【バイエル】「2023年、世界の食糧安定供給に日本農業が貢献するための施策を考える」


「アスピリン」などのお薬で有名ですが、戦前より農薬メーカーとしても長年の実績があるバイエル。高校生の皆さんに「キャリア甲子園2016」を通じて、考えてもらいたい出題テーマとして「2023年、世界の食糧安定供給に日本農業が貢献するための施策を考える」を掲げた理由は何故か。その背景についてお話を伺いました。

お話をしてくれた方 大島 美紀さん
バイエル クロップサイエンス株式会社 管理本部長
profile_bayer21992年入社。 営業本部配属後、2009年カスタマーサービスセンター長、2011年プロジェクトマネジメント オフィス室長、2013年営業本部 ビジネスサポートグループ グループリーダー等を経て、2015年7月より現職。筑波大学 環境科学研究科 修了。
お話をしてくれた方 荻上 敬子さん
バイエル クロップサイエンス株式会社 広報部長
profile_bayer2012年入社。 フランス系化粧品企業、英国系菓子企業、米国系ITソリューション企業等での広報統括経験を経て2012年8月より現職。 獨協大学 外国語学部 卒業。
お話を聞いた人 青野 将大
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフ 東京大学3年生 農学部国際開発農学専修
profile_bayer3サッカーサークルの他に学生団体に2つ入っていて、趣味はフットサルやサッカー、ボルダリングなどアクティビティ全般が好き。将来は日本ではなく、海外の勤務を希望している。成熟した市場ではなく、成長途上の国々で市場とともに、勤務企業の成長を成し遂げたいこと、マーケティングなどを通して国家ごとの文化の違いに触れたいと考えている。

日本人にも関係がある、食糧危機

── MFC学生スタッフの青野です。本日は取材のお時間を頂きありがとうございます。早速なのですが、今回のキャリア甲子園2016で出題された「2023年、世界の食糧安定供給に日本農業が貢献するための施策を考える」というテーマを設定した理由を教えていただけますでしょうか?

大島さん 今世界で問題になっていることの一つに、人口増加による食糧不足の深刻化というものがあります。世界の人口は現在も増加の一途をたどっていて、このままだと2050年には96億人にまで増加すると言われています。現在の人口(2015年度:73億人)ですら、世界の8人に1人が飢餓に苦しんでいると言われている中、そこまで人口が増えてしまうとどうなってしまうのか。また一方で、農地面積には物理的に増やせる余地がないため、人口増加により一人当たりの耕地面積が縮小してしまい、今のままでは、全人口に行き渡るだけの農作物の生産量が確保できなくなってしまう日が、ほどなく来てしまうことは明白です。日本で暮らしていると、食糧不足という問題は捉えにくいかとは思いますが、地球規模で考えると、潜在的には、とても大きな問題なのです。

── 確かに日本だったらいつでもコンビニとかで食糧は買えますし、あまりピンとこない話題ですね。

大島さん 平成5年の冷夏によるコメの大凶作の際にも、日本は海外からお米を輸入するなどして困らないようにしていましたからね。 とはいえ、日本の食糧事情も安泰とばかりは言っていられないかもしれません。実は日本の食料自給率は、先進国の中では最低レベルの39%(カロリーベース)。輸入が滞るようなことがあれば、即座に食糧問題に直面しかねない状況にあります。

── 日本が最低レベルにあるというのはショックですね。

大島さん さらに言うと、2050年、今の高校生の方が家庭を持つ頃には、今より20億人も人口が増加し、こうした問題は今以上に深刻になってきます。日本でもお米が手に入らないという状況になることも十分あり得ます。キャリア甲子園に挑戦する若い方達にも、今の日本の私達に一体何ができるのか、ということを考えてもらう機会になればと思っています。

── なるほど、ありがとうございます。食糧を消費する世界人口が増えていくのはわかりましたが、一方で食糧を供給する農業の側にはどのような課題があるのでしょうか?

大島さん 現在、農作地として新たに開拓できる場所は世界にほぼ残されていないために、現在の農業スタイルのままでは食糧需要の増加に対応できないということが最大の課題です。これに加えて地球温暖化に伴う洪水や干ばつ等による生産量の減少も大きな問題になっています。また食生活パターンの変化で穀物の需要が昔より格段にあがったりもしています。こうした現状を鑑みると、結局生産効率を高めて収穫量を増やしていくしか道がないということになります。

大島さん

自分の専門でもある農業が関わる食糧危機の背景について具体的な数字と共に大島さんにご説明頂きました。

日本の農業問題

── 日本だとこうした問題に加えて農家の数も少なくなっているんですよね?

大島さん その通りです。日本における農家さんの数は1995年の344万4千戸から215万戸まで減少していて、農業就業人口も1995年時には419万人だったのが、現在209万人にまで減ってしまっています。

── 農家数が減少しているという点では、農家一人当たりの農地面積が大きくなるといったことも考えられると思うのですが、それで効率が上がっているということはないのでしょうか?

大島さん そうですね。確かに所有面積が小さい農家さんの割合は減り、10ha以上の大型農家さんの数が増えているという傾向は見られます。集約化されていく中で、農業を生業として続けていきたいという農家さんは、大型化して頑張ろうとしている。一方で兼業農家さんや、自分達が食べられるだけ作ることで良しとする小規模な農家さんの数は減ってきています。そういう点に着目すると、日本農業の未来は暗いばかりではありません。青野さんがおっしゃる通り、資産や広い土地を所有していて、収穫量の向上に必死で取り組んでいる農家さんや農業法人が増えてきているというのも事実です。

── ということは、農業人口が減っていくというのは、必ずしも悪い面ばかりではないんですね?

大島さん キャリア甲子園で皆さんに考えていただきたいポイントは、まさにそこなんです。例えば4、50年前の日本は、農業機械がまだ普及しておらず、農薬もないという時代でした。ある一定面積の田んぼの草取りに、約100時間かかっていたとしましょう。それが、農機が普及し除草剤がでてきたことで1時間で済むようになり、農作業にかかる時間が劇的に減ったんです。青野さんの世代だと、あまり見かけたことはないかと思いますが、昔は農業が盛んな地域では、腰の曲がったおじいさんやおばあさんが、大勢いらっしゃいました。そういう方が減ったのは、手作業で草取りをしなくなったからだとも言われています。

── やはり技術の発展で農業はまだまだ効率化できるんですね。では日本の農業技術の中でこれは海外より優れている! と考えるものはありますか?

大島さん もちろん、たくさんあります。日本では、これから起こることを予想しながら無駄のない農業ができる、「発生予察」という技術があります。たとえばある種の病原菌は、湿度と温度、夜の気温が一定状況を満たす日が何日か続くと発生してきますが、これを予測しながら農作業を進めていく、という技術です。また、葉の色を見ながら、肥料が必要な場所を判断して、その部分にだけ処理する、といったことをするのは日本だけなんです。 他にも、日本の自然交配による育種の技術は、非常に優れています。

── 日本の先進技術を途上国に普及させていくのは難しいのでしょうか?

大島さん 色々な壁があるのは事実です。たとえば、企業の側は健全な収益をあげビジネスを継続していくために、開発コストや製造原価を考える事も必要です。また、最初に受け皿をきちんと整備しておかないと、途上国側だけでビジネスとして農業が回せず、自立的な発展が望めないといった問題もあります。具体例をあげると、機械を入れる場合は一時的には大きなコストがかかりますが、長い目でみれば手作業をしているよりも効率化、収益増につながります。導入するためには、まず、なぜ機械を入れるためのコストをここで掛ける必要があるのかということを、理解してもらう必要があります。バイエルは途上国でもビジネスを展開していますが、私達がビジネスを行うこと自体が途上国支援になっている部分もあると考えています。

荻上さん

バイエルの事業については、広報ご担当の荻上さんから説明を頂きました。

若い僕たちが考える、新しい農業

── バイエルは農業の問題を扱う企業なのですか?

荻上さん バイエルは150年の歴史を誇るドイツに本拠地を置くグローバル企業で、ヘルスケアと農業関連のライフサイエンス領域を中核事業としています。もちろん、私たちも地球規模の農業問題に取り組んでいますが、最近では、次世代の農業を担う若者の育成にも特に力を入れています。2013年からは世界中の若者を招へいし、農業・食糧問題について考える「世界若者農業サミット」を開催しています。

第2回世界若者農業サミット

── 「世界若者農業サミット」というのは一体どのようなものなのでしょうか。

荻上さん バイエルが世界規模で一年おきに開催しているもので、2015年度のサミットでは「Feeding a Hungry Planet」をテーマに様々なプログラムを展開しました。オーストラリアのキャンベラ市に世界33カ国から18〜25歳の100名の若者を招へいしたんです。地球レベルでの食糧安定供給を考えることこそが、いま私たちが見据えるべき大命題だとバイエルは考えています。2017年には次のサミットがあるので、青野さんも、良かったらぜひ応募してください(笑)。

── 今日のお話を聞いてちょっと興味が湧いてきました。

荻上さん 是非是非! すごく良い経験になると思いますよ! 私は、取材記者に同行して現地に行ったのですが、若い時代に世界32か国に99名の知り合いができるだけでも、そこから先の人生何かが変わってくるだろうな、と思わされるようなイベントでした。日本代表に選ばれれば、世界各国からの参加者達と、一週間同じ場所で同じテーマに向き合う時間を過ごすことになります。参加者は、皆前向きで、お互いを知ろう、繋がろうという気持ちが強く、会場は日々熱気にあふれていました。しかも、サミット前後も、事務局が提供する参加者だけのFacebookのページでつながっていくことができます。同じテーマに興味を持つ仲間を世界各国に作れるという場自体あまりないでしょうし、ご自身の地平線を広げ、将来に向けた大きな糧を得られるまたとない機会になるはずです。

── 随分と大がかりなイベントのようですが、バイエルは何故「世界若者農業サミット」を開催しているのでしょうか?

荻上さん これは、今回キャリア甲子園に参画した理由にもつながるのですが、今日お話しさせていただいたように、実は世界の食糧事情や農業をとりまく環境は、決して楽観視できるものではありません。まずはそうした現状を広く皆さんに知っていただくことが、農業関連事業を展開するバイエルの企業責任の一つだと私達は考えています。一方で、だからといって決して八方ふさがりというわけではなく、様々な技術革新など明るい材料も沢山ある。未来を担う若い世代の方達に、まずは農業に目を向けてもらい、さらにはこうした課題について考えていただく場を提供するところから農業の未来形成に貢献していこう、というのが私達の目指すところです。バイエルは農薬を扱う企業ですが、だからと言って、サミットの場でも農薬や遺伝子組み換えといった技術を押していこうという気は毛頭ありませんし、それはキャリア甲子園でも同じです。

── いろいろとお答えいただきありがとうございます! 最後にキャリア甲子園に参加する高校生に向けてのメッセージをお願いします。

大島さん 今回のテーマは食糧です。日本に暮らす人であれば1日3回の食事を普段は何も考えずに口にしていますが、もしこれがなくなったらどうなるのか? 途上国の中には、日々の食事も満足に食べられない人もいる。何か我々が身近なところからできることもあるんじゃないか、日常生活の中から考えてみてください。自由な発想で新しいアイディアが出てくることを期待しております。

荻上さん 高校生の皆さんの柔らかい、自由な発想で、色々考えてみてください。今の私達にとって食品はいつでもどこでも簡単に手に入れられるものですが、このままでいくと、そう遠くない未来にはコンビニエンスストアやスーパーマーケットの棚が空っぽになってしまうような事態が起きてしまうかもしれません。そんなことにならないように、頭の凝り固まった大人には出せないような、大胆かつ斬新な打開策をお待ちしています。

青野くん

日本の農業が世界に果たせる可能性について、改めて考えることのできる取材でした。

青野将大の取材後記

集合写真

バイエルの入る丸の内のオフィスにお邪魔しました。1Fフロアに巨大なバイエル・クロスがありました!

取材をするまで僕の中のバイエルのイメージはドイツの名門サッカーチームのメインスポンサーということだけでしたが、お話しを聞く中で今の日本の農業、世界の農業をよくするべく多様な事業を行っているということがわかりました!「2023年、世界の食糧安定供給に日本農業が貢献するための施策を考える」という命題を達成するためのアイディアの元になりそうな様々な知識が得られる取材となりました!


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