【内閣官房内閣人事局】「オリンピック・パラリンピックレガシーの活用を考えよ!」


国家公務員は、一人でも多くの方がよりよい生活を送れるようにするために、国が抱えている課題と日々向き合っています。内閣人事局は、多様で有為な人材を確保し、政府としての人材戦略を推進するために、各省庁幹部職員の人事の一元的な管理や、人事行政についての企画立案、方針決定、運用などを担っています。今回内閣人事局が問いかけたいテーマは「オリンピック・パラリンピックレガシーの活用を考えよ!」。先進国に共通する課題を踏まえ、大会開催後も有効であり、次世代に誇れる有形・無形の遺産(レガシー)を全国に創出し、活用に繋げるには、どのような観点から考えたらよいのかお聞きしました。

お話をしてくれた方 渋谷 雄輝さん
内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局
pprofile_incolle「オリンピックの仕事がしたい」という思いを胸に2012年文部科学省に入省。スポーツ・青年局競技スポーツ課国際スポーツ室配属となり、念願かなって招致活動にも携わる。現在は内閣官房におかれた各省庁またがる大規模事業のとりまとめを行う部署で、大会運営に向けた準備を進めている。東京大学理学部物理学科卒業。
お話を聞いた人 石井 琴音
MY FUTURE CAMPUS学生スタッフ 国際基督教大学3年生教養学部アーツ・サイエンス学科経営学専攻。
“profile_incolle2”趣味は、旅行、映画鑑賞、グルメ探索。唐突に一人旅に行くこともある。異文化に触れることも好きで、長期休みには、ボランティア活動や国際交流の場に参加することが多い。将来は、日本だけではなく海外勤務も経験したいと考えている。異文化の人と何か一つのことを成し遂げることに魅力を感じている。

オリンピック開催後の次世代に受け継がれる“オリンピックレガシー“とは

―― MFC学生スタッフの石井です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を4年後にひかえ、日本全体の活気を感じています。私自身、長野オリンピックの時は幼かったので、あまりオリンピックの前後の日本社会の変化を実感していないのですが、オリンピックレガシーとはどのようなものがあるのでしょうか?

渋谷さん 普段、実生活において切り離せない交通機関や生活基盤となる社会インフラは何を契機に発展したと思いますか? その時の景気状況などに応じて様々な例が挙げられると思いますが、戦後、日本がかつてない急成長をとげた契機となっているのはの一つとなっているのは、1964年に開催された東京オリンピックです。具体的には、1964年の東京大会の開催に向けては、新幹線、首都高速道路、ごみのない美しい街並みなど、現在にも残る数々のレガシーが生み出されました。このようなレガシーは、オリンピックのための一時的なものではなく、日本の経済発展に貢献し、国民のみなさんの生活を豊かにするものでもあり、次世代に受け継がれているものでもあります。

―― オリンピック開催は、その開催国の発展の契機となることはよくわかりました。しかし、なぜオリンピック大会は、単なるスポーツ大会ではなく、レガシーが求められるものなのですか?

渋谷さん 1つの理由として、オリンピックを単なるスポーツ大会としないのには、国際オリンピック委員会(IOC)により、定められた「オリンピック憲章」があります。この中には、「オリンピック競技大会の有益な遺産を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する。」と記さされています。この憲章にあるとおり、開催国は、ただ大会を開催するだけでなく、有益なレガシーの引き継ぎを期待されています。それなので、2020年東京大会は、スポーツの大会ではありますが、大会の開催を契機に日本をどのように発展させていくか、という視点が大変重要となります。

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オリンピックレガシーとは何か語っていただきました。

政府が掲げるレガシーに繋がる施策

―― オリンピック・パラリンピック開催には、国全体が関わっていると思うのですが、政府ではどのようにレガシーに繋がる取り組みがなされているのですか?

渋谷さん 政府においては、昨年11月に閣議決定された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」があります。この基本方針の中でも「基本的な考え方」として、「次世代に誇れるレガシーの創出と世界への発信」を位置づけられています。それに併せて、「大会を通じた新しい日本の創造」に向けて、大きく分けて4つの政策、「大会を通じた被災地・地方を含む日本の再生」「日本文化の魅力の発信」「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」「健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会の実現」が挙げられています。

―― 2つ目に「日本文化の魅力の発信」が掲げられていますが、和食といった日本の伝統文化やアニメや漫画といった日本のサブカルチャーは、すでに世界中に発信されていると思います……。

渋谷さん そうですね。和食やサブカルチャーといった分野は、海外でも十分人気があり、それだけが2020年東京大会での中心的なアピールポイントとなることはないでしょう。しかし、我々日本人自身が気づいていない日本のアピールポイントといったものはまだあります。具体例として、1998年の長野冬季大会では、長野県の漆を活用したメダルを作成して、地域の伝統文化を発信していました。今回の2020年東京大会にむけて建設される新国立競技場は、日本の建築技術の象徴である木材が活用される予定です。このように、例えば日本文化を大会の形式や物品に組み込むことで、まだ知られていない日本文化の魅力を世界に発信するにも繋がるのです。

―― 4つ目の「健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会の実現」も、日本は長寿国であり、階段など段差をなくすユニバーサルデザインなども発達してきていると思うのですが、どのような部分での新しい日本の創造を考えられているのですか?

渋谷さん 石井さんが言っている通り、まだ不十分な点もありますが、日本では段差をなくすなどのハード面でのバリアフリーは近年進んできています。しかし、ハートフルなバリアフリーはどうでしょうか? これはロンドン大会の関係者も言っていた話なのですが、東京はロンドンに比べて、ハード面でのバリアフリーは進んでいるが、ハートの面ではロンドンの方が勝っているとのことでした。残念ながら、現代の日本社会では、障がいを持つ人たちをかわいそうな弱者としてみる雰囲気は払拭されているとは言い切れません。それに加えて、イギリスなどの西洋諸国に比べて、いまだ日本の障がい者スポーツ人口は少ないのが現状です。それなので、このような状況を改善し、障がいの持つ人々も生き生きと活躍できる社会の実現を目指しています。

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政府レベルでのオリンピックへの取り組みについても質問しました。

自分がどのような社会で生活したいのかという観点がアイディアに繋がる

―― 前回の1964年の東京大会とは、時代が進み、日本の課題も変化してきているのと思うので、遺されるレガシーはかなり異なると思うのですが……。何かヒントはありますか?

渋谷さん 確かに、前回の東京大会では、(目に見えやすい)ハードなレガシーが現代まで受け継がれてきました。今回の東京大会のレガシーを考える際に有効な切り口の一つの例として、パラリンピックが挙げられます。先ほどにも述べたように、ハートフルなバリアフリーなど、社会のソフトな部分のレガシーが今後求められる時代であると考えます。過去の事例でいえば、パラリンピックが成功したといわれている2012年のロンドン大会なども参考になると思います。

―― 社会のソフトの部分は、目に見えないものであり、捉えることが難しい部分だと思います。どのようなことが課題発見に繋がるとお考えですか?

渋谷さん 課題を見つけるには、まず現場に行くことが重要です。例えば、先ほど切り口の一例としてパラリンピックを挙げさせていただきましたが、障がい者スポーツの競技を実際に観戦に行くといったことも有益かもしれません。私自身も仕事で大塚にある筑波大学の特別支援学校に視察に行き、体育の授業でゴールボール(※パラリンピックの競技の一つ)を行っている現場等を見学させてもらいました。他には大会時にはボランティアをたくさん募集することになると思いますので、スポーツ関係のボランティア活動などを通して、直接人に会って話を聞くことや自分自身で経験するために現場に行くことも有益かもしれません。百聞は一見にしかずで、肌で感じたことが課題発見につながります。そのような経験や調査に基づいて、チームでディスカッションを重ね、考えてみてください。

―― 今回のテーマに取り組むにあたり、2020年にはどのような社会問題があるか、どのようなレガシーが遺されるべきか、という考えるには正直、難しいテーマだと思います。どのような観点が重要であるとお考えですか?

渋谷さん 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前後に、どういう社会であってほしいのか、自分がどういう立場で過ごしていたしかという観点が重要です。大学生のみなさんは、就職し、バリバリ働いていたり、就職活動をしていたりする時代かもしれません。自分がその時代に社会とどのように接しているか考えてみると社会問題が見えてくるかもしれません。さらに、東京大会で自分がどのように関わっているかという観点もテーマのヒントになると思います。2020年の東京大会では、選手だけでなく、政府、様々な業界を含む企業、団体など国全体が関わっています。個人レベルでもボランティアに参加するなどの、様々な関わり方がある中で、自分がどのように東京大会と関わっているのか想像するのもアイディアに繋がると思います。

―― 最後に参加学生にメッセージをお願いします。

渋谷さん 2020年大会を契機として、レガシーを遺し、日本の諸課題を解決していくことが大変重要です。どのような日本の諸課題があるのか、また、オリンピック・パラリンピックレガシーとして何を遺すのか、レガシーを活用し、どのように諸課題を解決するのか、という考える要素が多く、難しいテーマだとは思いますが、大きなやりがいが感じられると思います! みなさん頑張って下さい。

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テーマのヒントになる様々な過去のレガシーを教えていただきました。

石井 琴音の取材後記

集合写真

内閣人事局の看板の前にて。
レガシー(遺産)といえば、まずはハードを頭に思い浮かべましたが、ソフトの観点もとても重要だと感じた取材でした。

今回、内閣人事局の出題テーマ「オリンピック・パラリンピックレガシーの活用を考えよ!」。オリンピックを通じて遺されたレガシーというと、目に見えるハードなものが思い浮かびやすいですが、国際交流促進や心のバリアフリーなどのソフトなレガシーが、これからの日本の再生に必要であると改めて考えさせられました。内閣官房の渋谷さん、テーマに繋がる重要なヒントをくださり、ありがとうございました。社会問題に興味のある大学生のみなさん、ぜひ内閣人事局さんの出題テーマに取り組んでみてください。


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