浅見 貴則(東京工業大学 修士2年生 社会理工学研究科 経営工学専攻)/ 株式会社パラリア 代表取締役



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2015年度に開催されたMFCビジコン。そこに出場していた学生の一人が彼だ。東京工業大学、浅見君。「就活とかどんなところ見てるの?」と何気なく聞いた私に対し、彼が言ったのが「就活はしません。起業するんで」との事だった。その後facebookで彼の活動を見ていると、起業して珍しいタイプの進学塾を立ち上げたという。
国内屈指の理系大学に通う彼が何故起業するのか?そして何故、進学塾なのか⁉︎
東工大、大岡山キャンパスにて、名物「東工大パワー丼」を食べながら、彼の話を聞いてみた。

(*インタビュー記事は全て取材時、2016年6月時点のものです。)

東大はかっこよくない。自分だけの価値を。

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羽田

さて、今日は浅見くんが進学塾を起業した話も聞きたいんですが、まずその前に浅見くん自身の進路の話から。なんで東工大に行こうと思ったんですか?

浅見

僕、いわゆる中高一貫の進学校出身なんですけど、高校1年生の頃までは成績良くて、周りからも「浅見は頭いい」みたいな扱われ方だったんです。でも、2年生の時から成績が落ち始めて、結果、現役では満足のいく受験が出来なくて。

羽田

ほう、じゃあ浪人を?

浅見

はい、まさか自分が浪人するなんてって気持ちでした。「俺は頭が悪いんだ」ってすごく痛感して自分を信じられなくなりました。でも、このまま自分を甘んじて受け入れることに我慢ができないという気持ちもあって。19歳の時から自分をもう一度作り上げていった感じです。その為に先輩や先生の話をすごくよく聞くようになってガンガン吸収して。結果残して、もう一度自信を取り戻したかった。

羽田

なるほど。一回落ちて、そこからトップを狙っていくぞ、と。

浅見

ただ、東大はどうもかっこいいと思わなかったんです。みんなが知っていて、あそこに進学すれば凄いと誰もが言ってくれる。でも、それじゃなんかつまんないなって。で、僕、理系だったので、東大じゃなければ東工大かな、と。東工大って、理系の人は知ってますけど、一般的にはそこまで知名度ないじゃないですか。なんかそういう、知る人ぞ知るみたいなのがかっこいいなと。本当に、それくらいのふわっとした理由だったんですけど(笑)。

羽田

それで受かっちゃうんだから凄いですけどね! でもなぜその中で経営工学を?

浅見

正直、進路選択の時にやりたいことがあったわけじゃないんです。でも将来やりたいことが見つかって、自分で将来何かを立ち上げた時に、経営とか学んでおくのがいいなと思ってて。だから経営工学がある4類を志望しました。東工大の4類って機械系が多いんですけどね。

羽田

うーん、でも、高校生の時点で「将来何か立ち上げた時に」って普通は発想しないと思いますけどね、普通は。何でそんなこと思うようになったんですか?

浅見

なんとなく思うのは、僕、小学校からサッカーやってたんですけど、小学校低学年の時は結構上手な方だったんです。でも、中学校あがったら全然通用しなくて。で、サッカーってチームプレイじゃないですか。自分の未熟さで周りの足を引っ張るのが凄く怖くて。だから自分のところにボールが来ないようなプレイをあえて心がけてたりして……。

羽田

あー、わかる。僕も運動神経ないのに中学の時に某バスケ漫画の影響でバスケ部入っちゃって、ボールもらわないように動き回ってました(笑)。

浅見

(笑)。それで僕、サッカー嫌いになっちゃったんです。でも途中でやめるのはダサいから中学終わるまでは続けてたんですけど、だから結構自分の中では中学三年間はトラウマレベルで。ああ、僕は何か別のところで自分の価値を出していかないとどんどん置いていかれるって危機感がその頃から出てきて。自分ができることをしっかり持たないとダメだ、と。

羽田

なるほど。だからみんなが憧れる東大じゃなくて自分なりの個性が発揮できそうな東工大で、さらに自分で将来武器になりそうな経営工学を学ぼう、と。

浅見

そうですね、勉強もサッカーも挫折してるんですよ。基本的には、自己否定の塊なんです、僕。でもだからこそ逆に、何か自分ならではのものが欲しいんです。

起業を志し、資金を集めようとするも逆に110万円の借金……

起業準備だけではなくバンドや部活も全力でやっていた浅見くん。ドラム姿もサマになっているが、実は借金中。

起業準備だけではなくバンドや部活も全力でやっていた浅見くん。ドラム姿もサマになっているが、実は借金中。

羽田

で、起業はいつから考えてたんですか?就職しようとは思わなかったの?

浅見

いやー、就職は全然考えたこともないですね。起業自体は学部1年生の時には志してましたから。

羽田

早!それは、なぜ?

浅見

いや、東工大なのでまあ大体みんな修士いくんですけど、東工大の修士だと真面目に学問収めていれば、ちゃんと大企業とかに就職できるんです、ありがたいことに。ただ、やっぱそれだと王道行くみたいで自分的には面白くなくて。修士出て、そこから起業したらキャリアとして他の人と違ってていいんじゃないかと(笑)。

羽田

え、そんなノリですか?

浅見

はい、そんなノリです。

羽田

理系なのでもっと理詰めなのかと思ったら……。でも学部1年の時からというのは早いですね。

浅見

運命的な出会いがあったんです。たまたま知り合った方で、学生で既に起業してて。僕、その人がものすごい衝撃で。会社を興すって、それまでは社会人でメチャメチャ成功した人がするものだと思ってたんですけど、学生で会社を興せるんだ、と。これだ!と。もうめちゃくちゃ影響受けて、その人と会った帰り道に起業に関する本を買いまくって読み漁りましたね。で、そこから個人事業主や起業してる人と会いまくって刺激や情報を吸収して。それが大学1年生の秋で、そこから全て始まった感じですね。

羽田

ん?でも起業したのは今年ですよね?そんなに時間かかったんですか?

浅見

いや……僕、借金しちゃいまして。

羽田

借金? いくらくらい?

浅見

だいたい110万円。。。

羽田

110万円⁉︎ どうして?

浅見

いや、人の話を聞いていると起業するのに必要なことがたくさんあるって分かって。起業するにはお金必要だと、そして営業力も必要だと。確かになあ、と。とりあえずお金作らないとって、投資の塾みたいなのに入ったんです。でもその授業料も安くなくて、数十万かかる。

羽田

え、数十万払ったの?

浅見

いや、普通の学生ですからそんなお金持ってないですよ。でも親切なことに、お金の借り方まで教えていただけて(笑)。

羽田

ああ、親切ですね(笑)。

浅見

で、数十万突っ込んで塾入って、学びながら自分で投資もして。でも全然うまくいかない。見事に借金だけが増えて行く。

羽田

うわぁ……。

浅見

それが、大学2年ですね。起業しよう、塾やろうって決めてから、いきなりマイナスからのスタートですよ。

羽田

(爆笑)

浅見

いや、笑うとこじゃないですけどね。知ってます? 借金すると、謎の冷や汗が出るんですよ。初めて金借りて、その足で授業あったので大学行ったんですけど、もう、授業中も冷や汗が止まらない。「ああ、借りてしまった」って。
でもね、同時に思ったんですよ。「僕、もう普通の学生じゃねぇ」って。「突き抜けたぜ」って。まあ、今思うとアホですね。何も考えてなかった。

羽田

それ、借金どうやって返したんですか?親に?

浅見

いや、自力ですよ。バイトしまくりました。僕、人とコミュニケーションとるの、すごく苦手だったんです。でも起業するには営業力も必要だからって、飛び込み営業の請負バイトみたいなの始めて。もう、知らない人のところに飛び込んでインターネット回線売るんですよ。ただでさえ人と話すの苦手で、ビラ配りとかもできないようなメンタル弱い人間だったんで、飛び込み営業なんてもう、泣きながらです。つらくてつらくて。

羽田

……。

浅見

でもおかげで1対1ではだいぶ人と話せるようになりました。ただ、資金増やすために始めた投資は全然うまくいかなくて借金だけが膨らんでいく。「これはもうダメだ、僕はこのままでは死ぬ」って思って。投資に頼るんじゃなくて、ちゃんと働いて稼ごうと。それで、投資はもうスパッとやめて予備校の採点のバイトも始めました。採点のバイトって、空いてる時間に好きなだけやれて出来高報酬なんです。僕、部活やバンドもやってたんですけど、それはそれでサボりたくなかったし、親から学費貰ってる以上、勉強も疎かにできない。だから空いてる時間とかにひたすら採点やって。結局、借金全部返し終わったのは学部3年が終わる頃でした。あれは、しんどかった……(遠い目)。

羽田

はぁ……。でも親に頼らなかったのは偉いなぁ。親御さんはまだ知らないんですか?

浅見

いや、全部返しおわってから言いましたよ。実はさー、みたいな。

羽田

親御さんはなんて?

浅見

まあ、キレ気味ですよね。

羽田

(笑)。

ストレスフリーで授業がない塾、パラリアを起業!

教室は海外のオフィスの理論などを参考に設計されている。遊び心も満点!

教室は海外のオフィスの理論などを参考に設計されている。遊び心も満点!

浅見

というわけで、大学2、3年は丸々借金返すのに使っちゃいました(笑)。でも全部返し終わったので、いよいよ本気で動こうと。その頃からですね。「自分は、塾がやりたい」と周りに言い出したのは。

羽田

なるほど。でも、なんで塾なんですか?

浅見

僕、浪人時代にすごく影響受けた人がいるんです。予備校の数学の先生だったんですけど、一見冷たそうでとっつきにくくて、「苦手」って言ってる人達もたくさんいたんですけど、授業はめちゃくちゃわかりやすくて、単純に「すげぇ」って思って。で、僕はその人に弟子入りみたいな状態になるくらい質問しまくってたんですね。そしたらその先生も可愛がってくれて、数学の点数がメキメキ上がったんです。数学、もともとそんなに得意じゃなかったのに、東工大に入れるくらいに成績上がった。

羽田

ほう、運命の出会いがあったと。

浅見

そうですね。で、起業準備するときに改めて「僕がやりたいことってなんだろう、僕の人生にとって重要なことってなんだろう」ってずっと考えてたら「浪人時代にあの人に出会ったから今の自分がある」って事に気付いて。自分も誰かにとってのそんな存在になりたいな、と。

羽田

なるほど、いきなり塾を立ち上げたんですか?

浅見

いや、まずは自分の知名度あげないとって。じゃないと集客できないですからね。そこで起業してる先輩にアドバイスもらってブログ始めたんです。受験について、僕の勉強法とかノウハウを書きまくるブログ。今みたいにそこまでブログとか多くなかったから、物珍しさもあって受験ブログの中では結構有名になっていって。

羽田

ほうほう。

浅見

それでブログがある程度大きくなったから、有料でセミナー開いたり、その様子を動画に収めて地方の子に売ったり、教材を作って売ったりしてみて。それで、そこそこ稼げるようになったんですよ。「自分で稼いだお金だ!」って結構嬉しかった記憶があります。

羽田

借金時代からの逆転具合がすごいですね。

浅見

(笑)。で、そんな中でまた運命的な出会いをして。受験とか勉強に対する僕の想いや考えに共感してくださる方々と出会えて。その方々は埼玉では有名な進学塾を長年やっていらっしゃった先生なんですけど、費用は負担するから一緒に塾を立ち上げよう、と言ってくださって。その方々の培った理論やノウハウを教材にして、それで僕が経営やったり講師をやったり、と。こんなありがたい話はないな、とすぐに取り掛かって、自分の考えるスタイルの塾を作ったんです。

羽田

おおー、すごい。浅見くんの想いって?

浅見

基本的な考え方は、「受験をストレスフリーにしたい」というもので。

羽田

ストレスフリー?

浅見

はい、受験勉強って、嫌じゃないですか。でも僕が浪人時代に先生から教わったように、問題が解けるようになったり将来のことを考えるのって楽しいことだし、ストレスから受験勉強を解放したいな、と。そんな思いでパラリアという学習塾を今年立ち上げました。

羽田

パラリア!どんな意味なんですか?

浅見

パラレルリアリティの略で。僕の研究室の先生が企業のオフィス空間の研究をされてるんですけど、先生の著書に出てくる言葉で「パラレルリアリティ」っていう言葉があって。このコンセプト、いいなって。ここに来れば、いつもの自分とは違う、本当の自分になれるって思いでつけた名前です。

羽田

具体的にはどんな仕掛けがある塾なんですか?

浅見

まずパラリアでは授業をしません。授業は、ストレスですから。

羽田

???塾なのに授業しないの?

浅見

授業って、教える側の都合なんですよ。この時間にこの科目やるから来なさい、と。まあ、運営側からすればその方が効率いいんです。一度に大勢を相手できますしね。でも、そのやり方だと合わない人だって出てくる。他の人に合わせるんじゃなくて、パラリアでは一人一人が自由に勉強できるんです。僕もいつもそこにいて、質問に来れば勉強の方法や考え方、わからないところは教えます。でも、基本は行動自由。快適に勉強できるように、教室のレイアウトとかも工夫してるんですよ。外資系企業のオフィスみたいな教室なんです。

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羽田

(写真を見ながら)うわー、すごい!これ、塾なのか!受付かと思いきや教室なのがすごい!

浅見

まあ、自分たちでは塾じゃなくてサロンって呼んでるんですけどね。

羽田

サロン?その心は?

浅見

受験の時って、進路のこと含めて自分の人生を真面目に考える機会が多少なりともある時期じゃないですか。で、僕が恩師に出会って人生変わったように、そういう出会いが受験の時こそ必要だろって思ってて。だからパラリアでは毎週誰かゲスト連れてきて、大人の話を聞く時間っていうのを作ってるんです。それでいろんな人たちと出会って勉強する場所だから、塾じゃなくてサロンの方がしっくりくるなって。

羽田

いや、その通りですね。素晴らしいと思います。今後の展開は?

浅見

僕の考えに共感してくれる人が少しずつ集ってきてるんです。だから、フランチャイズ的にパラリアを色んなところに出して、でも教室ごとにコンセプトが少しずつ違う。そこは各自オリジナリティもってやっていけばいいなって。でもそうやって、一人一人の「個」を大切にする環境が広がっていけば、日本全体の雰囲気も変わるんじゃないかなって思うし、それって最高じゃないですかね?

羽田

なるほどなるほど、浅見君は、昔から一貫して「自分らしさ」を追及してきたし、起業した事業も「個」を大切にしてるんですね。何か、すごい繋がるなー。分かりやすい。

浅見

いや、実はそれくらい単純であんま考えてないんですよ(笑)。言われるがままに借金しちゃったりとか!

羽田

起業しながらバイトとか大変だと思うので、借金はもう作らないでください!ありがとうございました!

取材後記

個人指導で多くの実績を持つ先生方とパラリアを切り盛りする浅見くん。

個人指導で多くの実績を持つ先生方とパラリアを切り盛りする浅見くん。

「自分ならではの存在になりたい」そう思う学生は多いだろう。ただ、他の人と異なる道を歩むというのは、それはそれで辛いものだ。他の人の例は参考にならないし、自分で判断して決めていかなくてはならない。そして時には大失敗をしてしまうこともある。そしてそれを解決するのも、自分一人なわけだ。
そういう意味では、浅見くんは分かりやすいくらいにドラマチックな学生時代を送ってきたと言える。挫折、葛藤、失敗、そうした経験を乗り越えて今がある。「自分は本当にセンスないので」と言う彼だが、多分それは謙遜ではなく本心なんだろう。でも、それでも追い求めたい道がある。センスがないからといって諦めず、借金抱えながらも前へ進んで行く。「自分ならでは」を求める人は、彼の辿ってきた道を参考にしてほしい。借金の部分以外で。

(取材/執筆:羽田)

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