【資生堂】「2023年の若者に“清潔” “快適さ”を提供する商品を考えよう。」


120の国と地域で事業を展開している株式会社資生堂。化粧品メーカーとして世界第5位の売上高を誇り、創業以来変わることなく美しい生活文化とは何かを、消費者とともに考え提案してきた企業です。今回資生堂が私たちに問いかけるのは未来の若者のための“清潔” “快適さ”を実感できる商品。価値観が多様化する今、ヒットするロングセラー商品を生み出すために何が必要なのかを伺いました。

お話をしてくれた方 中石 尚吾さん
株式会社エフティ資生堂 パーソナルケアマーケティング部 フェイス・ボディ・メンズグループ
nakaishi1986年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2008年に株式会社資生堂入社。
営業として入社し、北陸の大手ドラッグストア様の営業担当として店頭の売場のフォローやお店様の店頭の企画を担当。2012年からマーケティングチームへ異動し、専科・アクアレーベルの製品開発担当。他、コスメティックスブランドを担当し、2014年からはシーブリーズの製品開発からクリエイティブ、コミュニケーション開発まで総合的に担当。2015年デジタルコンテンツのダブルサイドストーリーはFWA“mobile of the day”等、各種受賞。
お話を聞いた人 石井 琴音
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフ 国際基督教大学3年生教養学部アーツ・サイエンス学科経営学専攻
ishii趣味は、旅行、映画鑑賞、グルメ探索。唐突に一人旅に行くこともある。異文化に触れることも好きで、長期休みには、ボランティア活動や国際交流の場に参加することが多い。将来は、日本だけではなく海外勤務も経験したいと模索中。異文化の人と何か一つのことを成し遂げることに魅力を感じている。

ニーズや価値観がどんどん多様化する時代

―― MFC学生スタッフの石井です。美やトレンドに敏感な……と言いたいところですが、キャンパスも田舎でインドア派人間なので、あんまりキラキラした学生生活を送っていません(笑)。そんな私が伺うのは少し気が引けますが、まずは資生堂が考える「美しさ」「豊かさ」とは何かを教えていただけますか?

中石さん (笑)。まずは「美しさ」から考えてみましょうか。創業以来、資生堂はその時代ごとに美しい生活文化を提唱し創造してきました。画一的ではないものの、その時代ごとに美の定義がある程度ありました。しかし今の時代はこの定義を求めることが難しいです。きっちり整えたスタイルがよいという人もいれば、少しくずしている方がかっこいいと感じる人もいます。「こういう美でなければならない」と簡単に言える時代ではないですよね。そこで当社も幅広いブランドや商品を発信しています。女性向け化粧品でもドラッグストア向けとデパート向けで重点を置くブランドを変えたり、男性向け化粧品、さらに年代を限定した商品やサロン向け商品、海外ではその国における美の価値観を反映した商品にしたりするなど、顧客のニーズを細かく捉えて幅広い層に向けた商品を発信しています。

―― 極端に言えば「美しさがわからない時代」とも言えると思うのですが、それでも一つの商品にしなければならない。それはとても難しいのではないでしょうか?

中石さん その通りです。そこで私たちは「with」というコンセプトを常に意識しています。お客様と一緒に、本来ある“美”を創っていこうと考えています。そしてそれを商品にして提供していくことが私たちの仕事です。それが先ほどのご質問にあった「豊かさ」へと繋がります。世の中に豊かさを提供しない会社はありません。例えばインフラ会社は縁の下の力持ちとして世の中を支えて豊かさに貢献していますよね。様々な豊かさがある中で、資生堂の考える豊かさとは、生活の質をまた一つ押し上げていくものだと考えています。当社の商品を使うことで、周りの人からの印象をワンランク上げること。そういう豊かさに寄与できればうれしいですね。

中石さん

何事も変化が激しい時代の中で商品をうみだす難しさを語る中石さん。

―― 生活の質をワンランク上げられる化粧品を選ぶとき、やはりブランドを意識します。その点、資生堂が持つブランド力は大きいですよね。影響力、信頼性という面で大きなアドバンテージをお持ちではありませんか?

中石さん なるほど。石井さんは、ブランド力は影響力と信頼性だと考えているのですね。じつはこれも「美しさ」と同様に一言では説明できない深いものです。まずブランドがどこまで響くかの問題があります。どんなに強いブランド力を持っていても、それだけで商品を買ってもらえるかどうかはわかりませんからね。そしてブランド力には一長一短があり、信頼感を寄せる人もいれば、そうでない人もいます。時代のニーズに応え、購買に結びつくブランド力を持ち、長く愛用される商品を発信することはとても難しいことです。

石井

商品開発の際、必要な要素となるブランド力についても質問しました。

長く愛用される商品を生み出すために

―― 時代のニーズに応え、ブランド力を持ち、長く愛用される商品。そういう意味では『シーブリーズ』は成功していますよね。

中石さん シーブリーズは1902年にアメリカで誕生し、1969年に日本へ参りました。日やけ後の肌ケア要素や、新しい香りを取り入れたりしていますが、植物由来の保湿成分を配合したレシピは100年以上変えていません。一方でパッケージやCMを一新するなど変えた部分もあります。何を変えて何を変えないかの判断は、緻密なマーケティングの積み重ねです。香りについて言えば、どんな香りが人気なのか、どんな効果が求められているのかを細かく調査し、その後にターゲット層である中高生にアンケート調査を行ったり、実際に会って話を聞いたりします。じつはボトルケースの変更を検討したことが過去にありましたが、実際に中高生に変更予定のケースを持ってもらい、今の方がよいという意見が多数出て変更しませんでした。革新と普遍を兼ね備えることが、長く愛用される理由の一つだと思います。

―― 私も愛用していた一人で、夏の部活動の思い出とシーブリーズが一体化しています。最近だとキャップ交換を楽しんでいる高校生も多いですね。

中石さん シーブリーズの「キャップ交換」というキーワードは、昨年、そして今年も高校生の流行語になっています。好きな人とシーブリーズのキャップを交換して使い切ると恋が叶うおまじないを仕込み、これぞ青春ですよね。石井さんの夏の思い出とシーブリーズの一体化という話も、先ほどの「ブランド力」や今回の商品開発というテーマを考える上でとてもよいヒントになると思いますよ。

―― 人間の記憶や思い出と、ブランド力や商品開発がどうリンクするのですか?

中石さん 価値観の多様化と言ってもじつは属性にまとめることはできます。趣味嗜好の似た人同士をいくつかグルーピングすることができ、AグループとBグループの共通点をまとめることで、新商品に加える要素を新たに発見することもできます。そして大事なのがストーリー性です。同じ商品でもストーリーの見せ方によって消費者の反応は変わります。シーブリーズの場合は夏や青春の記憶とあいまって、爽快感や清潔感というイメージへ結びつけることができます。もともとシーブリーズはファミリーをターゲット層にしていましたが、CMやアイテムのストーリー性を変えることで、メインターゲットをファミリー、若者、高校生へと変え、使うシーンも海から日常の街へとシフトしてきたのです。

中石さん

長く愛されているシーブリーズの歴史や、その歴史を継続するための取り組みについて語っていただきました。

7年後を想像するために7年前を調査する

―― 中石さんのお話しを伺っていると、チャレンジする高校生は“清潔” “快適さ”の定義に悩みそうです。さらにそれをブランディングしたり、ストーリー性も考えたりと、高校生にはなかなかハードなテーマかもしれません。

中石さん そうですね。チャレンジする高校生たちには、まずは2023年における“清潔” “快適さ”が何かをじっくりと考えてもらいたいです。今は身だしなみの一つとして清潔感が重視されていますが、これすらどう変化しているかわかりません。いくつか具体的なアプローチを紹介しましょう。まず2023年に何が起こるか、何が予定されているかを調査してください。東京五輪の3年後というのもヒントになるかもしれません。2023年は今から7年先です。7年先を予想しにくいなら7年前を調査してください。当時どんなものが流行っていて、その後価値観はどう変わったのか。ブランディングやストーリー性についてはデバイスやSNSの変遷をたどるのも一つの方法でしょう。

―― 商品開発は発想力だけでなく事前の調査がとても重要だという点も、今日はよくわかりました

中石さん 一つの商品を世に送り出すためには、とにかく調べることが大事です。そして忘れてはいけないのが一時的な流行や表層的な美しさ、短期的な利益に惑わされないということです。かと言って流行にまったく無関心でも困ります。私の場合は情報を得るためになるべく多くの人と会って話を聞いています。そこで受けた刺激を商品へと還元していける人間になりたいと考えています。自分自身は流行に乗らなくても、流行に敏感な友人を一人つくるだけでも、きっといろんな見方ができるようになると思いますよ。

―― 「2023年の若者に“清潔” “快適さ”を提供する商品を考えよう。」このテーマにチャレンジする高校生にメッセージをお願いします。

中石さん 2023年の自分たちの世代がどう変わっているのか、どんな生活をして、どんなことに困っているのか。それを想像して商品を考えることは難しいですが、とても楽しいはずです。今回のテーマは自分の現在の生活に視点をあてることにもなるはずです。とにかく調査とディスカッションを重ねてください。それが欠けていると出てきたアイデアもぼんやりしてしまいます。自分たちの生活を思いきり分析し、その先に見えてきた答えは私のような大人には見えないものだと期待しています。大変な作業ですが、きっとどんな勉強よりも楽しくて充実感があるはずです。

中石さんと石井

未来の時代を想像することに関するたくさんのアドバイスをいただきました。

石井 琴音の取材後記

集合写真

資生堂オフィス前で。世界に「美しさ」を届ける発信源!

「2023年の自分たちの世代がどう変わっているのか」について想像する今回のテーマ。答えのない問いに答えをうみだすのはとても難しそうと感じましたが、中石さんが行われている、多くの人に会ってもらった刺激を商品に還元することのように、調査とディスカッションを重ねて、自分のアイデアを形にすること、自分が新たな流行をうみだすことは、とても楽しそうだと思いました! 明るく、気さくにお話ししてくださった中石さん、ありがとうございました! また高校生のみなさん、是非とも資生堂さんの出題テーマに取り組んでみてください。


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