深澤雄太 東京大学3年(株式会社Appbrew 代表取締役)

自社コスメアプリ「LIPS」がApp Store総合無料ランキング1位獲得、1億円弱の資金調達の発表など最近巷で注目のベンチャー企業Appbrew。その創設者であり代表取締役こそが彼、深澤雄太である。大学1年生で休学して※東大無料塾を立ち上げ、また休学してフルタイムで半年インターンしたあと、フリーランサーとして活動し、会社を設立して今に至っている。

彼がどんな人か。言うなら現代の「革命家」なのかもしれない。あらゆる面で非効率な既存の体制を嫌い、常識にとらわれず、国家ですら抗えようのないムーブメントを起こそうと闘っている。一方でその考えは理想を押し付けるエゴではなく、現実世界に沿う形で常に変わり続けている。この考えの根底にはどういうバックグラウンドがあるのだろうか。MFC学生スタッフであり、彼の高校の同級生でもあるあおのが、取材をしに行った。

※ 東大無料塾とは、「先輩から後輩へと知を継承する。」というコンセプトのもと、現役東大生を講師として招き、中高生を対象に完全無料の学習指導を行なった学習塾である。普通の受験対策にとどまらず、個別相談や個別指導など幅広い教育を提供していた。2013年10月に開講したが、半年ほどで閉鎖した。

(インタビュー記事は全て取材時、2017年11月時点のものです。)

コスメアプリ開発、アプリランキング1位を獲得するまで。

2017年10月21日付けAppStore総合無料ランキングより

この前のアプリランキングのニュース見たよ。おめでとう。

あざっす。

設立した当初からこのアプリを作っていたの?

いや、最初は企業向けにチャットボット周りのソリューションを提供していたんだけど、既得権益が多くて厳しいなと。それでアプリ開発に移行して、その中でも市場のニーズが高い領域として今の事業を選んだ。

男だとコスメは興味ない人が多いけど、よくやろうと思ったね。

考えようによっては、コスメはエンジニアで男がやりたがらない領域なので優位性があるじゃないっすか。大手の美容関連の企業もエンジニアの採用は苦労しているとも聞くので。

今後はどうするの?大学は?

大学はおそらく中退するかな。今までも休学とか留年とかしてたけど。

中退しちゃうんだ。せっかく入れたのに。

入った時は学割とか使えるのあったから休学して残ってたけど、そのあとはもう惰性で。

大学が合わなかった?

高校時代に大学受験以外の選択肢はなかったし、受かったから行ったけど、学校というものは中学の時から向いていないと思っていて。大学もやっぱり授業は面白くなかったし、合わなかった。

理想を追い求め、現実の高い壁を知った1回目の学生起業。

最近は女性向けのアプリをDL/チェックしてそれぞれ比較しているとのこと。

自分が学校に合わないことが東大無料塾へとつながったの?

学校嫌いだったからこそそのカウンターとして教育を自分で作る意義があるなと思っていた。当時教育×Techが流行っていたタイミングで、NPO設立の話を持ちかけられて、Techも活かしながら面白いことができそうだ、と始めた感じかな。

政府側からではなく、NPO側から変えようとしたのか。

一回固定化した組織って変わりにくいという考えがあって、特に日本は文化的にもその傾向が強い。そしたら変えるために時間がかかる。それなら抗えようのない、体制側が適応せざるを得ない波を外から起こす方がいいじゃん。

でも結局うまくはいかなかった。

学習塾の補習っていう部分のニーズはあったんだけど、こっちが提供したいものとは違うし、将来的にスケールさせるビジョンが見えなかった。それならしんどいだけだしやめようって。

解散した後はどうしたの?

モノを作れる技術が欲しくて、東大無料塾のときに利用していた会計ソフトを出していたスタートアップに行って、フルタイムで半年間インターンしていた。

それはやっぱ教育関係の理想を追い求めて?

当時はそうかな。インターンを終えるまでは教育周りでまた新たなプロダクトを作りたいという思いがあったんだけど、この業界は、収益を作るのが難しいこと、既得権益が強い一方で自分には教育に強いバックグラウンドがないことに気づいて、違うことをやろうと思い始めたかな。

理想を見直し、エゴを捨てる決断。

意外。中高のコンプレックスから生まれた教育への考えをあっさりと捨てることに迷いはなかった?

結局シンプルにニーズがないと、大きな波は起きないという大前提がある。てなった時に、教育というジャンルやその理想へのこだわりは、結局自分のエゴなんすよ。同時に自分の中では、社会にインパクトを与えるということが第一目的へと変わっていったというのがあるね。

うん。

多くの人のニーズを捉えられるやり方をしないと収益性・持続性が足りなくて、結局インパクトを与えられないと気づいた。それなら、教育にこだわるよりはニーズを優先した方がいいと思って。

なるほどな。

他の話にも当てはまるけど、うまくいってない時はこうした「好きなことをやりたい」のこだわりが強くなっていた。自分が思う社会の理想像に縛られていたというか。

それって何?

自分の場合は効率的で、真に分散的な社会を作りたいという理想像を大学にいた頃から思い描いていた。今問題になっているようなひどい非対称性を是正・解消するためのテクノロジーを利用した効率的な社会かな。そもそも国家とか法人とかいう体制のせいでそれぞれ法律なり制度なりが異なるのはひどく非効率で、ない方がいいし。

ぶっちゃけるね。笑

ただ、今の現状からすぐにそこに至るなんて無理な話で、自分のエゴでモノ作っても何も起こらない。だからやることへのこだわりは減って、世の中の流れに沿って物事をしようという考えになった。その代わりにやりたくないものだけは絶対にやらない。

人の視線は気にせず、自分の道を突き進むだけ

取材中だろうが疑問が起きたらすぐに議論が始まります。この時私は完全放置です。

それで最初に言ってたように、会社を作ってからも開発するものをチャットボットからコスメアプリ開発へとどんどん移っていって今の会社に至っているのね。今後会社はどうする?

会社はこれから数年で上場を目安に考えて動いている。それに向けて新たな資金調達にも動き出している。あと個人的にはイケてるプロダクトを作りたい。製品やシステムが、波を起こす唯一の手段で、多くの人に使われることでレバレッジを効かせられるので、どんどんいい製品を作りたいっす。

会社売ったりとかはあまり考えていない感じ?

個人的には独立性を保ちたいけど、会社的には事業が一番伸びる選択肢を取りたい。ただM&A目的の会社運営のやり方は鞘取りみたいで本質的じゃない。

MFCでも起業家に取材しにしたり、ビジコンみたいなのをやってたりするんだけど、こうした人向けの求人はしてるの?

優秀な人はいつでも募集中(特にエンジニア)。ただ、このサイト見たときに地に足がついていないのが多いなって思った。

あれ、起業家ならみんなウェルカムという感じじゃないんだ。


起業仲間で好きなやつはもちろんいるよ。ただ例えばビジコンでアイデア議論して満足してるようなやつは好きじゃない。本質的じゃないし結局アイデア考えるだけじゃ何も起こらないよね。明確に何か世の中に出している人、プロダクト見せてくれる人がいいっす。

証拠や実物があるやつが好きってこと?

というよりはマインドかな。理念がどうとかばかりの議論で止まってなくて、現実的なプロダクトやhow toの部分までたどり着いている層と個人的には喋りたい。

ビジコンに取り組んでいるMFCのページでのこの発言、だいぶ過激だな。笑

周りにどう思われても気にならないよ。自分は常に物事の本質を追求したいと思っている。だから世間と自分が違っていても、正しい方向に進めれば新たな時代を切り拓けると思っている。だから周りに認められるために何か頑張るというのもないよね。

大学入る前に知り合って本当に良かったと思ったわ。笑 会社も深澤自身も引き続き頑張って!

取材後記

取材の最後にあるように、彼は世間に認められるために頑張るということはない。第三者の目線を塵ほども気にせず、どこまでも自分道を貫く。

高校の時から授業態度は優等生とは程遠いタイプで、大学では迷いなく休学や留年をするし、久方ぶりに大学の授業であったと思えば髭を蓄えて学生らしからぬ風貌に様変わりしている。彼のこうした言動は、第三者には「変なやつ」に誤解される要因になりうるが、彼にとってそれは雑音でしかないのだろう。だからこそ既存の非効率や無駄に全力で抵抗し、その枠組みごと変えようとする姿勢、失敗を恐れずチャレンジし続け、徹底的に議論を重ねる無尽蔵なエネルギーが生まれるのだ。

今の大学生の周りには、無数の周囲の目線が張り巡らせられている。浮いた行動一つ取れば叩かれ、SNSでも当たり障りのないようにしけなければネット炎上の危険を常に孕んでいる。またこの周囲の目線は、SNS投稿の「いいね数」により数値化されるため、「いいね」を獲得しようと色々試行錯誤をする。

このように「空気を読み続ける」生活とは真反対の彼の生き方を一概に賞賛すべきかはさておき、一つのロールモデルになるのではないだろうか。少なくとも最近何かと無気力になりがちな筆者には刺さるものが多くあったインタビューだった。

ちなみに彼の会社で週4 × 8時間以上働けるエンジニアを募集しているらしい。大学休学などある程度のリスク覚悟で、興味がある人は是非一度コンタクトしてみてはいかがだろうか。


(取材/執筆:青野将大)
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフの東京大学4年生。インターンとカカオ豆の卒論に追われる日々を過ごしている。取材した深澤さんとは高校の同期。彼は休学1年、留年1年(現在休学2年目)、筆者は1浪である。

PAGE TOP