【帝人】「目指せ、脱炭素社会! 実質排出量ゼロの実現にむけたビジネスを考えよう!」


1918年、日本初のレーヨンメーカーとして設立した帝人株式会社。この100年間に合成繊維メーカーから高機能繊維、電子材料、ヘルスケアなど複数の事業を展開するグローバル企業へと成長しています。グローバル企業だからこそ「キャリア甲子園2016」の参加者に問いかけたいテーマが「目指せ、脱炭素社会! 実質排出量ゼロの実現にむけたビジネスを考えよう!」。この世界共通のテーマに込められた思いを伺いました。

お話をしてくれた方 大崎 修一さん
帝人株式会社 CSR・信頼性保証部 CSRグループ
profile_teijin1988年入社。入社後は先進システム開発技術の応用研究に従事した後、2001年より帝人グループの情報システム企画及びITガバナンス企画に従事。途中2年間の経営戦略室勤務を経て、2015年12月より現在のCSR戦略企画を担当。趣味は旅行。欧米を中心に海外各国を個人旅行して回っている。
京都大学大学院 工学研究科 数理工学専攻修了
お話を聞いた人 青野 将大
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフ 東京大学3年生 農学部国際開発農学専修
profile_teijin2サッカーサークルの他に学生団体に2つ入っていて、趣味はフットサルやサッカー、ボルダリングなどアクティビティ全般が好き。将来は日本ではなく、海外の勤務を希望している。成熟した市場ではなく、成長途上の国々で市場とともに、勤務企業の成長を成し遂げたいこと、マーケティングなどを通して国家ごとの文化の違いに触れたいと考えている。

“脱炭素社会”は地球の未来がかかった壮大なテーマ

―― MFC学生スタッフの青野です。おそらく帝人さんの人工皮革を使ったサッカーボールを毎日蹴っているので、今日の取材を楽しみにして来ました。さっそく本題に入りますが、キャリア甲子園2016のテーマに「目指せ、脱炭素社会! 実質排出量ゼロの実現にむけたビジネスを考えよう!」を設定した理由から教えていただけますしょうか?

大崎さん サッカーをされているのなら夏のゲリラ豪雨で困った経験をお持ちではないですか? 近年の気候変動問題は大きなニュースにもなっており、2014年の広島市土砂崩れ、2015年鬼怒川堤防決壊、2016年タイ大干ばつなど、気候が原因の大きな災害が発生しています。地球温暖化については温室効果ガスとの関係が指摘されています。そのため二酸化炭素など温室効果ガスの排出を抑え地球温暖化を防ぐ気候変動枠組条約が国連によって採択され、第3回締約国国際会議(1997年)では、皆さんも聞いたことのある「京都議定書」が採択されました。先進国の温室効果ガス排出量を90年比で5%削減する目標が掲げられました。

―― しかし、京都議定書はアメリカが締結を見送り、発展途上国については経済発展を優先して自発的参加にとどめるなど形骸化し、結局目標を達成できませんでしたね。

大崎さん はい。その反省を受けて第21回締約国国際会議(2015年)では、世界196の国・地域すべてが合意し、法的拘束力も発生する厳しい内容の「パリ協定」に改められました。世界共通の長期目標として「産業革命以前からの平均気温上昇を2℃未満に抑制」「さらに1.5℃に抑える努力を目指す」が定められたのです。この“2℃未満”を実現するためには今後どのくらい排出量を減らす必要があると思いますか? 2℃未満を実現するには2100年には排出量をゼロまたはマイナスにしないといけないのです。

―― 温室効果ガス排出量をゼロまたはマイナス……。その数値はとても挑戦的ですが、はっきり言ってどこまで実現可能なのだろうかと思ってしまいます。

大崎さん そこで私たちが今回のテーマに選んだのが「脱炭素」です。この数値を実現するためにはこれまでの「低炭素」のレベルでは実現は到底不可能です。もちろんとても難しいテーマです。私たちは生活している限り、二酸化炭素を排出しているわけですからね。でも想像してもらいたいのです。私たちは今、豊かな緑を持つ国土で生活していますが、一方で地球温暖化による海面上昇で南太平洋のツバルでは集団移住を検討する状況に陥っています。日本国内でも沿岸養殖などの漁業に影響を与えると懸念されています。脱炭素はもはや一国の話ではなく地球全体の課題です。

大崎さん

脱炭素社会に向けて、課題の難しさを語る大崎さん。

私たちの生活の中に増える省エネ素材

―― 大崎さんのお話を伺っていると、温室効果ガス削減に向けて、もはや待ったなしの状況だとよくわかります。帝人さんでも二酸化炭素排出削減に向けた製品などを展開しているのですか?
大崎さん はい。二酸化炭素を多く排出する乗り物といえば飛行機と自動車ですが、重量を軽くすることで燃費を向上させ二酸化炭素の排出量を軽減することができます。そこで炭素繊維強化プラスチックやポリカーボネート樹脂などを、機体や車体の金属・ガラス部分に代替し、軽量化に貢献しています。またリチウムイオン電池に薄膜セパレータを使用することでエネルギーの高密度化や高容量化、さらに安全性の向上や長寿命化に繋げています。

―― 私のような普通の大学生の日常生活の中にも、二酸化炭素排出を削減するための素材は増えてきているのですね。
大崎さん まだまだあるんですよ。旅行をする時間がたくさんあるのは大学生の特権ですから、きっと新幹線にもよく乗るでしょう。新幹線のN700系の窓もガラスではなくポリカーボネート樹脂から作られています。もっと身近な話をすると、青野さんの部屋のカーテンは、遮熱性の高い素材を使っているかもしれません。帝人では光の透過性はあっても熱を遮断するカーテン素材を開発しており、熱を遮ることでエアコンの使用を控えることができます。当社の技術とは異なる分野になりますが、その部屋のエアコンもおそらく省エネ家電だと思います。

──―― よくEU諸国の温暖化対策が評価されますが、日本も各メーカーが相当な工夫をして温室効果ガス排出に貢献していますよね。しかし世界的な評価は実際よりも低い気がするのですが。
大崎さん 確かに日本の省エネ技術はとてもレベルが高いです。これはあくまで私個人の考えですが、日本は発信力が弱いのかもしれません。PRがあまり得意でないのかもしれませんね。しかし発進力も重要ですが、中身がなければ発信することも出来ません。より重要なのは、実効性のある温室効果ガス削減の方法を見つけることです。発信力を高めても二酸化炭素は減りません。確実に二酸化炭素をゼロまたはマイナスにする方法を見つけられたら、これ以上の発信力はありません。つまり今回のテーマである「脱炭素社会」をどれだけ実現可能にできるかという話になるのです。

青野

二酸化炭素を削減するために必要不可欠な素材などについても質問しました。

未来が求めているのはSFではなく本当に実現できるアイデア

―― 最初に脱炭素社会の実現化というテーマを聞いたとき、正直、高校生にはかなり難しいテーマだと思いました。いったいどこから考えていけばよいのか、何を調べればよいのか、少しヒントをいただけますか?
大崎さん まずパリ協定の内容は確認してもらいたいです。UNFCCCのサイトで英語の全文に挑戦してもらってもよいですし、環境省のホームページでも確認できます。国連も「持続可能な開発のための2030アジェンダ─持続可能な開発目標」を示しており、今年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画2016」には何をどのぐらい削減すればよいのかという具体的な数字が書いてあり、そのために何をすればよいのかというガイドラインも提示されています。また各企業のCSR報告書にも環境への取り組みが紹介されており、当社も物流を工夫したり排水や廃棄物を削減したりなど、具体的な対策を紹介し、それによって削減できた二酸化炭素排出量などを公開しています。

―― 情報を集めた後は、自分たちで具体的な解決策を考えるわけですが、大事なのは実現できることですよね。ただの空想で終わってしまっては意味がないですよね。
大崎さん その通りです。実現可能でビジネスモデルとして成功する内容であること。そのためにはコストも考えなければいけません。例えば先ほど日本の環境技術の高さに触れましたが、二酸化炭素排出量の多い発展途上国に、その技術を応用できる方法がないかを探るのも一つの方法でしょう。二酸化炭素を吸収する人工光合成については各メーカーや大学も研究を進めており、日本が技術的にも優位に立っている分野です。まだ当社では事業化にいたっていないのですが、太陽光発電の効率を高めるための素材の研究も進めています。
今回の「脱炭素社会」のテーマに結びつくのであれば、皆さんは特に帝人の技術の領域にこだわることなく、自由な発想で考えてみてください。とは言え、もともとは繊維から始まった企業ですから、繊維・素材に関係したアイデアならうれしいですね。

―― おそらく「脱炭素社会」のテーマに取り組む高校生たちは、相当の覚悟を持って挑んでくると思います。難しくて壮大な課題ですが、そんな勇気ある参加学生たちにメッセージをお願いします!
大崎さん キャリア甲子園2016の目標年は2023年。ちょうどパリ協定に基づく温室効果ガス削減実施状況を確認し各国の目標を見直していく年に当たります。この時点で実効性のある解決策が出ていなければ、今世紀中の脱炭素社会の実現は極めて難しくなってくると思います。皆さんが挑む取り組みは、私たち人類の未来に直結するとても意義のあることです。大げさに聞こえるかもしれませんが、人類の未来を失わないためにも脱炭素社会を実現できるアイデアを創出し、それをビジネスにできる形も考えてもらいたいです。「これは効く、実行できる」と思わず膝を打つようなアイデアに出会えることを期待しています! すでにカウントダウンは始まっているのですから。

大崎さんと青野

チャレンジしがいのある難易度の高いテーマについて、熱く議論しました!

青野 将大の取材後記

集合写真

炭素繊維複合材料(CFRP)を使用したコンセプトカーの前で。CFRPは鉄の約4分の1の軽さと10倍の強さを持つ炭素繊維をベースにした樹脂との複合材料ということです。このような技術が普及すると、一歩脱炭素に向けて前進しそうですね。

「低炭素社会では間に合わない」。環境に優しい製品の開発に取り組んでいる帝人の社員がそう語っているのを聞いて、頭の中でその言葉を反芻しました。温暖化防止に取り組む方々と社会との認識のズレが起きている現状を打破するには、将来を担う若い世代からこの問題を見つめ、取り組む必要があると改めて考えさせられました。ざっくばらんに様々な質問に答えてくださった大崎さん、ありがとうございました! また高校生のみなさん、是非とも帝人さんの出題テーマに取り組んでみてください。


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