ちがう世代からの見られ方を知る。
それって案外、同じ世代と話しているときよりも自分の強さとか弱さに気づかせてくれるものなのかもしれません。
「最近の若い奴らは・・」の言葉のもとに、大人たちがきみたちへ贈るエール、ぜひご覧ください。

狂った社会に遊びに行こう ー元ホスト・経営者 手塚マキさん

手塚マキさんは、新宿でホストクラブ5軒、バー5軒の他、ヘアサロンやネイルサロンなども展開するSmappa!Groupの会長。2017年には”LOVE”をテーマにした本だけを扱う本屋「歌舞伎町ブックセンター」を立ち上げるなど、その活動の舞台は広がり続けています。「ホストクラブの会長?」と聞いて想像していた印象とは大きく異なるインテリジェンス。

さらに、会話の中で時折見せるチャーミングかつ色気ある笑顔。建前や体裁ばかりを気にする大人とは一線を画す本質をついた言葉の数々には、私たち編集部員も思わずドキリとさせられました。今回は、そんな社会や人間の本質と日々向き合い続ける手塚マキさんに「最近の若者は…」を話の入口に様々な話を語ってもらいました。

30代の若きホストグループ会長は「就職のための勉強より、人生を楽しむための勉強を」と語る。

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手塚さん:「最近の若者は……」というテーマを聞いて最初に思ったのは、今の若い人たちのほうが強制されることが少ないのかな、と。

僕らの世代の場合、「社会に出るということは、こうあるべきだ」という教育を受けてきたし、そこに疑問を持たずに社会に出るための準備をせっせとしていたと思います。

僕らよりもっと上の世代はもっとそうで、反体制を唱えて学生運動していた方々も卒業が近づくと学生服に着替えて就職活動をはじめるみたいな。そのくらい社会に出る=会社に就職するという選択肢しかなかったんだと思います。

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自分を既存のパターンに当てはめないでほしい

—それが、今は違うと?

手塚さん:大学を出て就職しなくても生きていける選択肢はいろいろありますよね。昔と比べて手に入る情報も圧倒的に多いから。
だけど、その情報量のせいで、新しいことに挑戦する前から、「それをやったらこうなりますよね」とか先が見えた気になってしまっているのはもったいない。

自分自身の性格や生き方に関しても、「自分は何系なんで」と複数のパターンの中から近しいものを選んでいる気がします。もちろん、僕らの世代に比べれば格段に細分化されているけど、すでに用意された自己表現に自分を近づけていくと、じつはどんどん自分が薄まっていく。自分っぽくはなるけど、自分ではないという感じですかね。

結局、外から選ぶのではなく、自分自身と深く向き合わなければ、「自分」というオリジナルを作り上げることは難しいと思います。

—「自分」とか「オリジナルであること」って、そんなに大切なことですか?

手塚さん:大切というより、今まで僕たち日本人は知らなかったんじゃないですか。人間は日本人という男性とそれを支える女性の2種類しかいないと思っていたんだと思います。

自分とは異なるいろいろな人がいることに気づいていなかった。だから、最近のセクハラ問題でも、「昔はこんなの平気だった」とか当然の顔で話しちゃうおじさんがいるんですよ。人は一人ひとり違うということにまだ気付いていない。若い人たちのほうが敏感ですよ、その辺りは。

そういう意味ではようやく、自分の自己肯定感を自分で手に入れられる時代になってきたとも言えます。だからこそ、自分を中途半端なパターンに当てはめるのではなく、自分自身が納得する人生を生きることが大切なんじゃないですかね。

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これからの人間は余暇をどう楽しむか

—たしかに。最近は、お金を稼ぐためだけではない働き方をする若者も増えていますよね?

手塚さん:そうですよ。もう社会自体が変わってきているんですよ。成熟社会というのは、企業戦士が幅を利かせるような時代じゃないですから。きっと、近い将来は労働の多くもロボットが代替する時代になると思います。

すると、人間は“スコラ”、つまり余暇をどう楽しむかということが大きなテーマになる。働くより、大変ですよ(笑)。でも、そうであれば、なおさら学生時代は、余暇を充実させる教養を身につけたほうがいい。

自分が面白いと思う本や映画を一冊でも一本でも多く見たほうがいいのにと思います。就職に関しても、どの企業、どの職種につけば安定した生活が送れるかと考えるより、自分の大切な1分1秒をいかに楽しく過ごせるかという視点で動いたほうがいい。

そのくらい、これから先の社会は大きく変わります。しかも、今の社会なんてどう見ても狂ってるじゃないですか。この狂った社会で生きる能力を身につけたとしても、数年後、多少まともな社会になった時には役に立たなくなっているはずです。狂っているんで(笑)。

正直、大学を卒業したら、「狂った社会に遊びに行く」くらいの感覚でいいと思いますよ。

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—「狂った社会」って強烈な表現ですね。でも、最近のニュースを見ていると、そう思いたくなりますよね。とくに、大人たちの無責任さ、醜さ、弱さ……。

手塚さん:大人たちのほうが、社会の変化、価値観の変化についていけてないんじゃないですか。自分を確立できていないし、会社の肩書き以外で人と繋がることができる教養を持ち合わせていないから、生きることが苦しくなっている。

先ほど、余暇を充実させるためにも教養を学んだほうがいいと話しましたが、教養には人と繋がる力もあるんです。

僕自身の20代を振り返ると、比較的時間もあったので、美術館に行ったり、音楽を聴いたり、本や映画を観たり、余暇を楽しみまくっていました。
すると、歌舞伎町以外の社会に出たときに仕事とはまったく異なる縁で様々な領域で頑張っている人たちと出会えましたし、話が盛り上がりました。

今は短歌やバイオリンを習いはじめたところなんですが、何百年以上も昔から人々を夢中にさせているものですからね。やっぱり面白いんですよ。忍耐力も鍛えられますし(笑)。

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大学生が「会いたい」って言えば、会ってくれる

—でも、普通の大学生には短歌やバイオリンを習う余裕は……(笑)

手塚さん:大学には立派な図書館もあるし、何より、自分で本を出しているような教授たちがいるじゃないですか。その人たちに直接質問できるなんて贅沢すぎるし、大学生が「会いたい」って連絡したら、たいがいの人が会ってくれますよ。若手の力を企業は欲しがりますので。

学生時代から、大学生という立場を使って、この狂った社会で思い切り遊んだほうがいい。就職のための勉強をしに行ってはダメですよ(笑)。これから何十年を楽しく生きるための大切な今日を全力で遊んでください。

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