「とある女性の転換期」~つよく、やさしく、私らしく。女性公認会計士たちの選択vol.1~


こんにちは!学生スタッフのかなえです。
突然ですがみなさん「公認会計士」という仕事を知っていますか?多くの学生が「名前は聞いたことあるけど……。」と答えるのではないでしょうか?
果たして「公認会計士」とは一体どんな仕事をするのでしょうか?その仕事の魅力や働き方は……?女性公認会計士として様々なフィールドで活躍する平林さんにお話を伺ってきました!

登場人物

nakamura中小ベンチャー企業をサポートする士業ネットワーク・アールパートナーズ代表。お茶の水女子大学文教育学部地理学科卒業。在学中は、地図を見ていると夢中になって夜を明かしてしまうという地理学科の個性的な仲間と学生時代を過ごしていた。地理は高校で一番苦手な学科であった。

kanaeMFC学生スタッフ。早稲田大学文学部美術史コース5年生。趣味は美術館・寺巡り・仏像。3年生の時1年休学してフランス留学をした。友人が公認会計士の資格獲得に向けて猛勉強中。

数字を追うだけではない決算書の裏側まで辿る、公認会計士の仕事の魅力とは?

kanae

本日はよろしくお願いします!最初にズバリ聞きます。公認会計士って何をするお仕事なのでしょうか?

nakamura

公認会計士とは、一言で表すと「会計の専門家」です。公認会計士というのは資格の名称で、実際に公認会計士が行なっている仕事は様々です。

kanae

そうなんですか!?知らなかったです……。具体的にどんなお仕事をするのでしょうか?

nakamura

まず、上場企業の財務諸表をチェックする監査。これは公認会計士にしかできない独占業務です。それ以外にも経理業務や税務業務、そして経営コンサルティングなどを行っている公認会計士もいます。

kanae

お金のプロとして経営コンサルティングも行うんですね。主な業務である監査のお仕事について詳しく教えてください。

nakamura

会社の売り上げや利益の額、預金などの所持状態が記載してある決算書の真偽をチェックします。要するに、決算書の数字が真実であるかを確かめるわけですが、紙と向き合うだけではなくて、実際に銀行に対して文書を送付するなど、決算書の内容通りに預金があるのかを確かめたりしますし、会社の貯金通帳や金庫を見たりもします。

kanae

結構深く調べるんですね。けれど数字とずっと向き合うのって大変じゃないですか?文系学生の私からは想像がつかないです……。

nakamura

自分の就職先ではない会社にズケズケと入り込んで、その会社のお財布を見せてもらうなんて、なかなかできる経験ではないので、面白いですよ。それに監査の仕事は数字の羅列をただ見ているだけではなく、その裏にある取引に深く切り込んでいくのものでもあるんです。

kanae

どういうことでしょうか?

nakamura

決算書などの数字の裏には、必ず「何かをした」という事実があります。公認会計士が見ているのは単なる数字ではなくて、その会社が行ってきた物事や事実なんです。新しく工場を作ったり、海外進出をしたりした時のお金の動きや、広告起用された芸能人との契約金の大きさを垣間見ることもできます。会社が借りたり買ったりした不動産の本当の価格を契約書から知ることもできるので、世の中で噂されている不動産の価格が正しい金額かどうか分かってしまったりするんですよ。公認会計士のお仕事を通して、お金という切り口で社会を見ることができるのは、本当に面白いですね。

kanae

そういった視点で社会を知れると何だか得しそうですね!

nakamura

実はそうでもないのです。例えば化粧品を扱う会社を担当すると、化粧品が買えなくなるという話もよくあります。仕入れの額や売り値、利益などが決算書を通してしっかりと把握できてしまい、商品の本当の価格が分かってしまうからです(笑)もちろん、それも含めて面白い仕事です。

公認会計士、資格試験の難易度は?


kanae

そもそも平林さんが公認会計士の資格を取得したきっかけは何でしょうか?

nakamura

私が大学生になった当時は、「失われた20年」と呼ばれる時代の始まりでした。入学してすぐに、大学から「就職先は無いよ」と言われ、「自分で何とかするしかない。食って行くには資格だ。女性なら尚更」と思ったのがきっかけです。大学の生協のパンフレットを端から全部持ち帰って資格について調べました。

kanae

公認会計士以外に悩んだ資格はありましたか?

nakamura

公認会計士以外には弁護士や税理士や国家公務員一種などと比較しました。「受かったら食っていける資格」というのを重視して、費用対効果が一番高かったのが公認会計士だったので選びました。また、国立大学ということと、地理学科というあまり忙しくない学科に在籍していたこともあり、受験のためのダブルスクールが金銭的にも時間的にも可能だったのは資格取得を力強く後押ししてくれましたね。

kanae

公認会計士の勉強ってすごく大変と耳にしますが、実際はどうでしょうか?

nakamura

大変でした。でも、同時に、すごく面白い世界だなとも感じました。会計の勉強をしていると「商品を仕入れて販売した」や「給料を支払った」という問題を解いていくことになるのですが、社会を垣間見ている気がして、社会を知らない学生だったからこそ楽しめたのだと感じます。公認会計士の勉強はそれなりに大変ですから、合格するまで勉強を続けられる人は、私と同様、そういった会計の世界を楽しい・面白いと感じた人が多いのだと思いますよ。

kanae

公認会計士の試験に合格した時、監査法人に就職した時はどんな気持ちでしたか?

nakamura

「生きていくために」「食っていくために」と思いながら勉強をしていたので、合格した時は全身の力が抜けるくらい安堵しました。しかしいざ就職をしてみるとたくさんの人と会わなければならなかったり、出張がとても多かったり、とても大変で、辛かったですね。監査の仕事は楽しかったのですが。

kanae

公認会計士のお仕事にも出張があるんですね。

nakamura

大企業は全国、あるいは全世界でビジネスを展開していて、支社や支店があります。そういう企業の監査を担当すると、担当した公認会計士が全て回ることになります。そのため、年間の半分くらい出張しなければならないこともあり、監査法人を辞める直前は、精神的にまいっていて、仕事帰りは毎日泣いていました。私は周囲に思いっきり甘えて、やりたくないことは「やりたくないもん」と自分のわがままを通すなどして何とか過ごしていましたが、若い女性でなければ、こんなわがままは許されなかったでしょうね(笑)

仕事と人生は別のものではない、自分の価値観を大切に育む。


kanae

平林さんにとって、仕事の転機はありましたか?

nakamura

今になって振り返れば、監査法人を辞めたときと、その後、結婚が決まった時ですね。先にも言った辛い環境もあり、「サラリーマンを続けていくのは無理」だと思い、監査法人を辞めたのですが、その直後、タイミング良く結婚もきまりました。結婚後は、仕事を辞めて家庭に入ろうと思っていたのですが、誰からも「仕事は続けるの?」と聞いてもらえず、辞めるチャンスを逸してしまいました。主人が学生だったこともあって、とりあえず事務所を立ち上げました。

kanae

なぜ結婚しても、なお働こうと思ったのですか?

nakamura

思ってないですよ。辞めそびれただけです(笑)ただ、続けていて良かったと今は思います。人生なんて、いつ何が起こるか分かりません。そんな時、仕事は大きな支えになると感じています。たとえば、私には子供がいないのですが、まさか自分がそうなるとは思ってもいませんでした。仕事がなかったら、子供のことばかり考えてしまったでしょうから。その状況で仕事をやめて家庭に入ったら、グウタラしてしまって、私は間違いなくダメ人間になってしまいます(笑)。資格と仕事がなかったら、テレビとネットばかり見て、人の悪口ばかり言う性格の悪い人になっていたかもしれません。

kanae

平林さんにとって、女性として働くとはどういうことでしょうか?

nakamura

女性の人生というと、結婚や出産・家庭といった要素が頭に浮かぶかもしれませんが、それだけではなくて、親の介護や自分自身の健康も含めて考えると、誰の人生だっていつ何が起こるか分かりませんよね。だとしたら、「女性だから結婚や子育てが気になる」という狭い視野で考えるのではなく、もっとあらゆることを想定して、働き方を考えた方がいいと思うんです。「仕事と人生」は決して別個のものではなく、家庭も子育ても介護も自分の健康管理もいわばすべて仕事です。どうやったら自分が生きていけるかを真剣に考えていくことが大切なんじゃないかと思います。あとは、「女性だから」という社会的な風潮はそろそろ女性側から変えていくべきかと思っています。社会の現実はともかく、女性が自ら自分の可能性を狭めるような価値観は、見直していかなくては。

kanae

将来を考える学生の中には、そういった分かりやすい問題だけにフォーカスする人が多い気がします。そんな学生へメッセージをお願いします!

nakamura

たしかに今の社会状況では、依然として男性に有利な仕組みが多く存在していたり、介護や子育ての面で女性の負担が重くなりがちだという現実もあったります。しかしそういった環境に左右されず、女性ならではの自身の価値観を大切にして欲しいです。女性らしさを生かして働くことだってできますし、女性だからこそ力を発揮できる仕事もたくさんありますから。社会状況としっかり向き合った上で、殻に篭もらず自分の生き方と価値観を大切にしてほしいです。

取材後記

kanae

いかがでしたか?社会の仕組みをお金の切り口から見るって自分の中にはない新たな考え方でした。大変な勉強を乗り越えてこそ見える世界があり、それを乗り越えた平林さんの人生観にとても感銘を受けました。「女性だから……」と殻に閉じ篭もるのではなくて、もっと女性であることを武器に前向きに生きて行く姿に、かっこよさと憧れの感情を抱きました。記事を通して、平林さんの言葉が多くの学生さんの胸に響けば嬉しいです。

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