”何かに憧れる”という気持ちは、人が成長し続ける上で欠かせない感情だそうです。
みなさんも、憧れの存在という人物が一人はいるのではないでしょうか。
では、周りから見るとすでに完成しているような、一目置かれるスゴイ大人たちは、一体どんな人に憧れているのでしょう?
そんな、憧れの人が憧れる人の話、聞いてきました。

「ちょっとずつ世界を広げること」を学んだ―non-no元編集長 小林亘さん



小林亘さんは、大学卒業後に集英社に入社し、2014年より女性向けファッション雑誌『non-no』の編集長を務めている。長年若い女性に愛され続ける雑誌の将来を見据え、編集長として常に新しいことに挑戦しています。そんな編集者としてのキャリアを築かれている小林さんは、どんな憧れの人と出会い、どんな影響を受けたのでしょうか。その方との意外な縁も含めて、伺いました。
(H30.6.20時点ではnon-no編集長でしたが、現在は集英社 Myojoの編集長を担当されています。)

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編集長交代は雑誌が変わる時。新しい試みに挑戦する。

小林さん:私が編集長になって、今年で4年になります。“編集長が交代するときには雑誌も大きく変化するもの”だと教えられてきたので、編集長に就任してすぐに『non-no』をどういう雑誌にするかを考えました。

―その方向性というのは……?

小林さん:ターゲットをよりセグメント化(分類)することです。インターネットの普及により、人々の趣味嗜好がより細分化されています。その中で、『non-no』を選んでもらうにはどうすればいいのかを実行する必要があると思ったのです。まずは、これまでの“20歳前後の女の子”とざっくりしていたターゲット層を大学生向けに絞りました。

―企画面でも次々と新しいことに挑戦されていると聞きます。

小林さん:『non-no』の読者でない人が、手に取るきっかけになればと考えました。最近だと、TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』やライブで人気の『Aqours(アクア)』というアイドル声優グループを誌面で取り上げました。

実はこれ、『MEN’S NON-NO』との合同企画として提案したものなんです。誌面だけでなく、現場でメンバー同士が撮影したサイン付きチェキをプレゼントする、セブンネットで購入すると4000部まではクリアファイルがつくなどの企画も合わせたところ、発売10日前に予約だけで4000部売り切れました。

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かつての同級生は、歌舞伎の世界で光り輝いていた。

―長く愛されている女性ファッション誌として安定に落ち着くのではなく、新しいことにチャレンジし続ける。そんな小林さんが憧れるのはどういう方なのでしょうか?

小林さん:歌舞伎のイヤホンガイドや歌舞伎好きが集まるイベントなどを行う、歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さんです。おくだくんとは同じ愛知県出身で小学校の同級生でしたが、彼が私立中学校に進学したため、会う機会はなくなりました。再会したのは7、8年前のこと。会社の新入社員研修の一環で歌舞伎鑑賞があったのですが、その資料で講師として彼の名前を目にしたことがきっかけです。

―同級生のおくださんは、小林さんの目にどういう風に映りましたか?

小林さん:おくだくんの主催する歌舞伎のイベントに何度か足を運びましたが、そこで見る彼は光り輝いていましたよ。歌舞伎鑑賞前に劇場の食堂を借りて、演目に隠されたエピソードや隈取りの解説などをガイドしてくれるんです。しかも、動き付きで(笑)。

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歌舞伎の動作など細部に至るところまで解説をするおくだ氏

理想はアイドルファンのつながり。『non-no』のコミュニティを作りたい。

―小林さんは、おくださんのどういうところに憧れたのですか?

小林さん:歌舞伎をきっかけに自分自身で道を切り開き、世界を広げているところです。今でこそおくだくんには歌舞伎役者の知り合いもいて、海外に呼ばれることもあるくらいですが、最初から伝(ツテ)があったわけではありません。スタートは歌舞伎公演のイヤホンガイドのアルバイトでした。

―イヤホンガイドのアルバイトから、今のお仕事につながる経緯が気になります。

小林さん:イヤホンガイドの貸出カウンターの受付や従業員のお弁当の手配が主な仕事だったそうですが、当時はまったく役に立たなかったと言っていました(笑)。そこで彼が考えたのが、“自分に何ができるか”ということ。
考えた末に、自分が話す側に回れないかという結論に達し、ガイドの原稿を何度も会社に提出してきっかけをつかんだと話してくれました。

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―まずはイヤホンガイドのチャンスを掴み、そこから世界を広げられたということですね。

小林さん:目白、銀座、名古屋等で開催される『おくだ会』と呼ばれる歌舞伎のイベントがあります。当初の目的は、おくだくんが人前でうまく話せるようになるためでしたが、継続して行ううちに自然と歌舞伎好きな人たちのコミュニティが生まれる場ができたそうです。

自分が作った場を通じて、歌舞伎好きの人同士が出会い、新たなきっかけが生まれる。そのことをおくだくんは、とても幸せだと言っていて、私もいいなと思いました。

―おくださんとの再会は、小林さんにどのような影響を与えたのでしょうか?

小林さん:おくだくんの活動を、雑誌作りにも生かせるのではないかと思いました。私が考えているのは、『non-no』のファンやコミュニティを作ること。『non-no』でしか実現できない表紙モデルの組み合わせやデジタルの活用もその一つです。理想は、アイドルのファンのように『non-no』のファン同士がつながり、友だちになってくれることですね。

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プロセスを楽しむコツは、“何かをちょっと変える”こと。

小林さん:会社員の私から見ると、好きなことを突き詰めて仕事にしているおくだくんはすごいと思うし、うらやましいです。彼からすると、「隣の芝は青く見えるだけだよ」とのことですが(笑)。

―他にやりたいことがあったということですか?

小林さん:私は入社してからずっと女性誌を作っていますが、この会社を志望したのは野球選手に1週間密着するような硬派なインタビュー記事を作りたかったから。『月刊プレイボーイ』(現在は廃刊)を志望していたのに、配属されたのは女性誌の『MORE』でした。
自分ではあまり覚えていませんが、配属されてからしばらくは、「辞めたい」とよく口にしていたそうです。

―働き続けるなかで小林さんに生じた気持ちの変化が気になります。

小林さん:結局は、配属された場所でいかに自分で面白さを見出せるかではないでしょうか。僕の場合は撮影でした。撮影に立ち会うとカメラマンさんのライトの当て方や使うレンズの種類、絞りによって写真も変わります。当時は料理をテーマにした撮影が多かったので、朝食っぽくするか、夕暮れの中で食べる食事っぽくするかなど、ライトの当て方ひとつで印象が変えられることが面白いと感じました。
自分のイメージをカメラマンと相談しながら実現させていくのに夢中になりましたね。

―小林さんのように、仕事のプロセスを楽しむコツはありますか?

小林さん:同じ仕事でも、何かをちょっと変えるだけで、そこから楽しみが広がる可能性もあります。いきなり大きくは変えられないので、 “ちょっと変える”ことがポイントです。私の場合は撮影のアレンジでしたが、仕事の効率化でもいい。自分が楽しい、居心地がいいと感じられることを小さいところからやっていくしかないのかなと思います。

―おくださんについて、「うらやましい」と言っていましたが、最後に小林さんご自身の強みについて、聞かせてください。

小林さん:私は興味のあることにはなんでも挑戦するけど、長続きはしないタイプ。一つのことをとことん突き詰めるところまでできないのは、弱点だと感じています。一方で、飽きっぽいからこそ、誌面でどんどん新しい企画にチャレンジできるという強みもある。

毎月違うことができる雑紙の仕事には、性格的にマッチしているのかもしれませんね。隣の芝を見たことで、改めて自分の仕事や強みも見えてくるもかもしれません。

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―ありがとうございました。今後も、小林さんがつくる雑誌を楽しみにしています。

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