【学生団体 Bizjapan】『宇宙』と『医学』(後編)


2回に渡ってお届けする、宇宙医学シリーズ。
前回は、「宇宙医学とは?」という基本的で重要な問いに始まり、その研究の具体例をお伝えしました。第2回となる今回は、一見遠いように思える宇宙医学の身近な側面、そして、その魅力と将来について、たっぷりとお伝えします!

こんなところにも宇宙医学?

前回の記事の具体例まで読んできて、「いや別に自分は宇宙なんて行かないし、関係ないよ」そうお思いの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。しかし、それは大きな誤解です。重力に逆らう必要のない宇宙空間での筋肉量や骨量の低下は地上での老化現象によく似ているので、それをいかに防ぐかという宇宙医学研究は、究極のアンチエイジングと呼ばれます。ISSという限られた環境下で実験や測定をするために、コンパクトで扱いやすい機器が次々と開発され救急医療への応用が期待されています。飛行士のチームに医師がいるとは限らない中で必要になる遠隔医療技術は、今後地上でも不可欠なものです。宇宙という過酷な環境が人間に及ぼす影響は、地球上での極限環境の医学に応用でき、また宇宙という厳しい制約の中で培われた技術は、どこであっても使えるものとなるのです。

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まだまだ未開拓なブルーオーシャン! ~宇宙医学の魅力~

さらに根本的に言えば、宇宙医学は「人間にとって重力とは一体何なのか」という大きな問に立ち向かう学問でもあります。「重力なんて、別に人間にとって当たり前じゃないでしょ?」という宇宙医学は、「ケータイにボタンが必要なんて、誰が決めた?」といってiPhoneを作ったスティーブ・ジョブズのような、革新的な存在なのです。
そのような革新的領域であるが故に、宇宙医学は分からないことだらけです。「宇宙医学という決まった学問が体系だってあるのではなく、医学の個々の専門性をもった人がそれを宇宙に持って行ってどうなるかを調べているのが、今の段階です」と、日本大学の岩崎教授は言います。それはつまり宇宙医学が、あらゆるバックグラウンドを持つ人が参入でき、そこでオープンなイノベーションの起こるブルーオーシャンだということです。

「宇宙に生きる」若手合宿

そんな宇宙医学の可能性とワクワクを象徴するのが、「若手合宿」です。全国の研究班から若手研究者が集まり、研究報告と議論を行います。松本大学で8月に開かれた今回も、医学のあらゆる分野から集まった研究者の皆さんの、領域の境目を超えた議論は、とても刺激的でした。例えば微小重力の及ぼす影響を細胞レベルで見る班と、微小重力下での植物の生育を調べる班は共に「重力のセンサーを分子レベルで解き明かしていきたい」という核心に迫る課題を持っていましたし、閉鎖環境のストレスを調べる精神医学班には運動器の班から「運動が持つストレス解消効果は宇宙ではどうだろうか」という提案がなされました。

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今回の合宿を主催した松本大学の河野准教授は、分野横断的研究の重要性を次のように語って下さいました。「医学が生理学、生物学等他分野とコラボするのは、今では最早スタンダードです。現に私も医師ではありませんが、運動生理学の専門家として筋萎縮のメカニズムを調べる基礎医学研究に携わっています」「医学からもっともっと離れた分野との連携については、これからどんどん進んでいくところです。例えば物理学とコラボすれば、重力という要素に対するまた違った解釈が加わって、とても面白いと思います。そういう意外な組み合わせが生まれるのも、宇宙医学ならではですね」

研究だけじゃない? 宇宙医学のこれから

これまで見てきた宇宙医学は、「宇宙飛行士の飛行中の健康を保つ」「宇宙という空間の特殊性を活かした実験の結果を、地球の医学に反映する」というものでした。が、「医学」と「宇宙」の関わり方は、本当にそれだけでしょうか?
もう少し先の未来、宇宙旅行が当たり前になった時代には、家族連れやご老人も宇宙を楽しむ日が来るでしょう。そうなった時、宇宙でケガをしたりちょっと体調を崩したりしても、地球から医師を呼ぶことはできません。つまり、「宇宙空間での医療行為」が必要になるのです。それがどんな形になるのかは、完全に未知数です。何を遠隔で行って、宇宙には何人の医師がいて、ロボットとはどのように役割分担するのか。宇宙ステーションならぬ宇宙病院ができるのか。微小重力下で、どのようにして手術をするのか。どこの国でもない空間で、どういう法に従って治療するのか。どのような形にせよ、今までに無かった全く新しい医療が登場することになるのは間違いありません。今からワクワクしますね!

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以上、駆け足ではありましたが、2回に渡り、宇宙医学って何? という話から、その今後まで考えてみました。如何でしたか? 文理や専門を問わず、少しでも多くの方が「宇宙医学、面白いじゃん」と思ってくださればと思います!

Bizjapan第8弾の記事はコチラ!

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