東京大学 下山明彦 登阪亮哉


国内外の意欲的な学生が挑戦した大学生最大規模のビジネスコンテスト「キャリア・インカレ2016」。半年に渡る戦いの中で総勢100チームの中から見事優勝に輝いたのは、大日本印刷代表の東京大学2年生チーム、edUTec(エデュテック)だった。
決勝戦ではニコニコ生放送の視聴者賞、そして審査員が選ぶ総合優勝とダブル受賞。強力なライバルチームとの戦いの中で、edUtecは何故勝てたのか⁉︎
チームのリーダーである下山くんと、チームメイトの登阪くんに話を聞いてみた!

(*インタビュー記事は全て取材時、2017年1月時点のものです。)

教育への想いをビジネスに! edUTec結成!

羽田

改めまして、キャリア・インカレ2016、優勝おめでとうございます!

下山登坂

ありがとうございます!

羽田

今日は色々聞いていきたいと思ってるんですが、まずそもそもどういう経緯でチームができたんですか? 二人は大学の友達?

下山

僕と登阪はお互い高校時代から名前は知ってました。二人ともディベートやってて。

登坂

僕は神戸の高校で、下山が広島の高校だったのでそんなに何度も会ったわけじゃないんですけど、お互い存在は知ってて。で、大学入ったらたまたま同じクラスで「おおー」みたいな。

下山

で、大学入ってからめちゃ仲良くなったんです。半同棲相手みたいな。

羽田

半同棲?

登坂

下山の下宿先が大学からめちゃくちゃ近いんです。逆に僕、大学の宿舎に入ってるんですが、遠くて……。

下山

僕の部屋、そんな特別広い部屋でもないんですけど、寝袋とかもあるのでよく誰かが泊まりに来るんですよね(笑)。ただ、登阪はその中でも特に泊まりに来る事が多かったです。

羽田

なるほどなるほど。大学から近い人の家に溜まりがちなやつですね。僕も学生時代、よく友達の家にたむろしてたなあ……。今日は参加できなかったもう一人のメンバー、彦坂くんは?

下山

彼は登阪がチームに誘ったんです。僕、今回のインカレに出る時に教育をテーマにしようと最初から決めてて。それで、登阪も教育の活動をしていたので彼を誘ったんですけど、もう一人くらい誘って3人チームにしようと。誰か教育に関心ある人いないかなと思ってたら、いいやつがいる、と登阪が言ってくれて。それで彦坂を連れて来てくれたんです。

登坂

実際、彦坂ほど教育に熱い想いを持ってる人はいないので、彼しかいないだろう、と。

羽田

なるほど。そうしてedUTecが生まれたのですね。チーム名にも“education”をもじった教育を表す言葉が入ってますけど、3人は教育でどんな活動をしてたんですか?

教育に関する熱い思い! edUTec誕生の秘密。

edUTecリーダーの下山君。広島の高校から上京し、東京大学へ。現在は休学中。

下山

僕は大学2年生の時に休学して2016年の4月から11月まで、『トビタテ留学ジャパン』の制度を使って、フィリピンで出稼ぎ労働者に日本語を教える活動をしていました。フィリピンの次はインドに行って、幼稚園から高校までの一貫校で働いてました。

羽田

もともと教育がしたくて留学したの?

下山

そうですね。僕、大学入ってしばらくして休学しようかなと思ったんです。自分が何がしたいのか、何ができるのか分からなくて、このまま社会人になって働く、ということに希望を見出せなかったんですね。だからもっと社会勉強とかしたいなと思ってて。で、休学するなら何の活動をしようかなと思った時に、教育かな、と。もともと、人が何かに変わるプロセスに興味があったんです。例えば、僕がディベートに出会い、今こうして東大にいるのも恩師や親友との学び合いの機会があったからで、同じように自分のできる範囲で機会を提供することができればと思ったんです。

登坂

僕は大学1年の時にもう休学しちゃったんですけど。

羽田

え、いきなり?

登坂

はい(笑)。東大の『FLY Program』っていうのがあって。何らかのビジョンで活動する学生を支援してくれる制度なんですけど、その存在を受験生の時に知っていたので、東大受かったら挑戦してみようと思っていたんです。それでありがたいことに採択されたので。

羽田

大学休んで何をしてたんですか?

登坂

世界一周ですね。

羽田

世界一周⁉︎

登坂

世界一周しながら、各地の幼児教育を取材する、ということをずっとしてました。半年かけて。

羽田

ほお……。しかし、なぜまた?

登坂

10歳くらいの時からいつか世界一周するぞ、と特に理由もなく思ってたんです(笑)。あと、高校時代にディベートを小学生に教えるNPOの活動をやっていたんですけど、人が成長するのを目の当たりにして、教育に興味が出てきたんです。その活動をされているNPOの方が元新聞記者で、自分自身も高校時代に新聞部とかやってて、世界一周しながら各地の教育事情を取材したら面白いな、と思って。

羽田

なるほど。で、彦坂くんも教育の活動してたんですよね?

下山

そうですね。彼は幼児教育の塾でバイトしてて、実際に指導もしてます。なので、日本の教育の現場を知っている。僕ら3人は一緒に教育の活動をしていたわけではないのですが、それぞれの現場で感じていることを持ち寄ってキャリア・インカレを戦っていきました。

Edutecはキャリアインカレをどう戦ったのか?チームの強みは?

下山君に呼応してインカレに出場した登阪君。大学1年から休学し、世界一周しながら各国の教育現場を取材してきた。

羽田

なるほど、edutecが結成された経緯はわかりました。ちなみに言い出しっぺの下山くんは何故インカレに出ようと思ったんですか?

下山

僕はもともと、負けず嫌いなところがあって。競争したりするのが好き。学生時代にはいろんな活動がありますし僕自身も学生団体とかもやってるんですけど、高校の頃の部活ほど勝ちにこだわれる機会って少なかったんです。ビジネスコンテストって、はっきりと結果出るから出てみようかな、と。それと、一年間教育活動を通して得たインプットを形にしてみたいと思ったからですね。

羽田

もともと、高校時代にキャリア甲子園出てましたもんね。

下山

そうですね。まさかキャリア甲子園の時のチームメイトと、インカレの決勝戦で当たるとは思いませんでしたが(笑)。
*東京ガス代表 Omegasafetyの石井くんと下山くんは同じ広島の高校出身で、高校3年生の時にキャリア甲子園で同じチームで決勝戦まで残っていた。

羽田

でもそれでちゃんと優勝という結果残したわけですからね。自信になったでしょう?

下山

うーん。ビジコンはビジネスアイデア出すところで終わってしまって、実際にビジネスを動かして行くプロセスはないので、ビジコンで勝てたからといって自分たちにビジネスの実力があるとは思っていません。でも、社会に出る前にビジネスを考えて、企業の人にフィードバックしてもらえて、結果がはっきり出るのって学生にとって意味があると思うんですよね。起業するのはハードルが高いけど、ビジコンは誰でも出られますからね。

羽田

謙虚だ!ちなみになんで大日本印刷のテーマを選んだのですか?

下山

実は、最初は違う企業で考えていたんです。で、大日本印刷のテーマが発表されて、正直それまでそんなに知らない会社だったんですけど、調べてみたらすごいいろんな技術持ってるし、資本も大きいから色んなことできるんじゃないかって。それで自分たちのやりたいことと一番親和性高いのは大日本印刷だな、という感じですね。

羽田

チームでの役割分担ってどんな感じでした?

登坂

僕ら、あんまり役割分担とかなかったんですよね。下山がリーダーでマネジメントとかは彼でしたけど、全員で調査もしたし、スクリプト書くのもスライド作るのも、全員それぞれやってました。

下山

僕は11月までインドにいたので、書類審査の時までは会ってミーティングもしてないんです。スカイプで打ち合わせして、クラウドでスライドデータをそれぞれ共有して……。

登坂

ちゃんと役割分担した方がいい時もあると思うんですけど、僕らの場合はみんなそれぞれ遠慮なく言い合える関係性だったから、このやり方で正解だったと思います。それぞれが教育のバックボーンがあったのでお互い信頼してるし、任せるところは任せちゃう。逆に反対するときは遠慮なく反対する。反対されたからといって嫌な気分になることもないし、チームワークはかなり良かったと思います。

羽田

ちなみに、勝てると思ってました?

下山

うーん、まあ準決勝までは行けるかなとは思ってました。

登坂

それは楽勝って意味じゃなくて、そこまで勝ち進めるくらいには自分たちなりに必死に追い込んで、こだわって追求してたので。

下山

でも準決勝は自信なかったですよ。ベストは尽くしましたけど、他チームのプレゼンもすごい良かったので。準決勝の全プレゼンが終わった後「あー負けた」って全員ちょっと落ち込んでましたからね。だから僕らが優勝したって知って、最初は信じられなかったです。

羽田

なぜ勝てたんだと思います?

下山

うーん、大日本印刷が求めていることを真摯に捉えていたからですかね。準決勝の前に大日本印刷の方からもらったフィードバックを全部改善していきました。自分たちのアイデアだけを押し通すわけじゃなくて、『大日本印刷が僕らに何を期待しているのか』という視点を大事にして、それまで作っていたスライドを全部ゼロから作り直して臨みました。

登坂

僕らの強みの一つは修正力だと思います。大元になるアイデア自体は最初から変えてませんが、書類審査、プレゼン動画審査、準決勝、決勝と全てスライド変えてます。いただくフィードバックを全部見直して、取り入れられるものはかたっぱしから活かしていきました。


羽田

確かに、edUTecはひたすら貪欲だった印象ありますね。さてそうして迎えた決勝戦。やっぱり準決勝からまるっきり変えてきましたね。

大ピンチの決勝戦! ニコニコのコメントに涙ぐむ

ニコニコ生放送では友人と思われる人たちからの書き込みが多かった

下山

そうですね。準決勝は彦坂が一人でプレゼンしたんです。彼が一番プレゼン上手なので。でも準決勝で他のチームがメンバー交代しながらプレゼンするのを見て、自分たちも決勝では交代でやろうとなりました。折角ニコファーレ出るんだから、僕らもプレゼンしたかったし(笑)。

登坂

決勝に出れるってなってから、益々エンジンかかりましたね。大日本印刷代表として出るわけですし、社員の方もすごく応援してくださって。絶対勝ちたい、と強く思うようになりました。年末年始はそれぞれ実家帰りましたけど、帰省中もずーっと作業してました。おばあちゃんの家に向かう車の中でもPC開いてスカイプチャットしてましたからね(笑)。

下山

僕も似たような感じでした(笑)。

羽田

相当熱いれて準備して臨んだんですねぇ。主催者側としては嬉しい限りですよ。

下山

いや、でもやりすぎましたね。

羽田

ん? というと?

下山

最後の方は、全員僕の部屋に泊まり込んで連日徹夜で準備してたんですけど、決勝前日の夜に3人で休憩がてら銭湯行ったんです。で、お湯から上がった瞬間、僕、倒れちゃって……。

登坂

あれはやばかったね。顔が白いというより、青かった。

下山

僕、徹夜とか慣れてるタイプなんですけど、あんなのは初めてです。銭湯で裸のまましばらく立ち上がれなくて。まあ、その後結局徹夜したんですけど、実は決勝当日も体調が過去最悪に悪くて……。でも休むわけにいかないですからね。本番まではなるべく立たないようにして、座って体力を温存してました。

登坂

でも決勝のニコファーレはテンション上がりましたね。会場にニコ生視聴者のコメントが流れるじゃないですか。僕ら全員、名前を名指しで応援が書き込まれてて。「あー誰か見てくれてるんだなぁ」って。僕の親父が見てて、ツイッターでつぶやいてました(笑)。

下山

僕も体調最悪でしたけど、オープニングの入場の時に「あっくん」って書き込まれてるのが見えて、ガールフレンドが書き込んでくれたのかと思って。それを見たらすっごく泣きそうになりました。まあ、後から聞いたら実は彼女じゃなくて親だったんですけど(笑)。顔色悪すぎて、ニコニコのコメントで「水餃子みたいな顔してる」って書かれたのは悔しいですが。。。(笑)

羽田

(笑)。でも決勝はみんなどのチームもレベル高かったですねー。さすがそれぞれから勝ち上がってきたチームでした。緊張しました?

登坂

もちろん緊張はしましたけど、悪い緊張の仕方じゃなかったです。それに大日本印刷の方が励ましてくれて、落ち着くことができました。でもまさか優勝するとは……。

羽田

勝因はなんだったと思いますか?

下山

勝因……。そうですね、実は、僕は準決勝の時より自信ありました。スライドもゼロから作り直しましたけど、原稿も相当こだわって全部作り直したので。

羽田

ほお。例えば?

下山

例えばですけど、僕ら決勝の時に「学び」と「教える」と「教育」の言葉を使い分けていたんですけど、気づかれました?

羽田

すみません、全然気付きませんでした。

登坂

3つとも同じような意味の言葉に聞こえますけど、与える印象が違うから使い分ける必要があると思ったんです。「学び」は主体的で、「教える」は上からの印象がある。「教育」は設備とか施設とか仕組みっぽい印象があるなって。

下山

あとは決勝戦は審査員のスコア制ですからね。審査員の情報が公開された時点で、僕たちはその人たちのことを調べ上げました。審査員の名前までは公開されなかったので「多分この人だろう」って予想して、その人がどんな仕事をしてきたのかを調べました。一人、予想と外れましたけど(笑)。

登坂

例えば僕たち、決勝戦で初めて「イノベーション」って言葉を使ったんですけど、これは審査員の一人である経産省の新規産業室の方に合わせたメッセージですし、BBT大学の審査員を意識して「ビッグデータを用いた教育」って言葉を多用したりしました。すごく細かいところですけど、そこまで意識して勝ちに行ったってことです。

羽田

うううむ、徹してますな。すごい……。チームワークと修正力、そして勝ちに徹する姿勢、貪欲に追求する、全てが組み合わさって優勝したってことですね。

下山

でも、最終的には『自分たちのフィールドで戦った』ってことが最大のポイントだったと思います。他人事のビジネスプランじゃなくて、自分たちの問題意識がベースのアイデアだったので。

羽田

どうでしょう。インカレ終わってみて、自分自身ここが成長したなってありますか?

登坂

知識の使い方が分かってきた気がしますね。今までいろんな経験を通じて知識や情報をインプットして来たけど、自分の中にストックされただけだった。でもキャリアインカレに出て、これまでの知識を具現化してアウトプットしたことで、初めて知識が自分のものになった感覚があります。これからももっと勉強して知識や引き出しを増やして、それを活かしていきたいですね。

下山

僕は『勝つための思考法』ですかね。さっきも言いましたが、自分達の思いや考え方を形にするのではなくて、勝つためにはどうすればいいか、ということを徹底する。
あとはやはり、自分たちに自信を持つ、もしくは自信を持てるまでとことんまで追求することの大切さですかね。僕たちのプレゼンのテーマは「幸せになる力」でした。僕らはそれを「自己肯定感」という言葉で表現したんです。今回のキャリアインカレ、正直かなり苦しい時期もあったんですけど、それでも諦めずに追求して、最後は自分たちの力、可能性を肯定することができた。その感覚はとても大きな収穫でした。「自己肯定感」という僕たちの言いたいことは、間違ってないなと自信を持てたことは大きいですね。

羽田

イヤイヤ、ありがとうございます。では最後に、奨学金はどうやって使うんですか? あとこれからの目標も教えてください。

登坂

うーん、奨学金はみんなで3等分するんですけど、僕はやはり旅ですかね。今回、知識の使い方を学んだので、もっとインプットを増やして自分を肥やしたいですね。

下山

僕は両親が車を買う買わないで喧嘩してるので、ラジコンでも買ってあげようかなと思ってます(笑)。今後の目標は……そうですね。以前から興味がある学生起業を真剣に考えてみたいです。あとは運営している東アジアの学生と国際会議を開くAFPLAという学生団体があるんですけど、春から僕が代表になるのでそっちも力を入れていきたいです。

羽田

ありがとうございます!今後のedUTecの活躍に期待しています!

取材後記

キャリア・インカレ2016決勝大会に駒を進めた4チームは当然ながらどこもレベルが高く、紙一重の勝負だった。また4チームどれも個性が強く、どこが優勝するのかハラハラしながら私もプレゼンを見守った。
その中でもedUTecは、他のチームに比べ比較的クールでスマートに見えた。しかし見た目とは裏腹に、泥臭い、地道な努力を積み重ねていたことが今回の取材でわかった。改善に改善を重ね常にベストを尽くす姿勢、細部に至るこだわりなど、勝ちに徹する姿勢にはこちらも勉強させてもらう点が多かった。
この勝負強さを発揮して、きっとこれからもガンガン活躍してくれるだろう。

(取材/執筆:羽田啓一郎)
MY FUTURE CAMPUS責任者。企業の新卒採用の担当営業を経験後、キャリア教育事業の立ち上げを担当。大学の嘱託講師や政府の政策研究委員、新聞の連載コラムなども経験あり。格闘技と90年代のUKロック、apple製品で価値観の大半ができている。

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