ちがう世代からの見られ方を知る。
それって案外、同じ世代と話しているときよりも自分の強さとか弱さに気づかせてくれるものなのかもしれません。
「最近の若い奴らは・・」の言葉のもとに、大人たちがきみたちへ贈るエール、ぜひご覧ください。

「急いで賢くなるのはもったいない」ー元バンダイ・株式会社ウサギ代表 高橋晋平さん

高橋晋平さんは、東北大学の機械知能系領域で最先端のロボット技術を、同大学院で情報科学を学んだ後、株式会社バンダイに入社。大ヒット商品となった玩具「∞プチプチ」などバラエティ玩具の企画開発・マーケティングに約10年携わった方です。
2013年のTEDxTokyoに登壇したプレゼンテーションがTEDによりTED Talkに選出され、現在は株式会社ウサギの代表として、企業の企画ブレーンやおもちゃの開発、執筆活動と広範囲で活躍されています。

そんなスゴイ経歴からは想像出来ないほど、ユーモア溢れる人柄と優しい笑顔が非常に印象的でした。そんな高橋晋平さんは「最近の若者」をどう見ているのでしょう。

大手おもちゃメーカーを飛び出し、自身のアイデアのみで勝負するおもちゃ開発者。時には「すぐ検索」じゃない行動も大切だと話す。

高橋さん:僕はいくつかの大学で講師の仕事もしていて、大学生と話す機会がたくさんあるんですが、本当にみなさん知識量がすごい。とんでもなく物知り。

あとは、在学中からベンチャー企業を手伝っていたり、会いたい人に積極的に連絡を取って会いに行っているとか、自分が学生の頃とか比べ物にならないほど行動力があるし、素直にすごいなあと思って見ています。SNSを使って集客してイベントをやってしまう人もいますもんね。しかもそれが数百人規模だったり。

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知識量と行動量は僕が若い頃に比べたら桁違いに多いけど……

—すごいけど、何か違和感を感じられていると?

高橋さん:インターネットのおかげで情報が取りやすくなったり、人とつながりやすくなって、「間違わなくてすむ時代」になったんだなあと思います。検索したら答えに近いものが出てきますからね。

失敗なんて嫌ですからしなくていいんですが、僕は「うまくいかなかった」という経験をたくさん持っている人の方が、長い人生で見たら強いと思うんです。

—高橋さんのうまくいかなかったご経験にはどんなものが?

高橋さん:理系科目が好きで、成績も悪くなかったし、まあロボットとかかっこいいし工学部にでも進もうかと東北大学に進学したんです。
ところが大学に入ったら明らかに周りの人たちの方が頭がいいわけです。もう勉強なんて嫌になりましたね。そして勉強をやめて、その後に残ったのは、無口で、暗くて、女の子としゃべれない自分でした。絶望的ですよね。

だから「変わりたい!」と強烈に思ってお笑いサークルに入ったんです。でもそこで待っていたのは、舞台に上がってもまったくウケない日々でした。「笑い」という正解のない問題の答えを探してスベり続けたわけです。

それでも3年目にもなるとクスクスとだんだんウケるようになってくるんです。その時、人を笑わせるのってこんなに嬉しいことなんだということを体の底から実感しました。
ウケない時間がその実感を倍増させてくれたんでしょう。あの時もがきもせず「なんとなくウケて、なんとなく面白く」なってしまっていたら、今の僕はいないなと思っています。

高橋さんがこれまで出したビジネス書籍はどれも大ヒットだ

—社会人になってからもうまくいかないことは続くんですか?

高橋さん:ギャググッズのヒット作をつくると意気込んでバンダイに就職しましたが、最初の1年間は何一つ企画が通りませんでしたね。ボツ案は1000案以上。

ところがそんな時にアメリカから「20Q」というおもちゃが入ってきて。キャンペーンで店頭販売に行った時にとてつもない衝撃を受けたんです。2000円もするおもちゃがバンバン目の前で売れていく。信じられませんでした。
自分が企画するおもちゃは売れるどころか商品化すらされないのに……。くやしかった。

今思えば恥ずかしい話ですが、当時僕はマーケティングなんて一切知りませんでしたし、ターゲットを決めて開発をするなんて言う頭は持ち合わせていませんでした。「売れるとはどういうことか」を理解していなかったんです。
でもそのおかげで、売れない地獄をちゃんと経験できていたから、売るために企画するということがどういうことなのかをその後体の底から理解できたと思っています。

高橋さんが手掛けた最新のカードバトルゲーム「民芸スタジアム」

人間はうまくなったら下手には戻れない

—でも最終的にはうまくできるようなった方がいいですよね?

高橋さん:人間どうしてもうまくなっちゃうんです、歳をとると。でも忘れないでほしいのは、うまくできるようになると下手な自分にはもう二度と戻れないということです。

けん玉って一回できるようになると、もう二度とできない頃の自分には戻れませんよね。それと一緒です。

何が言いたいかというと、賢くなってしまうと、いい失敗のチャンスがどんどんなくなるということなんです。知識を増やすことも大事。正解に最短距離で近づくことも悪いことではありませんが、その過程で失っているものもあるよ、という話です。

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—効率化とか言われる時代ですが、逆にいうと大人は効率的にしかできないのかもしれませんね……。

高橋さん:だから、自分の経験から一つの提案として、未熟な時代にだけ持つ能力を活かすために、まず「すぐに検索する」というのを一度やめてみるというのはどうだろうと思うんです。

効率的に生きることが当たり前になっているの時代ですごく難しいことなのかもしれませんが、答えにあえて近づかないで、まずは自分が本当に思うことをアウトプットしてみて!と。
いまみなさんが生きている時間は、没アイデアをとにかく出すだけ出せる貴重な時間ですからね。

未熟な時代は貴重な時間。急いで賢くならないで

—その経験から見つかることがあると?

高橋さん:僕が幸運だったのは、コンプレックスの奥にある自分が本当にやりたいことに出会えたことです。お笑いサークルで見つけた「人を笑わせたい」という純粋な気持ちに出会えたことです。
それは未熟な時代に、正しくもがけたからなんじゃないかなと思っています。バンダイで全然アイデアが採用されなかったこともしかり。

もし20代に戻れるなら何したいですか?と聞かれたら、間違いなく、今では出せないくだらないアイデアを1000個考えたいですとこたえますよ(笑)。

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