【大日本印刷(DNP)】「DNPを使い倒して、『2021年のあたりまえ』をつくり出せ!」


取材前は雑誌や本などの出版印刷や写真のプリント機などのイメージがあった大日本印刷株式会社(DNP)。しかし多くの学生の想像以上に、DNPの技術を生かした製品は日常生活のあちこちにあります。地味にスゴイ製品によって、私たちの生活を便利にしてくれているDNP。取材記事ではDNPの開発力の高さをあらためて知る学生も多いはずです。『2021年のあたりまえ』をつくり出すためのヒントも聞いてきました。

お話をしてくれた方 清水 雄二さん
profile_shimizu1989年(平成元年)入社。剥がせるはがき(Sメール)を発明し、特殊な接着剤や専用用紙の開発とともに様々な製品形態を考案。その後、ネット通販が社会に浸透していく中で宅配業界で広く使用されるようになったラベル式配送伝票(1pt配伝)をはじめ、情報処理で使用される様々な機能性媒体を開発。特許出願400件以上。事業企画推進室では、2015年10月に改定したDNPグループビジョンの策定などに関わっている。
早稲田大学理工学部 卒業(修了)
お話を聞いた人 秋元 佑太
MY FUTURE CAMPUS(MFC)学生スタッフ 慶應義塾大学 商学部3年生
profile_yuta高校二年生の頃からMY FUTURE CAMPUSに通っており、大学1年生の頃は4つのProject(ビジネスコンテスト)に挑んだ。現在は参加者ではなく、運営としてMFCに関わっている。DNPにもビジネスプランを提案した経験がある。

ほぼすべての業界における3万社の顧客を持つ会社

――MFC学生スタッフの秋元です。今回はストレートに「なぜこのテーマを選んだのか?」からお聞きしたいと思います。と言うのは「DNPを使い倒す」という言葉は、使い倒せるぐらい多くの製品をDNPは持っているという意味なのかなと?

清水さん そうですね。秋元さんの言う通り、DNPはたくさんの商材と多くのクライアントを持つ点が特長です。まずDNPの製品・サービスを大きく分けると、皆さんがよくイメージされるカタログや出版物などの情報コミュニケーション部門、次に住宅に使われる床材といった建材やパッケージなどをつくる生活・産業の部門、また液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに必要な部材や電子デバイスに組み込まれる精密部材などをつくるエレクトロニクス部門があります。また他にも、DNPグループの北海道コカ・コーラボトリングが行っている清涼飲料事業もあり、皆さんが考えている以上にいろんなことを幅広く展開している会社です。

―― それだけ幅広い事業を展開していると、やはり取引先企業・クライアントの数も相当数にのぼるわけですね。

清水さん DNPのお客様の数は約3万社です。この3万社の中には私たちの生活全般に関わるありとあらゆる業界の会社があります。これはDNPの大きな特長であり、今回のテーマを選んだ理由にも繋がります。実はこれだけ多様で幅広い業界にまたがり、3万社もの企業をクライアントに持つビジネスは、現在主流となっている「選択と集中」型のビジネスモデルとは正反対です。しかし私たちは、社会環境が大きく変化している中、こうした幅広い業界との接点を持っているからこそ、新しいビジネスを生み出していけると考えています。社会変化に伴って起こる様々なパラダイム・シフトが、これまでの業界の境界線や常識を溶かしていくのではないか。そうであれば、3万社との接点を持っていることが私たちの大きな強みとなるのではないかと考えています。今回のDNPのテーマに挑戦する皆さんにも、さまざまな境界線や常識に捉われずに、柔軟な思考で未来を考えてもらいたいです。

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数多くの商材、クライアントを持つ、DNPの強みをご説明いただきました。

―― テーマと少しずれてしまうかもしれませんが、パラダイム・シフト、物事の変化という点でぜひ聞きたいことがあります。学生が本を読まなくなったことも時代の変遷の一つだと考えているのですが、DNPは「本」とも深く関わっていますね。この変遷を清水さんはどう考えておられますか?

清水さん そうですね。DNPは、確かに「本」に深く関わっていますね。本(書籍や雑誌)の印刷がそもそも祖業ということもありますが、今では、MARUZEN、ジュンク堂書店、文教堂といった、皆さんが本と出会う場所としての書店も展開しています。また、「読みたい本を読みたい形で。」というコンセプトで『honto』という、紙と電子書籍のハイブリッド型総合書店も展開していますので、「本」との関わり方は半端ないですね(笑)。
さて、「本」を読まなくなったことについて、ですが、最近の大学生は、本は読まないけれどSNSはしていませんか? きっとLINEやFacebookなどで日々、たくさんの文字を読んでいるはずです。だから文字を読む時間が減ったわけではないと思います。ただしタイムラインに流れる情報は待っていたら届く種類の情報ですから、学生には自ら能動的に情報を取りに行く、そして得た情報についてあらためて考える姿勢を持ってもらいたいですね。人類がここまで文化を発展させられたのは、知識があり、言葉を使って文化や技術を継承してきたからだと思っています。継承するツールも紙だけでなく電子メディアが一般的になりましたが、今だからこそ紙の良さも再発見できると考えています。

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「本をあまり読みません……」と失礼? なお話する僕に、優しくお答えくださる清水さん。

単なる「製品」ではなく、日常に溶け込む「あたりまえ」をつくる

―― ところでDNPでは、これまでどのような「あたりまえ」をつくってきたのでしょうか? あえて「製品」ではなく「あたりまえ」と表現する部分に、きっと大切な意味があると感じました。

清水さん では一例として、今秋元さんが飲んでいる水のペットボトルは強めに握るとペコペコへこみますよね。おそらく記憶にはないと思いますが、かつてのペットボトルの多くは硬くて、力を入れてもへこみませんでした。それには理由があって、飲み物を高温で加熱殺菌しながらペットボトルへ充填し、さらに充填後も飲み物が入った状態でペットボトルごと加熱殺菌していたため、その温度で変形しない強度が必要だったのです。しかし加熱殺菌だけでは死なない菌があり、かつ加熱殺菌すると風味が落ちる飲料があるため、DNPは40年前から無菌充填システムを開発してきました。その結果、使用するペット樹脂を半減させ、殺菌時の水使用量の9割を削減するなど、環境負荷を減らしながら、携帯性などのペットボトルの利便性をさらに高めることができました。こうした利点から、今では、中国や東南アジア圏などにも展開しています。

―― 確かに私は、ペコペコへこむペットボトルの飲料水をあたりまえに飲んでました。地味にスゴイというか、私たちの日常に普通に溶け込んでますよね。

清水さん 他にもDNPの“地味にスゴイ”ものはたくさんあります。秋元さんは通学にICカードを使っていると思いますが、これもDNPが貢献した仕事の一つです。かつて、銀行のキャッシュカードやクレジットカードは磁気カードが主流でしたが、スキミングなどの犯罪が横行するようになり、各社が対策を必要としていました。実はDNPは30年以上前からICチップの利点に注目し、ICカードの実用化に向けて、モノづくりだけでなく、利便性やセキュリティ性(安全性)を高めるさまざまな技術についても研究開発してきました。“便利で安全”ということで、磁気カードからICカードへの切り替えについて、いち早く、粘り強く提案してきたのですが、その変更にはカードだけでなく読み取り機などの交換も必要で、銀行やカード会社の負担も大きくなるため、当初はなかなか陽の目を見ませんでした。それが2000年代に入ってようやく、着実に続けてきた技術開発の蓄積と、社会からの要請が合致してきて、爆発的な展開で「あたりまえ」になったと感じています。

―― 私がDNPの技術者なら、陽の目を見ないかもしれない研究を続けるのはつらいと感じたり、他の社員の目を気にしたりするかもしれません。DNPには技術者を応援する空気があるから、あたりまえにすごい製品を世に出せるのでしょうか?

清水さん DNPの技術者は情熱を持っている人が多く、その熱意を支える上司や仲間が多いです。それに加えて、当社があらゆる業界の多数のクライアントのリクエストを聞いてきた実績も開発力に良い影響を及ぼしていると思います。これまでの私たちの仕事は、まずは客先に出向き、オリエンテーションの中で空気をつかんで形にすることが多く、他の会社のようにシステマティックではないんですね。クライアントが気づいていない課題を私たちが先取りすることも多いです。その分、技術開発も営業も柔軟に挑戦できるのがDNPの風土です。
DNPに限らず技術開発者の中には、スマートフォンの新機種のように、世界的に派手に注目される商品を世に出したいと考える人もいるでしょう。しかしDNPが広く発信しているのは、私たち生活者の暮らしが便利になる、豊かになる、そして社会に溶け込んでいく「あたりまえ」です。より複雑化、高度化していく社会で、やみくもに多くの開発テーマを手掛けることは難しいため、数多くの社会課題の中から、DNPとして特に実現したい未来の方向として『4つの成長領域』を定めています。こうした領域で、世界中から驚かれるすごいものもつくりたいですね(笑)。

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「あたりまえ」を作るためのDNPの社風について、例を元にご説明いただきました。

未来を予測するのではなく、こんな未来が欲しいという希望

―― 今日の取材で、あらためてDNPの開発力の高さを知りました。研究に没頭できる風土や多種多様な企業や生活者の声を聞いてきた実績など、いろんなものが合わさって、あたりまえに便利な製品・サービスが出てきたんですね。

清水さん それらに加えてもう一つ、印刷技術の応用力のすごさも知ってもらいたいです。これまでDNPが発信してきた製品・サービスはいずれも印刷技術を応用したものです。先ほど紹介したペットボトルやICカード以外でも、傷が付きにくい建材や臭いを吸収する包装材、耐熱パッケージやロングライフ容器など、環境やユニバーサルデザインに配慮した製品・サービスも印刷技術を応用することで生まれています。
なお、今回のキャリア・インカレのテーマ「DNPを使い倒して、『2021年のあたりまえ』をつくり出せ!」については、必ずしもDNPの印刷技術に基づいていなくても構いません。自由な発想で考えてください。ただし印刷技術の応用範囲は皆さんの想像以上に広くて深いので、その広がりを知ることでヒントが見えてくる可能性は高いです。またDNPの強みは、ほぼ全業種にクライアントを持っていることですから、「DNPのリソース×他企業」というコラボレーションの提案も歓迎します。

―― ところで、テーマで一つ気になった部分があります。あえて「2021年」に設定された理由は?

清水さん 2020年なら東京五輪もあるし数字のゴロもよいのですが、ここは単純に5年後というスパンで考えました。5年というスパンは昔なら「現在から予想できる未来」だったかもしれませんが、AIなどの発展でこれから「シンギュラリティ」を迎えることを考えると、「想像できるけど何が起こるかわからない未来」と言えますし、「未来のあたりまえ」を考えてもらうには絶妙なスパンだと思って設定しました。当社のテーマにチャレンジする学生には、まず5年後の社会がこんな風になっていたらいいなという願望を優先して考えていただきたいです。なぜならDNPの今回のテーマは未来を予測するテーマではありません。5年後はこうなっているだろうではなく、5年後にこうなっていてほしい、こうしていきたいという視点で挑戦してください。まだピンと来ないなあ……というのなら、そうですね、5年後なら早い人は結婚しているかもしれませんね。小さな子供もいるとして、こんな社会だといいな、こんな商品があるといいなと考えてみてください。

―― なるほど。とてもよいヒントをいただきました。それではDNPのテーマにチャレンジする学生にメッセージをお願いします!

清水さん 若い学生の皆さんは、これからの社会の主役です。超高齢社会(※1)ばかりが取り沙汰されていますが、世の中は若くて活力のある人が引っ張っていくべきものです。だから遠慮なんかしないで、こんな社会にしたいという思いをどんどん発信し、若い仲間と一緒にいろんな構想を練ってください。今回のキャリア・インカレはまさにそういう構想力を発揮する場ですよね。DNPは世界的に見てもちょっとレアな会社です。取引する企業の業種や数、開発してきた製品・サービスの種類と数など、印刷会社の範疇を大いに飛び越えていろんなものへチャレンジしている会社です。世間からは常識を超えた会社のように思われているかもしれませんが、実際に中にいる社員たちは知らず知らずのうちに常識にとらわれているかもしれません。ですからそんな私たちの常識をさらに大きく超えるような視点で、ぜひ良いアイデアを提案してください!

(※1)……●高齢化社会=高齢化率7〜14% ●高齢社会=同14〜21% ●超高齢社会=同21%
高齢化率とは、65歳以上の人口が総人口に占める割合のこと。

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取材にお邪魔したDNPの屋上には、緑も豊かなテラスが! 取材前はどんよりと曇っていたのに、
ベンチに座って話だすと日が射してきました。清水さんは持ってる人!?

秋元 佑太の取材後記

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いかがでしょうか? 『大日本印刷』という名前だけを聞くと、印刷会社という印象を受ける方が多いかもしれません。しかし実際は、ITや部材など、ありとあらゆる分野のことを手掛けていらっしゃる総合メーカーです。ビジネスプランを提案する際も、『印刷』にとらわれず、自由にアイデアを発想してみてくだい。DNPさんのリソースをもってすれば、そのアイデアは実現可能だと思います。140年の歴史の中で培われたDNPの膨大なリソースを自由に使って、みなさんが理想とする2021年の社会へと至るプランを提案してみてくださいね!


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