来てくれて、ハイタッチしてくれたんですけど、合わせるのに必死でしたよ。

僕らのほうが楽しみ方を教えてもらいました。みんなの一体感というか、つながっている感とか、ちょっとうらやましかったですね。

植田さん

―植田さんとしては若い子から学ぶことが多いわけですね。とはいえ、彼らが今、会社に入ったら、植田さんたち30代の人たちが上司になっていきます。そういう上世代の人たちと付き合うコツとか教えてあげるとしたら、どんなことを伝えたいですか?

植田さん:たぶん、僕らより上の世代は人から認められたり、承認されたりする機会が少なかったので、ほめてあげればいいと思います。たとえば、服装を見て「それ、オシャレですね」って言ってあげるだけで、その人は一日中ハッピーだと思うんです。

今の若い子たちには当たり前かもしれませんが、ほめられたり、承認されたりすることに関しては、絶対に若い人より飢えています。

―そうかもしれませんね(笑)。最後に、植田さんの今後について教えてください。

植田さん:ヴィレッジヴァンガードとしても、僕個人としても、若い子がビックリするくらいのスピードで変わり続けていきたいですね。これからの時代、僕らのようなリアルショップは経営が厳しくなると言われていますが、僕は苦しい戦いをするとは思わない。

モノじゃなく、コト(体験)が注目される時代だからこそ、ヴィレッジヴァンガードのような店員一人ひとりの個性や感性が色濃く出る書店はチャンスだと思います。

僕たちにしかできないとがった売場編集や発想で、もし、叩かれたとしても「はい。僕がやりました」と堂々と言えるような書店にしていきたいですし、会社としてもそのくらいの人材育成をしていきたいと思います。

それに、若い子とどんどん新しいサービスやビジネスを生み出していきたいですね。とにかく、若い子の今の環境は「うらやましいっす!!」。思い切り、楽しく生きてください。

ー今日は貴重なお話をありがとうございました。

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植田さん