【後編】「遺すべきものを遺す」 込み上げる感情の先にある リアルなアートの追求



前編では、彼女が考えるアートと感情の在り方についてお話頂きました。
表現することを深く考えてきた深町さんが、彼女なりに行きついた“遺すべきもの”とは?

登場人物

深町さん深町さん
現在休学中の大学4年生。アーティスト、フォトグラファー、ビデオグラファー、ライター、アートコレクターなど様々な肩書を持つ。美しい写真を多く撮影している。

さとゆうさとゆう
明治大学に通う大学3年生。2018年2月からMFCでインターンを開始。2019年4月(大学4年生)から休学し、長期留学予定。母の影響で幼いころから美術館によく連れて行かれていたこともあり、今でも上野に展覧会を見に足を運ぶことが多々ある。最近見た展示展は「ミラクル エッシャー展」。

“撮らなきゃ”と思う一瞬をつかむ

深町さん
さとゆう:深町さんのnoteの投稿のなかで、Instagramの投稿がフォロワーを意識した写真から自分の好きな写真を載せていくように変わったとおしゃっていましたが、何かきっかけがあるんですか?

深町さん:ただ見た目が綺麗な写真、に興味がなくなったことがきっかけです。ただ見た目が綺麗で、美しくて、でも「綺麗」以外なにも感じない、ストーリーのない写真、語りかけてこない写真。撮影と編集の基礎ができるようになって、それなりのカメラを使って、「もともと綺麗なものや人」を撮る。そういう、コツさえつかめば誰でも撮れる写真に、価値を感じなくなったんです。

私のお友達のフォトグラファーさんには、意図せずフォロワーが何万・何十万にもなった人がたくさんいるので、それもあって、私はフォロワーや人の評価に躍起になっていたんです。恥ずかしながら、「あっち側の世界に行きたい」とずっと思っていました。それで、人が好きそうな写真、見た目が綺麗な写真、そういう写真をずっと撮っていて、綺麗な写真を撮って評価される快感と、写真の中の空虚さとの間で、葛藤していました。

綺麗なもの、はもともと好きですが、でも、同時にいつも違和感がありました。
それは、写真自体の虚しさです。「綺麗」以外なにも感じない、空虚さです。おそらくみんな、外見が綺麗なだけで教養や中身がない人に感じることがあると思うのですが、あの虚しさを、私は自分の写真に感じていました。

「虚しい」と感じて、そして、
「このままだと私は、大好きなはずの写真が嫌いになってしまう」と思って、それで、人の評価を気にして写真を撮ること・投稿することをやめたんです。

さとゆう:感性でいいと思った写真を撮る、という深町さんが大切にしていたモットーがその時は失われつつあった、ということですね。

深町さん:そうです。5月、アボリジニとの生活で、私は自分が本当に納得・満足できる写真、本当に無意識に撮る手が動く写真というものを知ることになりました。それは、「遺すべきものを遺す写真」です。

さとゆう:深町さんの写真には、「後世に伝えて行きたい」という思いが込められているように感じます。今もおっしゃっていましたが、Instagramでも「遺すべきものを遺す」という言葉を良く使われていますよね。深町さん自身が考える「遺すべきもの」の判断基準はなんですか?

深町さん:「遺す」の漢字には「伝える」の意味があります。誰かに伝えたい、あるいは伝えるべきものが「遺すべきもの」だと思っています。
これだけは私が死んでも、その場にいなくても伝わってほしい、この気持ちやストーリーを遺したいと感じるものや、何年越しかに自分自身が見たとき、その時の感情や空気、匂いとかを思い出したいと思えるようなものが「遺すべき」写真かなと思います。

深町さん:私は、「遺す」というのは、写真の本質的な価値だと思っています。たとえば、過去の人の写真を見るとき、昔の街並みを写真で見るとき、過ぎ去ったものや人を写真で見ると、それ自体はもう見ることも触ることもできないのに、脳が、心が、寄り添う感覚があります。そのものの空気とか、においとかを、私たちは感じます。私は、そういう、遺すべき、伝えるべき写真を、写真を見るとそのときの情景が浮かぶような写真が撮りたいのだ、ということに気がつきました。

さとゆう:どんなシーンで深町さんはそれに気付いたんですか?

深町さん:自分が本当に撮りたい写真は「遺すべきものを遺す写真だ」と気づかせてくれた1枚があるんです。これはnoteにも書いた内容なのですが、改めてここでもお伝えさせていただきたいです。

深町さん

“彼はアロンと言います。
推定30~35歳、妻と子供がいます。

この写真は、彼とその友達家族と一緒にカンガルー狩りに行ったときの写真です。
狩場の近くまで車で向かっているときで、私はこのとき助手席から写真を撮りました。実は彼は今年の3月頃まで3年間刑務所にいて(撮影時は5月初旬)、
どうして刑務所に入ったかというと、奥さんが浮気をしたのを知って頭に血がのぼり殴ってしまったからだそうなのですが、つまり本当につい最近、自分の大地に帰ってきたわけです。また別の記事でアボリジニ民族については詳しく話しますが、
彼らにとって、大地は彼ら自身そのものなのです。迫害され虐殺されてきた歴史をもつ彼らですが、約4~5万年前から、精神と大地の結びつきを第一に大切にしてきました。彼らは、大地を護り、大地のお世話をするために存在しているといいます。

そんな彼が、3年間、狭く無機質な建物に閉じ込められて、やっと自分の大地に帰ってこれた。カンガルー狩りですから、彼は車窓から獲物の姿を探している様子です。
彼はプロのハンターで、この後彼は何匹も獲物の姿を捉え(当然私たちの目には見えないほど遠くの獲物を見つけます)、狩りに成功するのですが、獲物を探しながらも、彼はこうして大地の風を、空気を、匂いを、すべてを感じていたのです。”

深町さん:この時車が走っていた場所は、舗装はおろか道もない場所でしたから、車は上下にガタガタと揺れ、カメラを構えるのもやっとでした。

この一瞬を残さなきゃ、本能的にそう思っていました。気づけばシャッターボタン押していました。「撮りたい」よりも「撮らなきゃ」と自分の脳と心と体が一体して、私にシャッターを切らせた一瞬でした。

気付いたら続けているものこそが、本当に好きなものなんじゃないかな

深町さん

深町さん:この1枚が、考えを変えるきっかけになった写真です。このまま写真を撮り続けていけば、私の写真の技術力はもっとあがっていくと思いますし、今よりもっと、「うまい」と言われる写真を撮ることができるようになると思います。

でも、どんなに「うまい」と言われるようになっても、私は一生この写真を忘れません。そういう写真です。
この写真が、私がこのストーリーと一緒に伝えることによって、誰かにとっても大切な、素敵な一枚になったらいいな、と思っていて、こういう写真を一枚でも多く撮るために、私はこれからも写真を撮り、発信を続けます。
写真に限らず、本当に自分がいいと思う写真やものを発信していきたいです。

さとゆう:最後に、やってみたいと思う事に対してなかなか足を踏み出せない読者にアドバイスをお願いします!

深町さん:こんなことを言うのも申し訳ないのですが、やってみたいと思う事に対して足を踏み出せない、という感覚が私はあまりわからなくて……。
本気でやりたいと思っていないから、リスクという言い訳をつけてやっていない人が多い気がしています。

「世界一周したい」と言っている人に、100万円あげたら会社や大学を休んで本当に行くのか、危険だからと言う人に対してボディーガードをつけます、と言ったら本当に行くのか、ということだと思っていて。そこまでの気持ちがまだ高まっていないだけだと思うので、気持ちが高まったときに自然にやるのだと思います。

なので、まずは自分が本当にやりたいことや、本当に好きなことを考えることから始めたらいいんじゃないのかな、って思います。探すのではなくて、気づいたら続いているものが本当に好きなものだと思うんです。

さとゆう:まずはとにかく試してみることが大事、ということですね。

深町さん:そうですね。私自身、小学4,5年生くらいから、自分が好きなもの、しかも人と違うことで認められたい!と思っていて、ピアノ、水泳、体操、スキー、スノボ、
ダイビング免許、舟釣り、船舶免許、旅行、ブレイクダンス、ギター、ドラム、ボイトレ、アクセサリー作り、DIYで自分の家の床板を作ったりなどなど……(笑)。

自分のお小遣いやバイト代・収入はほぼ習い事や経験に消えて、とにかく興味のあるものは片っ端からやっていました。
色々やりましたが、全部好きで始めたものの、なんとなく合わなくてほとんどやめていったんです。気づいたら残ったのが写真でした。細々と続いているものは他にもありますが、こんなに色々なものを試して残ったのはほぼ1つだけでした。なので、まずは頭で考えるのではなくて、何でもいいので気になるものをすべて「やってみる」ということもいいのではないかなと思います。やってから気づくこともたくさんあるので、やってみないことには始まらない!と考えています。

さとゆう:貴重なお話ありがとうございました!

深町さん

取材後記

どこまでも自分の好きなものを追い続け、少しでも「なんで、どうして」と感じるものに対して自分の足を使って確かめに行く。深町さんの行動は全て自分の感情に素直であり、だからこそ何かに没頭でき、その時間は人の何倍も幸福な時間なのだろう、と感じました。

この記事を読んだ皆さんがやりたいことに対して足踏みをしていたとしても、そもそもやりたいことが見つかってなかったとしても、それでいい。立ち止まって自分を見つめ直すことを恐れず、ゆっくり前に進んでいけばいいんです。自分に自信を持ち、好きなことをしている瞬間の自分を好きでいられる人が増えますように。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今回インタビューをさせて頂いた深町さんが主催する『ART IS?』は7月16日~29日まで開催しています。今回のインタビューを通して「アート」に関心を持った方は是非お越し下さい!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

PAGE TOP