DeNA創設者・南場智子氏に見る、3つの強さ


3週連続更新コラム。「もっと、生き方に自由を」。
生き方になんて正解はない。しかし”普通”の生き方のレールに乗っていませんか?
果たしてそれは、あなた自身にあっている生き方なのでしょうか?


第一弾はDeNA創設者、南場智子氏の生き方にクローズアップ。
今や日本を牽引する大企業の1つとなったDeNA創設者の南場智子氏は、1986年マッキンゼーに入社、ハーバードでMBAを取得、99年に独立してDeNAを創設するという、一見華々しいキャリアをたどっている。

しかしその裏には失敗と困難のフルコースが、そして彼女の泥臭い苦悩があった。

指示の意味がわかるまでに16時間もかかった

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彼女は初めから起業家を志していたわけでも、ましてや優秀なコンサルタントを目指していたわけでもない。留学によって就活に乗り遅れ、焦りを感じていた頃に行ったマッキンゼーの説明会がくらくらするほど格好よく、それだけの理由で就職先を決めた。入社こそできたものの、最初のミッションの指示内容を理解するのに16時間かかるほど、出来は悪かった。朝帰りが続き、毎日「こんな会社辞めてやる」と思っていた。

留学中に明らかとなった母親の難病

ハーバードビジネススクールでの2年間は、仕事でぼろぼろの日々からの解放だった。MBA取得後は米国の投資銀行に就職する予定だったが、留学中に母親が難病にかかる。それが気がかりで、結局日本のマッキンゼーに戻る決断をした。
戻ってきたはいいものの、復帰直後のプロジェクトも異様に出来が悪く、心身のストレスで漫画のように倒れたこともあった。やはり私はこの職業に向かないのだ、と転職活動を開始。しかし「最後」のはずのプロジェクトが上手くいき、彼女はその後も約9年間マッキンゼーに残ることになる。

パニックで気が狂いそうな中、銀紙を布団に眠った

「そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうだ」、とある社長のたった一言が彼女の人生を変える。
彼女曰く『熱病』にかかり、マッキンゼーを退職しDeNAを創立するわけだが、その後の彼女の、そして会社の困難は枚挙にいとまがない。
最初にして最大の失態。下請けのシステム開発チームへの監視の不届きにより、開発が完了したはずのその日に、実際はコードが1行も書かれていないことが発覚した。
パニックで気が狂ってしまいそうだった。連日の作業、銀紙にくるまって寝た。
脆弱なシステム。皆がパソコンを寝袋の両脇に2台置いて寝た。システムがダウンした瞬間、どちらに寝返りを打っていようが対応できるようにするためだ。
エンジニアの操作ミスによるデータの消失。
寒い朝、深い眠りに落ちていたシステム開発のリーダーのアパートの前で、データベース、全部消えた、倒産、と2時間叫び続けた。
目覚めたリーダーを会社に見送った瞬間、高熱で倒れた。

最愛のパートナーの大病

血の滲むような苦しみの中でも、モバオクやモバゲーの大ヒットにより会社は急成長する。
しかし、会社の成長が続きやっと会社が大きくなった最中に、彼女自身が人生最大の苦悩を味わう。
唯一の家族でパートナーである、夫のガンだ。それまで互いに仕事を最優先にし、好き勝手やってきた。家業をせず仕事ばかりする妻を、夫は認めてくれていた。
「これまでの人生は全部このときのためにあったんじゃないだろうか」、彼女は社長として、妻として、悩みに悩みぬいた末に代表取締役を退任し、新たな体制を築き上げた。
それが今日のDeNAを作っている。


これほどまでの失敗と困難を乗り越えた彼女の根源には何があるのか。彼女自身の著書である『不格好経営』から、3つの強さが読み取れた。
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1、母のような目配り

『不格好経営』の中では、実に多くの社員の名前が登場する。川田は、ナベは、守安は、春田は…、個々人とのエピソードが非常に多いのだ。まえがきによると、それでもだいぶ減らしたのだという。ひとりひとりの性格と、働きと、表情と、関係と、彼女はそれぞれに愛と感謝のまなざしを向けていて、それはまるで母のようなあたたかさを感じさせる。会社の規模が大きくなってからも、できる限り社員と直接接点を持つことを心がけたそうだ。

2、あえて掴みにいく

同著の中でよく目についた単語の1つに、「拾い物」ということばがある。あらゆる困難を振り返って、彼女は「結果としてこんな拾い物を得た」と随所で述べている。「贈り物」ではなく「拾い物」ということばを用いるところに、彼女らしさが見て取れる。文字のごとく、「拾い物」は自分で拾いにいかなければ掴めない。「うまくいなかないということは、負けず嫌いの私には耐えがたく、単に乗り越えるだけでは気持ちが収まらない。おつりが欲しい」と彼女自身述べているが、苦境の中でも何かを掴みにいく姿勢はやはり彼女の強みと言えるだろう。

3、人に任せる力

「全幅の信頼」ということばが彼女にはよく似合う。彼女は社員に大きな仕事でも軽く一任してしまうのだ。マッキンゼーに留まるきっかけとなったプロジェクトの際、彼女は賢く見せかけていたハリボテの自分を初めて投げ出して、できないものはできないと周囲の力を借りた。任せるという行為は助けを請うことのもっと先にある

。たとえ失敗したとしても、その人は必ず成長してくれるという絶対的な信頼を、彼女は仲間に託している。そんな任せる力が、任された人間をさらに強くしていく。


彼女自身は、職場において自分が女性であることは意識したことがないと言う。これだけ負けず嫌いで胆力のある女性だ、そうであってしかるべきだろう。しかし、彼女の母性のようなしなやかさの存在は否定しえない。DeNAを今まで以上におおらかで腰の強い会社にしたいと言う彼女自身こそが、まさにおおらかで芯のある女性だ。一見自分とは掛け離れた天性の持ち主だと思っていたが、天性ではなく彼女の成功の陰には並ならぬ努力があった。そう、彼女もいわば”普通”なのである。

このコラムを読み、南場氏のようにガツガツ働きたいと思った人もいれば、そうは思わない人もいるだろう。だが働き方は十人十色であり、様々な人のキャリアについて知ることで自分の選択肢がそれだけ広がるということは忘れないでほしい。

(文責:内野すみれ)

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